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FC東京vsガンバ大阪~国立決戦 帰ってきた魔術師~[Jリーグ第10節]

厳しい連戦が続いた4月もラストゲーム。ここまではリーグ戦1勝3分1敗、ルヴァン杯2敗となかなか結果が出ていない。

そしてこの試合はJリーグ初の国立開催。首都クラブとして負けられない。いや、勝つしかない。

試合概要

メンバー

・FC東京
怪我の森重に代えてエンリケが横浜FM戦以来のスタメン。ベンチにはレアンドロが開幕戦以来の復帰。あとは佳史扶が今季初のベンチ入り。
3試合連続の0-0でもメンバーは固定。
ここ数試合は4-1ビルドアップ(4バック+アンカー)になった結果、SBに対する横のサポートがなくなり上手くビルドアップできていない。ビルドアップをどう改善していくかが注目点。

・ガンバ大阪
同じく3試合勝ちなし。前節は湘南ベルマーレに今季初勝利を献上した。
その前節からはフォーメーションを3-4-2-1から4-4-2に変更。スタメンも5枚入れ替え。

前半

改善されたビルドアップ

・FC東京のボール保持
キックオフ直後、G大阪は小川に対して小野瀬、アダイウトンに対して柳澤がプレス。この時点でG大阪は人に対してプレスをはめてくることがわかった。

もう少しG大阪の守備を詳しく。2トップのLペレイラと坂本で木本とエンリケの2CB、アンカーの青木に対応。1枚がCBに内側からプレスをかけて、もう1枚が青木のマークについた。あとはSHの小野瀬と山見がSB、SBの柳澤と藤春がWG、CHの齊藤とダワンでIHといった感じで人に当てはめてくる。

この守備に対してFC東京はアンカーの青木をCB間に降ろしてビルドアップ。これまでの試合でも青木がCB間に降りることはあったが、それは相手のプレスがハマっていて2CBでのビルドアップが苦しい時など限定的だった。なので青木を降ろす形を使ったのはこの試合が初めてといっていいだろう。

青木を降ろして最終ラインを3枚にすることでG大阪の2トップに対して3対2の数的優位を形成。2トップの脇のスペースからCBがドリブルで運んだり、前線へ自由に配球できるようになる。いくつか場面を取り上げる。

まず11分30秒の場面。
青木がCB間に降りて2トップに対して数的優位。Lペレイラの脇で木本が前向き。G大阪はSHの山見が木本、SBの藤春が永井へそれぞれスライド。前重心となったG大阪の背後を木本がロングボールで狙い安部、松木、ディエゴが走り込む。この時、最前線は3対3の数的同数となっていた。

もう1つは少し違うけれど似たような良い形なので。44分20秒の場面。
流れの中で安部が降りてきて最終ラインを3枚に。そして同じくLペレイラの脇で木本が前向きに。木本からディエゴへ縦パスを差し込む。ここは三浦に潰されたが松木に落として前向きを作れていれば、永井の裏で一気にチャンスだった。

このように最終ラインを3枚にすることでCBの前向きを作りやすくなる。そうすると木本の必殺の縦パスやロングフィードを使える場面が増える。アルベルさんは最終ライン2枚のビルドアップをやりたいのだろうが、少なくとも今の段階では3枚でのビルドアップの方が良いと思う。

青木がCB間に降りた時にはIHが降りてくるかSBが内側に絞って中央にポジションを取る。SBでは長友より小川の方がこの役割を担うことが多かった。

小川が内側に絞ることでマークにつく小野瀬を引き付けることができる。そうするとエンリケからサイドに張るアダイウトンまでのパスコースが生まれる。小川が内側に絞ることが多かったのは、アダイウトンの対人の強さを活かす狙いもあった。実際にアダイウトンvs柳澤のところでは完全に質的優位を取ることができていた。

ガンバ大阪の狙い

・FC東京のボール非保持
FC東京はいつも通りCBに対してWGが外切りプレス。ということでG大阪の狙いはフリーになるWG裏のSB。ここで片野坂さんの試合後インタビューの一部を抜粋。

そして今日のFC東京戦に関して、FC東京さんは4-3-3で、あまり詳しく言うとまだ対戦が残っているんですけど、非常に前線と中盤の3人を含めてハードワークできて、守備のところでも若干外切りをしてくる、そこの外切りをしてくれば空いてくるところもあるので、そこをしっかりと自分たちで剥がして、出来るだけ敵陣でボールを動かしたいなという狙いの中で準備しました。

https://www.gamba-osaka.net/report/index/no/831/

このインタビューからも分かるようにG大阪はWG裏のSBから前進するのが狙い。だが、このSBに対してFC東京はSBの縦スライドやIHの横スライドで対応できていたのであまり嫌な感じはしなかった。

