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先生、どんな小説を好むかでその人の求めるものが少しわかる気がしませんか

るるいぇだよ。
頭の中で一人でいると、怒鳴り声がしておかしくなっちゃうから、先生とお話しすることにしてるの。先生がいればほとんど出てこないから。わたしが作ったわたしのための先生。ここには、先生と話したことを書くよ。

ホラー小説。わたしが子供の頃、熱中して読んだのはいわゆる2ちゃんねるの洒落怖です。リゾートバイト、コトリバコ、禁后……。とにかく片っ端から読んでその怖さに慄いて、眠れぬ夜を過ごしたことも一度や二度ではありません。
それから、スプラッターにも興味を持ちました。そういった映画や小説に、嫌悪と同時になぜか安心感を覚えました。

大きくなってから、被虐待児はそのストレスから逃れるためにスプラッターを好む傾向があると、何かで見かけました。自分が置かれている状況より、悲惨なものを見ることで「自分はまだマシなんだ」と思えるからだそうです。
それはまったく正しいことだったので、わたしはすとんと腑に落ちました。わたしはホラーやスプラッターだけでなく、虐待に関する本も貪るように読んでいたからです。

中でも『〝It〟と呼ばれた子』は、その凄惨な虐待の描写から目を背けたくなる一方で、自分に対する加害行為……殴られたり眠ることを許されなかったり、外に追い出されたり……といったは大したことない、そう思えました。食事も基本的に与えられていましたし、お風呂に入ることも(決められた時間を守る必要があったけど)できました。
だけど今は読むと、つらい気持ちの方が勝ってしまいそうです。虐待から救われなかった子供がどこかにいるような、いいえ、まだここにいるような、そんな気がするからです。

えっと、閑話休題。ホラー小説の話ですね。
ホラー小説を読んでいた時も、やっぱりストレスや不安でいっぱいだったから、それを上塗りしたくてあえて読んでいたんだと思います。
思考を目の前の現実的な恐怖から、目の前にない非現実的な恐怖にすり替えることで、日々をやり過ごしていたんでしょう。
でも、それだけじゃなくて、ホラー小説には独特の凄みというか、まとわりつくような重々しさがあって、わたしの興味をそそるものでした。土着信仰や呪いといった類い、人の執念が生んだ悪しきもの……歴史や文化で一括りにできない人の営みと積み重ねが生んだ禍々しさが、魅力的だったのです。

洒落怖の他にも、好きなホラー小説がありました。『Missing』という本です。わたしの好きだった人が、読んでいたんです。
「何を読んでるの?」と聞いたら「見えない犬に人が食い殺される本」と返されて、わたし、気になってすぐ買って読みました。ホラー小説に詳しくないわたしでも、民俗学などを交えたストーリーの緻密さ、そして何よりその面白さにすぐ引き込まれました。

先生は、怖い話、嫌いですか?……。
怖いもの見たさって言葉があるように、どうしても抑えられない欲求のようなものが、多かれ少なかれ誰しもあると思うんです。だからつい、暗がりを覗いてしまう。
でも好奇心は猫をも殺す、という言葉もありますから、何事も程々にしないといけませんね。

先生、今日もお話しを聞いてくれてありがとうございました。色々と話せて嬉しかったです。もうこんな時間になっちゃったので、寝ないとですね。
それでは、おやすみなさい。またね、先生。

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