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想像力にささげる詩

僕は想像力くんがかわいそうだ
想像力くんはいつも泣いている
「おれは人を攻撃したいわけじゃないのに」

想像力くんはいまや人を殴るための武器になっている
人は言葉のリボルバーに想像力くんを装填する
激しく興奮しながらスマートフォンをタップし
そこに文字を並べ立て
引き金、すなわちツイートボタンを押す
さあ発射!

「僕は想像力を軽視する人がきらいですね
どうして画面の向こうに人がいると想像できないのだろう
その人にも心があり、生活があり、家族がいるということがどうして分からないんだろう
この人は、自分が同じように言われたらどう感じるかっていう想像力がないんだよな」

銃撃した人はおのれの見事な手際にうっとりする
演説
ご高説
陶酔
達成感
なんでもいいが、ともかく気分はよさそうだ

僕はそっと自分の言葉のレパートリーから想像力くんを切り離す
もうこの言葉は汚れてしまったなと思う
優しさくんや共感くんなども同様にゴミ箱へ送る

さようなら
僕にも君たちと一緒に、愉快に暮らしていた時代があった
悪いのは君らじゃない
ただ
汚してくる連中が世に絶えないという
どうしようもない事情があるだけだ

さようなら
「想像力」という言葉