FC東京vs清水エスパルス〜狂ったプラン〜[Jリーグ24節]
さあ3連勝を目指して清水エスパルス戦です。
FC東京の前節はサンフレッチェ広島戦。中断期間で課題のビルドアップも大幅に改善。後半アディショナルタイムの勝ち越しゴールで逆転勝利。久しぶりに良い形での勝利、そして5月下旬以来の連勝となった。
一方清水エスパルス。前節のサガン鳥栖戦は3-3の引き分け。自分は前半しか見られなかったけれど、あの内容から良く追いついたなって印象。これで6試合で1勝のみ、ただその6試合で11得点も決めている。点は取れるけどなかなか勝てないって感じ。
前回対戦は5月25日の15節。WG渡邊、アンカー東が始まった試合。小川の2ゴールなど3-0でFC東京の勝ち。個人的には今季のベストの試合だったと思う。
詳しい試合内容はこちらから ↓
試合概要
メンバー
・FC東京
スウォビィクとレアンドロがコロナウイルス陽性から復帰。紺野に代わりアダイウトンが今季初めて右WGでスタメン。
・清水エスパルス
前節からはスタメン6枚も変更。特にDF+GKは山原を除いて全員代わっている。乾が移籍後初スタメン。
(1)継続でスタート
FC東京のスタメンを見ると前節のサンフレッチェ広島戦からの変更点はGKを除けば右WGが紺野からアダイウトンに代わったのみ。この両選手はともにサイドに張るタイプのWG。そのため、右サイドはWGがサイドに張ってSBが内側を取る、左サイドはSBがサイドに張ってWGが内側を取るというSBとWGの関係性は広島戦と同じでスタートしたことになる。
これを踏まえてFC東京のビルドアップと清水の守備から振り返っていきましょう。
清水は守備時も4-4-2の形。カルリーニョスがアンカーの東のマークについてチアゴサンタナがCBにプレスをかけていく。SBの長友と佳史扶にはSHの乾とピカチュウ、IHの安部と松木には松岡と白崎と人について行く形。あとはディエゴにはCBの鈴木と立田がかなり厳しくマークについていた。これは広島戦でディエゴが降りて行って上手く起点を作っていたため、ここは潰そうという意識はあっただろう。
もう1つ10分くらいから見られるようになったのが2トップが2枚ともCBにプレスに行く形。この時にはCHが東のマークに出て来る。これでサイドに誘導したら空いているIHには逆サイドのSHが絞ってマークについた。
こんな感じで人につく守備をしてきた清水。それに対してFC東京は前節と同様に左WGの三田のところでマークのズレを作り出して前進することができた。
立ち上がり2分10秒、森重がボールを持った場面で三田が内側に絞り縦のパスコースを作る。連動して佳史扶が高い位置まで上がることで右SBの原は三田のマークについて行けず、マークをずらしてプレスを回避できた。
(2)崩れた配置
20分くらいからFC東京はWGの左右を入れ替え。三田が右WG、アダイウトンが左WGとなった。広島戦でもアダイウトンは途中出場から最初は右WGだったけれど5分くらいで左WGに代わっていた。2試合続けてとなるとアダイウトン本人が右サイドは嫌なのかね?別にこの試合も悪かったわけではないから、アルベルさんが代えるとも思えないし。
こうなると両サイドのSB-IH-WGの関係性は崩れてくる。これまでは右サイドがWGのアダイウトン(紺野)がサイドの高い位置で張って、SBの長友が内側を取りながら低めの位置でビルドアップに絡み、IHの安部が高めの位置でPA内に侵入する。左サイドはWGの三田が内側に絞ってビルドアップの出口を作りながら、SBの佳史扶がサイドに張って、松木が低めの位置でビルドアップに絡みながら前にも出ていく、といった形だった。
しかし、WGが入れ替わったことで右サイドでは誰がサイドに張るのか、左サイドでは誰が内側でライン間を取るのかと上手く回っていた3人の関係性が崩れる。それでも味方の位置を見ながら必要な立ち位置を取ることができていたのでサイドに張る選手がいなかったり、ライン間にいなかったりということはほとんどなかった。この辺はチーム、選手にポジショナルプレーが浸透してきているなと感じた部分。
ただ佳史扶がライン間を取らなければならなくり、安部は低めの位置を取ったりサイドまで開いていくこともあった。三田や交代後はレアンドロが内側のレーンのところにいたことで安部はPA内まで入っていく場面もいつもより少なかった。配置が崩れたことでどこかで苦手な仕事をする選手が出て来ることとなる。
立ち位置を変えながら3人で旋回してマークをずらして前進できれば非常に良いのだが、特にそういうわけでもなく。そもそも今のFC東京ではまだその段階には達していないだろう。
(3)犠牲になった佳史扶
次にFC東京の守備と清水の攻撃を2の段階に分けて。
清水はビルドアップ時、CHの松岡がアンカーのような位置を取る。そして白崎とカルリーニョスがIHっぽい位置を取り4-3-3気味の配置へと可変する。
