苦しむ弟を無限地獄に突き落とす姉
全然強くないくせに、怪我は一丁前にしていた高校時代の部活動。バドミントンとかいう、最もアキレス腱に負荷のかかるスポーツ(アルロン調べ)なので、無理もないが。
高校1年、いや2年だったかも、とにかく高校時代のあの日も、僕は怪我をした。
腰を。
アキレス腱じゃねーのかよ、というツッコミは受け付けません。
夜の7時頃、親に連絡して迎えに来てもらった。自転車通学だったので、自転車もろとも車にぶち込まれた。
なんとか帰宅できたはいいが、腰が痛い。めちゃくちゃ痛い。椎間板ヘルニアとか腰椎椎間板症とかではなかった(翌日治った)が、痛みのジャンルとしてはそんな感じだ。少しの振動だけで、激痛が腰の周りを全速力ダッシュする。
ソファーに座るも、やはり腰は痛いままだった。でもまあ、一晩安静にしていれば多少は緩和されるだろう。
しかし、僕の安息を侵す人間がそこにいた。
姉だ。
マジでこいつには煮え湯を飲まされ続ける人生だ。
その日あった出来事を、聞いてもいないのにベラベラしゃべり出すのが、我が姉の日課だった。
で、我が姉はいとうあさこみたいなトークセンスをお持ちでいらっしゃるので、ごていねいに面白おかしくトークを盛りやがるのだ。そんなん笑ってしまうに決まっている。
すると、僕の体に異変が起きた。
笑うと、体が揺れる。
体が揺れると、腰が痛い。
腰は痛いが、笑いは止まらない。
笑いは止まらないので、腰には激痛が走り続ける。
腰の激痛に耐え切れなくなり、涙が出る。
そう、僕は笑いながら泣いてしまったのだ。
竹中直人かよ、というツッコミは受け付けません。そもそもあの人は「笑いながら怒る人」だろう。
「あははは……痛い痛い痛いっははははh痛たたたっ……はっはっはっ……たいたいたい痛い痛い!!」
地獄の無限ループである。笑えば笑うほど痛みが強くなるのに、笑いを止めることができない。誰かロマンティックじゃなくて姉の話を止めてくれ。腰が、腰が、苦しくなる(苦しくなる)。というかもうすでに苦しい。
その様子を見た姉はというと、めっちゃくちゃ笑ってる。ついでに母も一緒になって笑ってる。高校男児の苦しんでいる姿を見て、二人は大爆笑している。この人でなし母娘め。
笑いは人を救うが、笑いが人を地獄に突き落とすこともある。世界中の全姉は、このことをぜひ肝に銘じてほしい。
【参考記事】
#不憫男子
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