FC東京vs横浜FC~まずは1つ解決~[Jリーグ第4節]
4試合ぶりに味スタに戻って第4節。横浜FC戦です。
FC東京は前節の京都サンガ戦で今季初黒星。まあ何も上手くいかず。プレスが嵌って蹴っ飛ばして回収されての繰り返し。どこを目指しているのか?今の道が正しいか?その答えを試合で見せてほしいところ。
一方、昇格組の横浜FC。今季はここまで1分2敗と未だ勝ちなし。ここまで6失点、その内5点は前半に喫したもの。その中でもエース小川は3得点とJ1でも量産中。
FC東京はここまでの公式戦5試合、全て勝ちなしのチームと当たっている。嫌な巡り合わせだな。
スタメン
・FC東京
前節からの変更は4枚。おっさんずに代えてエンリケと出場停止から復帰した中村。また寺山と俵積田が共にリーグ初スタメン。東はルヴァン杯も含めてここまで全試合スタメン。替えが利かない。というか替えがいない。
・横浜FC
ベンチ含めて前節と全く同じメンバー。中村拓海もいます。タマさんもいます。もう腕章巻いてます。
(1)逃げるなクバ、エンリケ
試合の形勢が決まる前にFC東京が先制。スローインからディエゴが頑張ってぐちゃぐちゃっとなり、ボールは中央の中村へこぼれる。中村から逆サイドの仲川へ展開して速攻。駆け上がってポケットを取った中村の折り返しにディエゴが反転シュートでゴールに流し込んだ。
中央のセンターサークル辺りにSBが、逆サイドの1対1で勝負できる位置にWGがいる今季のFC東京の配置から繋がった得点。横浜FCとしてはゴール前の人数は足りていただけに、全員マイナス方向が抑えられなかったのが悔やまれる。身体を捻ってそこに届けた中村の勝ち。
そしてディエゴの味スタゴールは昨季の16節の鹿島戦以来、10ヶ月ぶり。待ってた。
先制した後もボールを保持するFC東京。後方からのビルドアップは今季のFC東京にとっての大きな課題の1つ。ここまでの公式戦で上手くいった試合は1つもない。この試合において保持の問題となっていたのがスウォビィクとエンリケの2人。
まずスウォビィク。スウォビィクの問題点は相手のプレスに対して逃げるようなトラップをすること。試合開始早々の1分40秒の場面では(スウォビィクにとっての)右からプレスにくる坂本に対して、スウォビィクは左にコントロール。ただ左サイドは既に人を捕まえられており、選択肢がなくロングボールを蹴って、そのままタッチラインを割っている。これにはアルベルも不満を隠せないリアクション。
この場面、スウォビィクは左右どちらにも蹴れる位置にコントロールすることができれば、右の木本を使えたはず。プレスに来たのが左SHの坂本だったため、木本に渡せば横浜FCを一度撤退させることができただろう。
今のスウォビィクを見ていると前進するためにより良い選手に渡すというよりも、自分が出しやすい選択、ミスらない選択をしている感じ。それではチームもスウォビィクもビルドアップ面で成長していかないし、もっと挑戦する選択をして欲しいところ。ミスっても自分で止めれば問題ないだろくらいの精神で。実際止めるし。
で、エンリケ。エンリケの問題点もスウォビィクと似たような感じで、相手に誘導されるがままにボールを動かしてしまうことだ。
横浜FCはプレス時にトップ下の長谷川がアンカーの東をマーク。CBにはCFの小川が中を切りながら、またはSHが縦を切りながら向かっていく。これでサイドへと誘導して嵌めようという設計。
エンリケは中からプレスをかけられた時に、外側に運んでじわじわと追い出されて中央の選択肢がなくなったり、外側にボールを置いて中央が使えなくなったり。結果的にサイドに誘導したい横浜FCの思い通りにボールを動かしてしまう場面が目立った。
スウォビィクもエンリケも相手に対して逃げるようなボールの持ち方、動かし方になっている。もっと言うと京都戦の木本、森重もそんな感じだった。今季のFC東京はバックラインが逃げのボール保持になってしまっている印象。ここが変わらないとビルドアップの問題は解決してこないだろう。
これ以外にもエンリケはまだボール保持のプレーが落とし込めていない印象。ということで今回はエンリケの保持時の立ち位置に関するの場面を切り抜き解説。切り抜きって流行ってるよね。
21分20秒。木本がボールを持っている場面。ここで最初は低い位置にいたエンリケだが、木本が前を向いたのを見てポジションを上げている。しかし、ここは低い位置にとどまっておくべき場面。ポジションを上げたことで対面の山根に近づくため、木本はエンリケを使えなくなる。そうなると、横浜FCが人数をかけて構えている右側から敵陣に侵入しなければならなくなる。
ここで低い位置にとどまっておけば、木本にはエンリケを経由して左の佳史扶や俵積田まで展開!という選択肢も与えられる。
この場面を見て、エンリケはまだどこにポジションを取るのが有効か?という面が落とし込めていないように感じた。
(2)統一されたプレッシング
次にFC東京の被保持。横浜FCもしっかり後方から繋いでいく振る舞いを見せる。それに対してFC東京も前からプレスに出ていく。
FC東京の前線からの守備において最優先なのは、横浜FCの CHを抑えること。そのため、ディエゴと仲川もまずはCHを背中で消す。そしてIHが前に出てCHのマークにつけてからCBやGKへプレスをかけていく感じ。このディエゴと仲川は基本的には左CBの岩武へのプレスを担当。中(縦)を切ってサイドに誘導。SBの橋本のところにはSBの中村が出てくる。ここのプレスの距離はかなりあったが遅れずに出てくる中村の縦への強度は流石の一言。