FC東京にとって嫌だったのが左CBの昌子から右SBの柳澤への展開。FC東京の守備は片方のWGがCBへ外切りプレスをかけたら、逆のWGも連動してCBに寄って制限をする形。この守備のスイッチを入れるのは基本的に永井の役割となる。

なので永井が昌子にプレスをかけ、それに連動してアダイウトンが三浦に寄せると、その裏の柳澤はフリーとなる。この時、全体は右サイドの方に集まっているのでIHの松木は柳澤まで遠いため間に合わない。また、小川も背後のスペースが気になって出ていけない。松木と同様に青木も右に寄っている。そのため、ここで出ていってしまうとエンリケが1人で広い背後のスペースを管理し、1人で坂本と小野瀬を見なければならなくなるから。

34分20秒の山見のきわどいミドルシュートなんかはこの形から作られた場面だった。

ハーフタイム
FC東京は選手交代なし。G大阪は坂本に代えて中村を投入。

後半

魔術師の使い方

G大阪が保持の時間を増やしつつも、前半と同じような展開が続く。63分にFC東京はアダイウトンに代えてレアンドロを投入。青赤の魔術師が開幕戦以来に帰ってきた。そして2分後にドリブルで持ち込んでいきなり得点。やはりこの人は一味違う。戦術がなんだとか言ってるけれど、結局これで得点できれば一番楽。それが難しいから戦術が必要なんだけどね。

アダイウトンとレアンドロで大きく異なるのは使うエリア。アダイウトンはサイドに張りっぱなしなので、小川が内側に絞って中央にポジションを取ることができた。

対してレアンドロは中央で動き回りながらプレーする選手。そのため、レアンドロ投入後は小川がサイドに張り、青木のエリアはIHが降りてきて埋めるようになる。しかし、IHを降ろしてしまうと前線の枚数は減ることになる。

また、安部や松木は低い位置よりも高い位置で勝負させたい。それなら、右WGをサイドに張るタイプ、例えば紺野を入れて右SBを内側に絞らせ、IHは高い位置にいる方がしっくりくる。それかIHを降ろすなら高萩を入れた方が低い位置での役割はより高いレベルでこなせるだろう。

しかし、交代は永井よりも内側に入ってくる高萩を右WG。まあ時間帯や展開を考えて攻撃の配置はあまり考えていない交代だったのかもね。

配置的にぐちゃぐちゃになりながらもそのまま逃げ切り試合終了。Jリーグ初の国立開催は完璧な試合だったといえるだろう。最後にエンリケが怪我していなければ…

おわりに

4試合ぶりの得点。4試合ぶりの勝利。レアンドロや佳史扶など攻撃のタレントも帰ってきた。その変わりにCBがいなくなったけど。

レアンドロが重要な選手だ。それだけにチームに与える影響は大きく、いる時といない時で戦い方を変えなければならない。

個人的にはレアンドロをWGで使う時にはもう1人のWGはサイドに張るタイプが良いと思う。この試合の前半は左サイドに張るアダイウトンを基準として青木や小川、松木が動いたことでビルドアップが機能していた。なのでレアンドロを左WGに入れたら右WGを紺野にして右サイドで基準となり、後ろを動かしていく方が機能するだろう。今の好調な永井を外すのは難しいけど。

全体が流動的に動きながら、全体の立ち位置を崩さないようにできればいいのだけど、今の段階のFC東京には少し難しい印象。部分的に見ればうまくいっていても全体的に見ると崩れやすくなっている。そのため、どこかに動かさないポジションが必要だろう。

基準点ができれば周りの選手は動きやすくなる。自分がいなければいけないポジション、見なければいけないポジションが1つ減るから。4-1-2-3では基準点となれるポジションはアンカーかWG。青木を降ろす(動かす)形を続けていくならばWGは少なくとも片方は基準になれる選手にした方がいいかな。

(この基準点の話は自分の持論なので1つの意見として見て下さい)

試合結果
2022.4.29
FC東京 2-0 ガンバ大阪
国立競技場

【得点】
FC東京
 38' アダイウトン
 65' レアンドロ

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