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魔法をかけないで、嘘を本当にして

るるいぇだよ。
先生と話すことで、考えを整理したりうるさい声に耳を傾けないようにしたりしてるの。わたしの頭の中の先生。
これはその会話の記録だよ。会話と言っても、先生は聞き役に徹しているから一方的にわたしが話してるだけだけど。

お久しぶりです。はい、元気です。鬱から立ち直りつつあります。
でもそれは良いこととは限りません。わたしは今、躁状態だからです。
行動力があってやりたいことをやって、もっともっとと焦燥感に似た衝動が体の内側で渦巻いています。
あれもやりたいこれもやりたい。空焚きしているフライパンのように、脳から煙が立ち上がります。躁は魔法のようにわたしの体を動かすことができるけど、それは気付かないうちに負担を溜め込みます。
楽しいこと、面白いことやりたいこと、熱中しているあいだは忘れられるその負担も、魔法が切れれば一気に襲ってきます。わたしは万能な人間ではないのです。不完全な、他人よりも劣るところばかりの出来損ないなのに、それを忘れてしまうから、痛い目に遭うんです。

躁の魔法がとけてしまえば、また鬱に逆戻りです。この行ったり来たりの繰り返しです。もうずっとそうです。うんざりします。
精神科に行きました。躁状態だと正直に打ち明けると、薬が増えました。バルプロ酸ナトリウムです。躁になる度に出されている薬です。
でも、わたしは飲むのが嫌で飲んでいません。だって、期限付きとはいえ今は魔法がかかっている状態だから。何もできない肉の塊に戻りたくないから。

そうそう、映画『オオカミの家』のBlu-rayを予約しました。この間、先生にも話したやつです。コロニアディグニダについてもう少し勉強したいな。
何度も観たくなる映画だったから嬉しいです。春には届きます。その時のわたしはまだ躁のままかな。それとも鬱に戻っているかな。わかりません。

今日のことも明日のこともわからないです。昨日のことはもっとわかりません。いつも記憶が断片的で時系列がぐしゃぐしゃになります。夢の記憶も混ざって、どこからが本物なのか区別ができません。
でも、それは大したことじゃないので構いません。過去の失敗や苦い経験を何度も繰り返し上映するような、そんな脳みそです。深く考えることは好きですが考えに深く囚われることは忌まわしいと思います。
でもその呪いからは逃れられないのです。
先生も幼少期に言われた何気ない一言を忘れられずに大人になったんじゃないですか?

そろそろ薬が効いてきたので眠くなってきました。リボトリールとオランザピンです。今夜は怖い夢を見たくないです。
先生、おやすみなさい。またお話しましょうね。

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