ディエゴと仲川はしっかり後ろがプレスについてこれるのを確認してからCBへ向かう。いちについて(CHを消す)、よーい(IHがマークにつく)、ドン!(CB、GKに向かう)のリズム。これによりFWだけがプレスが向かうような無駄打ちがなく、全体で統一して向かっていくことができたのが、この試合でプレッシングが機能した要因だ。
一方の左サイド。WGの俵積田はディエゴや仲川に比べると勢いよく外切りでCBへ向かっていた感じ。その俵積田の勢いに遅れることなく、寺山と佳史扶はそれぞれCH、SBまでスライドして抑える。
横浜FCがバックラインからSHまで飛ばしてきたらエンリケがサイドまで出て処理。エンリケが出たスペースは東が埋めてサポートに入り、セカンドボールを回収していく。
こちらも前への意識が統一されていたので、横浜FCの前進を食い止めることができていた。前に出る分バックラインの負担は増えるが、そこは東とエンリケがカバーエリアの広さを見せつける。保持では苦戦していたエンリケだが、前に出る守備において、この守備エリアの広さはありがたい。
2点目はこのプレッシングから。GKにプレスをかけるディエゴに俵積田が連動したことでンドカのミスを誘い仲川が移籍後初ゴールをゲット。
ハーフタイム
2点を先行するが、終盤にオウンゴールで1点返されて前半終了。これで味スタでは昨季の最終節から3試合連続でオウンゴール発生中である。魔の味スタゴール前。
(3)森重登場の誤算
後半。FC東京はエンリケと寺山に代えて森重と塚川。横浜FCは山根に代えて山下を投入する。
前半に比べて、後半のFC東京は中央も使いながらボールを保持する。この辺りは左利きでじわじわと外に追い出されてしまうエンリケと、両足を使える森重の差が出た部分。
この試合ではIHの小泉と塚川が東と同じ高さくらいまで降りてくる場面が多かった。低い位置まで降りることで相手のマークをズラすことができれば、この動きは効果的ということになる。
しかし、後半の横浜FCは降りるIHにCHがしっかりとついてきていたため、マークをズラすことはできず。逆にマーカーを引き連れてきて、人が集中してしまうことに。そのため、後半のFC東京は保持のエリアが狭くなり過ぎていた印象。
ただその中でも、71分30秒のように入れ替わる動きでひっくり返す場面があったのは好材料。ここでは仲川が降りてCBを引きつけ、小泉が入れ替わるようにスルスルっとポジションを上げる。そこに長友からパスが送られて、3対2の数的優位を作り出した。
次に横浜FCの保持。変化が見られたのはCBの立ち位置。ゴールキック時などでCBがGKと同じ高さ辺りまで下がるようになる。これでFC東京のWGをより前に引きつける感じ。そしてそのWGの背後で中村が少し内側に絞った立ち位置を取る。
この絞った中村に左CBの岩武やGKから対角に届ける形は前半に一度見られた。中村が内側を取ることで佳史扶は前に出て行かない。中村が内側に絞った時にはサイドにいる時よりも強く行かなければ、プレスを嵌め切ることはできない。距離も遠くなった状態で中村まで出ていくのは難しいという判断だろう。
後半の横浜FCはこの形を狙ってきた感じ。ただ、CBがエンリケから森重に代わったことで、そもそも佳史扶がSBまで出てくる機会が減り、代わりに塚川がプレス役になっていた。そのため、中村は内側に絞ることにより、プレスの到達距離が短くなる。
そしてFC東京の3点目はこの部分から。ゴールキックから内側に絞った中村にボールを送る。しかし、ここに出てくるのは佳史扶ではなく、東だった。東に素早く寄せられたことで、中村のパスがズレてカウンター。長友のクロスにディエゴが合わせてこの試合2点目をゲット。
横浜FCとしてはクロス対応の部分にも脆さが見えた。CBの岩武とンドカは外に引っ張られることが多め。そしてCBがゴール前からいなくなった時に誰がそこを埋めるのか?が曖昧な印象。この場面でも岩武が外に引っ張られて、ゴール前は数的不利。ンドカが塚川とディエゴを見なければならなくなっていた。
74分に佳史扶が負傷で荒井と交代。4-4-2へとフォーメーションを変更する。
この変更により、仲川は中央にポジションを変える。この仲川が中央の空いたスペースに顔を出してCBからパスを引き出してから、上手く周りを使い前半をサポート。マリノス仕込みの動きで攻撃を活性化させる。
この仲川トップ下は今後のオプションの1つになり得そう。ディエゴとの相性も良さげだし。
多くの決定機を外したが、とりあえず3得点。開幕戦以来の公式戦勝利となった。
おわりに
久しぶりの勝利です。
まず良かったのが前線からのプレス。この部分も今まで上手く嵌ってない感があったが、この試合では全体が統一されて効果的なプレスをかけ続けた。
ただ、ビルドアップの問題は未だ解決せず。CBとスウォビィクのボールの持ち方はやはり気になる。ここの意識が変わらなければ、中央を使っての前進は進まない。特にエンリケには厳しい試合となった。ただ、エンリケは怪我で昨季の半分以上はいなかったので、その分遅れを取っているということか。俺はエンリケ推しなので諦めない。