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夢の中で会う人、二度と会わない人

るるいぇだよ。
わたしの頭の中は常に声が聞こえるの。わたしが話してることもあれば、わたし以外の言葉をわたしがわたしを苦しめるために発していることもあります。
そういうのって、辛いし無意味だから、なるべく耳を傾けないようにしたくて、先生に話すことにしてるの。夜は特に、声がひどいから。
ここには頭の中にいる先生との会話を記録してるよ。

今日は、夢の話です。
わたしはよく現実感の強い夢を見てしまうから、起きたあとも夢のことだったか現実にあったことかぐちゃぐちゃになってしまうことがあります。
例えば、仕事でミスをしてしまった夢とか。くだらない見栄のために嘘をついて、友人に見限られてしまう夢とか。
でもそういう夢は、起きた時、安心できるからまだいいんです。夢でよかったと胸を撫で下ろして、現実に戻れるから。

一番の悪夢は、もう届かない場所や人に触れる夢です。
大切だった人、楽しかった空間、その再現VTRのような夢。おままごとのような、どこかしら事実が欠けた不完全な世界。でも、夢を見ている時は不思議とその矛盾に気が付かないんです。
いかにも現実に言いそうなこと、ありそうなこと、それを享受している自分。大切だった人たち、もうわたしの前からいなくなった人たちが、笑っている。隣にいる。そんな夢から覚めた時、わたしは何度も何度も絶望します。

わたしは、たくさん失敗してきました。発達障害だと診断を受ける前、自分の扱い方も上手くわかっていなかった頃、たくさん人を傷付けました。
今もまだ、正しいやり方がわかっていません。手探りで一生懸命探しています。毎日、綱渡りをしているような、薄氷の上を歩くような、緊張感でいっぱいです。
普通ならやること、普通ならやらないこと、一つ一つ覚えないといけないからです。覚えたとしても、状況に即して瞬時に対応する力がなければ意味がありません。後から気が付いて、あの時ああ言えばよかった、ああすればよかった、と後悔することばかりです。

夢の中では、わたしは上手に生きています。大切な人たちを失望させることなく、笑い合うことができています。わたしが望んだものを、わたしの脳みそが見せているんです。都合のいい夢は、現実に戻った時、その残酷さに身が引き裂かれそうになります。
わたしの隣には、もういない人たち。夢でしか話せない友人たち。

いつも、夢の中ではそれが夢だと気付かずに、とろとろと甘いまどろみに浸っています。
だけど一度だけ、気が付いたことがありました。
二度と会えないはずの人が目の前にいました。優しい笑顔を向けられて、こそばゆい気持ちで胸がじんわりします。そっと隣に座ったわたしは、こう思いました。
「いい夢だな、覚めてほしくないな……」
けれど、現実は無情で、程なくして目を覚ましてしまいました。わたしはベッドの中で、さめざめと泣きました。
夢から覚めたことよりもずっと悲しかったのは、夢でしかもう会うことができないと、自分でわかっていたこと。そしてそれを思い知ったことでした。

今日は、どんな夢を見るでしょうか。また、会えない人に会えるでしょうか。それとも、先生が出てきたりするかな。
もう不安も期待もない、透明な夢が見たいです。それでは先生、おやすみなさい。またね。

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