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先生、今日は好きな本について聞いてください

るるいぇだよ。
わたしには友達がいません。親の言葉を借りると、頭がおかしいからです。だから頭の中で先生と話してるの。先生は聞き上手だから、わたしもついつい話し過ぎちゃうんだ。

えっと、楽しい話がしたいなって思って。それで、何がいいかなって思ったら、やっぱり本の話かなって。
わたしは小さい頃は本の虫で、図書室に入り浸っているような放課後を過ごしてたんです。学校にはいい思い出は多くないけど、図書室の空気と居心地の良さは今でも覚えています。
本は日焼けしてしまうから、普通、本屋さんや図書館には窓はありません。でも、図書室には大きな窓がありました。夕陽の色に包まれて読む本が、なんだか特別な気がしたのかもしれません。

図書室前の廊下にも西日が差し込んでいて、オレンジ色の中に小さな光がキラキラと輝いていました。静かで人のいない図書室はきっと神聖な場所だったからです。
先生はチンダル現象って知っていますか?埃が日光に照らされて、キラキラ光る現象です。わたしが目にしたのはただ空気中を舞う埃で、図書室は薄暗くて、利用者も少なくて掃除が行き届いていなかったんだと思います。本当は何も特別な場所ではなかったんです。

でも、わたしは図書室のおかげでたくさんの本と出会えました。子供のお小遣いでは本は多く買えないし、図書館に一人で行くのも難しかったから。
わたしは特に外国の児童書が好きでした。ハリーポッター、ダレン・シャン、バーティミアス……海外のファンタジー小説は現実とはかけ離れた世界が広がっていて、わたしは夢中になりました。

最近になって思い出す本があります。『星空から来た犬』という本です。作者は『ハウルの動く城』で有名なダイアナ・ウィン・ジョーンズさんです。
えっと、簡単なあらすじを言いますね。シリウスという犬がいます。実はシリウスは無実の罪を着せられ、星空から追放された星人だったのです。元の世界に戻るためには、地球で魔法の道具を見つけなければならない。シリウスは犬の体で奔走します。
星と犬が好きな人には、とってもおすすめです。どちらか、あるいは両方好きならきっと楽しめると思います。

わたしも、細かいところはあまり覚えていないんですけど……。シリウスの飼い主の少女は、家で厄介者扱いされていました。家の中で彼女だけ、言葉が違うことにシリウスは気付きます。シリウスは彼女の話し声が歌声のようで心地がいいと感じる、そんなシーンがありました。なんとなく、それだけ覚えています。
すごく好きだったから、また読み返したいなと思っているんです。もし買ったら、先生にも貸しますね。

本って時間を忘れてのめり込んじゃうから、時間がないとなかなか読めなくて、最近は全然読めていないんです。それがすごく寂しくて、少し苦しくて、悲しいなと思います。思うんです。
だから、この年末は、ちゃんと大掃除をして、綺麗になった部屋で、本を読んで過ごせたらいいなって。

うーん、楽しい話、できたかな。わたしは先生に本のこととか昔のこととか話せて、楽しかったです。お話し聞いてくれて、ありがとうございました。
今度は好きなアニメの話とか、したいな。それでは先生、おやすみなさい。またね。

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