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ローソンで全滅しかけたあの朝

札幌の会社に勤めていた2年前のことだった。

会社までは車で片道約40分。決して近くはない。
【遅刻絶対しないマン】の僕は、早め早めの行動を心掛けていた。

その日も、絶対に遅刻をしないように、逆算に逆算を重ね、余裕に余裕を持たせ、愛車を駆った。
結果的に、8時集合のところ7時15分くらいに着きそうになったので、【時間の使い方下手くそマン】だったのかもしれない。
通勤ラッシュ時はめちゃくちゃ混んでいるが、少し時間をずらすとめちゃくちゃ空いている。それが羊ケ丘通である。

早く着いたとて、現場仕事だったので会社では特にやることもなく、ただ眠そうな顔で突っ立っていることしかできない。
というわけで、朝食を買おうとコンビニへ寄ることにした。


会社の最寄りコンビニだと他の社員に見られるかもしれないので、少し離れたローソンに愛車を停め、ブルー&ホワイトの店内に入った。

さて、何を食べようか。
店内を物色していると、あるものを見つけた。

カヌレだ。

当時、何人かの知り合いがTwitterで「ローソンのカヌレ売り切れてた~ぴえん🥺」みたいなことをつぶやいていたのを思い出す。
どうやら、ローソンのカヌレが美味しいと評判のようだ。

僕は、カヌレがどういうものか知らなかった。
でもスイーツなんでしょ? 美味しいんでしょ?
じゃあ僕の出番だね。この僕、アルロンスイーツ王子の。

ホットコーヒーとともに、カヌレ、お買い上げ。


愛車に戻り、さっそくカヌレを味わおう。
朝から砂糖まみれのお菓子を食べるとは、なかなか狂気じみている気がしないでもない。
でも食べないよりいっか、とこういうときだけ発揮される謎のポジティブシンキング。

コーヒーをすすり、糖分を迎え入れる準備を整えて、カヌレの入場。

「いただきま…




かってぇ!!!!!」





一瞬、何が起きたのかわからなかった。

カヌレは僕の歯という歯を弾き返し、その反動で僕はヘッドレストに頭をぶつけた。『ファイアーエムブレム 封印の剣』で、ノーダメージ攻撃のときに効果音が「ザシュッ」じゃなくて「ビンッ」ってなったときみたいだ(伝われ)。

僕は物理的にも精神的にも衝撃を受けた。危うく歯が全滅するところだったぞ。

なんてこった。こんなに硬いものだとは思わなんだ。カヌレは依然としてその黒々としたボディを輝かせている。歯形はおろか、こぼれカス一つない。
カヌレ、守備力高すぎない? 千年の盾かよ。


もう一度チャレンジだ。
「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」である。カヌレの硬さはもう把握したし、我が歯軍団は士気を取り戻した。今度こそ、我らの真の力を見せてやろうではないか。


「全軍、突撃ぃーーー!!!」


激闘の末、我が軍は勝利した。

一時はどうなることかと思ったが、あの堅牢な外殻さえ突破してしまえば、後はふんわりしっとりの生地を味わうだけ。
コーヒーの苦さも相まって、それはそれは美味しく頂いた。

時刻は7時40分。ちょうどいい時間だ。
一本たりとも歯を失うことなく、僕は凱旋した。いや、出社した。


#66日ライラン

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