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FC東京vsヴィッセル神戸〜貫くスタイル変える形〜[Jリーグ7節]

過密日程はしんどいでよってことで神戸戦です。

試合概要

FC東京は勝負の4月の2試合目。前節の横浜FM戦では開幕戦以来の黒星となった。この負けをズルズルと引きずることなく戦えるか、チームの進化が問われる。スタメンは3枚変更。紺野、エンリケ、出場停止の松木に代わり永井、渡辺、東がスタート。東は今季初スタメン、長友は初左SBだ。

神戸は開幕からまさかの8試合勝ちなし。三浦監督を解任して後任にリュイス氏が就任。しかし、初戦となった前節京都戦も1-3で敗れ、これで4分4敗となった。その前節からはスタメン3枚変更。そして橋本拳人が初のメンバー入り。

(1)前節と同じ課題

まずFC東京の守備から。とは言っても前節の横浜FM戦と形はほとんど同じでWGのアダイウトンと永井がCBに対してSBへのパスコースを切りながらの外切りプレス。CFのディエゴとIHの東でCHの大崎と山口を、アンカーの青木がイニエスタをマークして中盤を抑えに行った。

少し違うところが決まったマークの担当がなく余っているIH。横浜FM戦では左IHの松木を余らせてWG裏のSBやディエゴがCBまで出た時にCHの守備を担当していた。対して神戸戦では右IHの安部がその役割を担当していた。

まだ横浜FM戦、神戸戦の2試合のみの守備の形で選手も松木と東が変わっているので何をもって余らせる選手を決めているのかは分からない。その決める基準として現状で考えられるのが相手のサイドの攻撃割合。右サイドからの攻撃が多い横浜FMに対しては左IHを、左サイドからの攻撃が多い神戸に対しては右IHを余らせて浮いている選手を抑えにいこうという考えがあるのかもしれない。

横浜FMのサイドの攻撃割合
ヴィッセル神戸の攻撃割合

浦和も2CHを使うチームなのでFC東京がどちらのIHを余らせるのは注目点の1つ。ちなみに浦和はサイドの割合にほとんど偏りはない。

そろそろ話を神戸戦に戻そう。FC東京の守備に対して神戸はCFの大迫を使ってプレスを回避した。余っているIHの安部は背後よりもCHやSBなど前の選手への意識が強いため背後のスペースが空きやすくなる。また、イニエスタはあまり動かずに真ん中に陣取っているので、青木も真ん中にピン止めされていることが多かった。これによって安部の裏、青木の脇にスペースができ、そのスペースに顔を出す大迫を捕まえることができなかった。

神戸のプレス回避
安部の背後、青木の脇のスペースに大迫が降りてパスを引き出す

前から選手を捕まえていこうというのは今季のFC東京が取り組んでいる守備の形。そして前から行くということは当然背後にはスペースができる。失点の場面でもディエゴが安部に酒井のマークを指示した結果、その背後を汰木に取られている。この時、渡邊は大迫がSB裏を狙う動きをしたことで汰木に出ることができず、その後サイドで2対1を作られて崩されてしまった。

安部が酒井のマークのために前に出たため、その背後を汰木に使われる
大迫がSB裏を狙う動きをしたため渡邊は汰木に出ることができず

IHの裏のスペースでCFにパスを引き出される形は横浜FM戦の特に後半でも起きていた。この課題をシーズン通してどう解決していくのだろうか。CBに潰させるのか?IHの位置を少し下げるのか?ボールホルダーへのプレスを強めるのか?今後の注目点となりそうだ。

(2)右サイドの新たな形

次に神戸の守備を振り返ろう。神戸は前線からの守備では右SHのボージャンを前に出して森重に対して外切りでプレスをかける。また、トップ下のイニエスタは青木をマークし、CFの大迫は木本に内切りでプレス。こうしてFC東京の攻撃を左サイドに誘導する。

木本にボールが渡ったら左SHの汰木が渡辺に、CHの大崎が安部をマークすることで木本の選択肢を無くしロングボールを蹴らせる。そのターゲットとなるディエゴには槙野がマークについて跳ね返す。ただ、この競り合いのセカンドボールを拾うことができればFC東京にとってはチャンスにつながりやすくなる。そして球際の強度の高さがFC東京の強みの1つ。その相手にこの守備を選んだのはリスクが高いようにも感じた。

神戸の守備
CBに対してボージャンが外切り、大迫が内切りのプレスでFC東京を左サイドへ誘導
左サイドの選手を抑えロングボールを蹴らせて回収

11分に先制点を決めた後、神戸は全体を下げて自陣で守備ブロックを形成して守るようになった。この時にはボージャンは右SHの位置に入り4-4-2の形となる。

中盤の4枚をコンパクトにして中央を封鎖。FC東京はサイドに張るアダイウトンと永井まではボールを運べるものの、そこから守備ブロックを崩す形までは至らなかった。右WGが紺野であれば1対1をドリブルで剥がすこともできたが、この試合の右WGは永井。ドリブルで打開できるタイプではなく、右サイドの攻撃は若干の手詰まり感があった。

これを受けて30分頃からFC東京は右サイドの立ち位置を修正。それまでサイドに張ることが多かった永井を内側に絞らせて、代わりにSBの渡邊がサイドに張るようになった。先ほども書いたようにサイドに張る選手まではボールを運ぶことができる。なのでサイドの渡邊は前を向いてボールを持てることが多く、そこから内側に絞りCBーSB間に走りこむ永井に送ることで一気にゴール前まで侵入できた。この時、永井はSBの背後(視野の外)でCBからは少し遠い位置を取れていたため、神戸からすると対処が難しかった。

渡邊が外、永井が内の関係
大外から一気にハーフスペース(CBーSB間)を狙う

WGがサイドに張り、SBは中央のレーン、IHがハーフスペースに走り込むのが今季のFC東京の形だった。この右サイドの渡邊永井コンビはあらたな形として今後のオプションとなるだろう。

(3)貫く守備スタイル

後半途中から神戸はフォーメーションを4-3-3に変更。それに合わせてFC東京も4-2-3-1に変更した。中盤を噛み合うような組み合わせにすることが狙いだと考えられる。しかし、CFの大迫は中盤に降りてきてボールを引き出せるタイプ。この大迫の動きにより2CHの安部と青木で大迫、橋本、山口の3枚を見なければいけない状況になっていた。

この問題に関してはフォーメーションを4-3-3のままにしてディエゴにアンカーの扇原のマークを担当させることで中盤を3対3の数的同数にすることはできた。それでも4-2-3-1に変えてきたということは2点リードしていても前から守備をする姿勢は貫くということだろう。

おわりに

負けを引きずらずに逆転勝利。新たな攻撃の形も作り出され大きな勝利だった。あくまでも前から積極的に守備をする姿勢は崩さないというのがアルベルさんの考えとしてあるのだろう。ただ、そうするのならば今のようなメンバー固定では過密日程を乗り越えるのは難しくなる。今後、3人目4人目の選手が出てきてほしい。と言うか出てこい。

最後に、、拳人!無事でよかった!

試合結果
2022.4.6
FC東京 3-1 ヴィッセル神戸
味の素スタジアム

【得点】
FC東京
 54' アダイウトン
 57' 森重 真人
 66' ディエゴ オリヴェイラ
ヴィッセル神戸
 11' 山口 蛍


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