これに対してFC東京はCFのディエゴがアンカー役の松岡をマークにつき、WGの三田とアダイウトンでCBにSBへのパスコースを切る外切りプレス。そしてIH役の白崎とカルリーニョスには松木と安部で対応する。松木と安部がCBまで出ていった時には余りの東がスライドしてマークにつく感じ。清水が可変してきたことで逆にマークがはっきりした形となった。
WGの背後を取られることもあったが、この形の守備はそれなりに上手くいっていたと思う。強いて挙げるならアダイウトンのコースの切り方。左CBの鈴木は右利きなのでもう1,2歩左に立って右足を切った方が良いかなと思った。右足を切り切れずにアダイウトンの左側を通されることがあったので。まあそれくらい。
FC東京にとって問題だったのは自陣まで下がった時の守備。自陣まで押し下げられた時もFC東京はWGは高めの位置を取り続ける4-3-3の守備ブロック。そのため、サイドのところで清水は数的優位の状況となった。
特に清水の左サイドの方。長友、安部の2枚に対して山原、カルリーニョス、乾の3枚で上手く数的優位を作られた。清水は左サイドでボールを保持することでFC東京全体を引き寄せて、広いスペースがある逆サイドで佳史扶とピカチュウの1対1、そこに原が絡んで1対2を作り出した。ここでもWGの三田が高い位置を取っているため、カバーが間に合わなかった。
6分の場面。左サイドでボールを保持。数的優位となっているため、ノープレスでボールを持った山原から逆サイドのピカチュウへ。この時点で佳史扶とピカチュウは1対1、さらに原も絡み1対2となった。
三田は高い位置を取っていたため、原のインナーラップについて行くことができなかった。これと同じような形は何回か作られた。
個人的には高い位置からプレスに行く時には4-3-3で、自陣やミドルサードまで引いた時にはWGも下げて4-5-1、またはアダイウトンは前に残して三田を下げる4-4-2にした方が良いと思った対応。あのスペースで1対1、1対2となると佳史扶も守り切れない。もともと守備が特徴の選手ではないし。もっとサポートを入れてチームで苦手を消してあげないといけなかったと感じた。
前半は左サイドからの大きな展開で佳史扶のところで1対1を作っていた清水。ハーフタイムを挟み後半からはアダイウトンのところから外切りプレスを回避して右サイドからの前進が増えた。
アダイウトンはプレスの献身性や精度が高い選手ではない。そのため、後半からは右サイドから前進して直接的に佳史扶のところを狙っていこうという指示があったのかもしれない。それで先制点がまさにその形からだった。
前半から佳史扶のカバーに奮闘していた松木だったが、この場面では上手く入れ替わられてしまった。試合後インタビューで自分の責任と言っていたけど、あれは松木の責任ではない。前半からやられてた佳史扶のところを修正できなかったチームの責任。
(4)足りなかったブロック攻略の形
77分にFC東京はアダイウトン、安部に代えて紺野、フェリッピを投入しシステムを4-2-3-1に変更する。ここからはそれぞれ得意なエリアで勝負できる配置となった。
配置は整理されたが、アルベルさんも言っていたようにサイドからの攻撃が少なく中央から中央からと繰り返すこととなった。
攻撃の中心となるブラジル人のディエゴ、フェリッピ、レアンドロが全員中央に集まったことでどうしてもサイドより中央から!となってしまった感じ。これは誰が良くないとかではなく、そうなってしまうのは仕方がないことだと思う。
あとはハーフスペースを取っているディエゴとレアンドロがポケットに走り込むタイプではないのもサイドから崩せなかった原因の1つと言える。2人とも自らが走り込むよりも走り込む選手を使うタイプ。13分40秒の場面のようにWG、IH、SBの三角形でサイドを崩してポケットへと侵入していく形をもっと作らなければ得点には繋がってこない。
おわりに
0-2で敗戦。悪い内容ではなかったが、WGを入れ替えたところで崩れ出した試合となってしまった。
プランが狂ったとはいえアルベルさんももう少し選手を助けることはできたと思う。例えばアダイウトンの右WGを諦めた時点で左WGディエゴ、CFアダイウトンにするとか。そうすれば左サイドのWG、IH、SBの関係性は維持できるし、守備でもディエゴの方がアダイウトンより自陣に下げて佳史扶のサポートはできる。
あと交代枠を使うとしたら佳史扶と鈴木を代えて長友を左SBにするとか。それならば左サイドはアダイウトンをサイドに張らせて、松木を高い位置で勝負させられる。また、守備でも長友なら1人である程度は対応できる。
といろいろ書いたが、この試合は上手くFC東京の弱いところを突いた清水が強かった。FC東京も久しぶりにホームでの敗戦となったわけだが、必要以上にネガティブになる敗戦ではないと思う。中断前に比べてビルドアップが改善しているのは明らかだし、引いた相手を崩すのは現代サッカーでは難しいから。欧州の強豪チームもそれで格下相手に勝ち点を落としているし。この部分は時間をかけて積み上げていって、中央とサイドを上手く使えるようになれば得点に繋がってくるだろう。
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