デザインの試み

勝手にデザイン提案をしたくなるような状況に遭遇することが結構あるなあと思っています。そこで、これは改善した方がいいと思うような事柄に対して、頼まれてもいないのに、試みにデザインをしてみるという企画を立ててみました。
問題が見つかった際に、SNSやニュース記事を中心にさまざまなかたちで批判批評を耳にすることはありますが、具体的な改善提案を提示し実行しない限り、状況は改善されません。実行をはばむ障壁やボトルネックや落とし穴も続々と報告されるかもしれません。ひとつずつでも障壁を取り除き、ボトルネックが滞らせている流動性を回復し、落とし穴をふさぐ作業を積み重ねることによって実効性を確保していくことと、その実行を支える推進力や動機付けになることこそがデザインの目指すべきものです。

本来、もうすでに問題解決のための議論や計画が開始されていることが望ましいことです。
そもそも大半のプロジェクトは、オープンな議論がされることなくプロジェクト化され、プロジェクトチームの中で熟成されるもので、実行段階になってはじめて世の中にオープンにされるのだと思います。そしてしばしば、その結果にガッカリさせられたりすることがあります。特に政治家や官僚主導のプロジェクトにブラックボックスな印象を強く持っています。意思決定のプロセスが大変見えづらいのです。見える化がたりないと言ってもいいです。
特に日本の実情において、意思決定のプロセスがほとんど見えないこと(一見見える化を推進しているかのように見せておきながら肝心のところが伝えられていないことなど)を不満や不安に思っている人が多数いるのではないかと思います。
ですから、ここではできるだけオープンなかたちでデザインを進めたいと考えています。
まだ議論が進んでいなかったり、停滞しているような状況なのであれば、これをきっかけに少しでも議論が活性化して、改善の緒(いとぐち)になるような気づきと動きが発生すればと願っていたりします。

デザインは、よく誤解されることですが、いまだに美術大学出身の人がやるべき専門の仕事と思われていたりします。しかし、課題解決の手段としてのデザインは、課題解決に当たる当事者がやるべきで、本来、政治家や官僚、経営者、公衆衛生学の専門家などが取り組むべきものだと考えられます。あるいは、デザインをするデザイナー自身がそれぞれの課題解決の当事者になる必要があります。現状は、残念ながら、日本の政治家や官僚や公衆衛生学の専門家がデザインを理解して取り組んでいるようには見えませんし、デザイナーが率先して参画している様子も見えません。外野にいて提言だけしていても意味がなく、当事者として動いてかたちにしていかないといけないものなのです。面白いことに、実業に関しては積極的な取り組みがあって、経営者がデザインを理解して取り組もうとしたり、経営者とデザイナーがタッグを組んだ成功事例が多く紹介されるようになってきました。それでも日本ではまだまだ立ち遅れているような状況があります。デザインが介入する余地がたくさんあるのです。
もちろんひとりで考えるのは当然限界があります。こんどう個人は、分野としてはデザインに興味があるだけで、医療分野の専門家でもないですし、リスク管理やセキュリティの専門家でもありません。兵站・物流(ロジスティクス)の専門家でもなければ、ましてや行政分野の専門家でもありません。専門家による深い考察と洞察(インサイト)は大変貴重で重要です。きっかけづくりになって、いろんな人がいろんな場所で議論を活性化させ、問題解決に取り組み実行していけるようになればと願っています。デザインを進めていくとわかることですが、次々と課題が見つかり、問題が広がり、迷宮にハマるようなことがよくあります。この先提案していくデザインにもいろんな障壁、ボトルネックなどが出てくるでしょう。その状況をさまざまな知恵を動員して乗り越え、改善を目指して実行のための士気を鼓舞することこそがデザインのもつ力だと確信して考え続けたいのです。
ここでこれから試みるデザインのほとんどは、デジタル化が前提になります。デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)は必須です。デジタル化が前提ですので、デジタル化の弊害、たとえばハッキングの問題対処などのデジタル化に伴う新たな課題を抱えることにもなると思います。それでもデジタル化は避けて通れない方向性ですし、こんどうもどっぷりデジタル化の提案をずっとし続けている人間なので、すべての議論はデジタル化を中心軸にして進めていくつもりです。良くも悪くも新型コロナウイルス感染症の社会問題によって、それまでデジタル化に足踏みをしていた領域においても、急速にデジタル化・オンライン化が進んでいくことが想定されると思いますし。
足りないところが次々と出てくるなぁとすでに実感しています。思いついたことからバーっと書いていったものなので、あっちこっちに話が飛んだり、深堀りの仕方がまちまちだったりとかなり荒削りです。たたき台・ドラフト段階と見据えて提言し、研鑽(ブラッシュアップ)しながらデザインの精度を上げていくことも意図した取り組みにしたいと考えています。

判断基準を間違うことで、問題が生じたり大きくなったりすることがあります。適切な判断基準をもてるようにすること、そのためには、何より基本が大切であると考えます。初心にかえること、原理原則で考えてみること、科学的な思考=反証可能性を大切にすること、よりよくすること。デザインにはユーザーの目線がとても大切で、専門家であり続けることよりも「にわか」であることの方が強みになることが多々あります。基本に立ち返ることができる評価軸を整えることは大切な作業です。
評価軸を適切に整えることができたら、原理原則の理解、情報収集と状況の把握、準備:スキーム作りやリソースの調達・配分、そして実行です。

もともとはいろんな分野でデザインの試みが必要だと思って立ち上げた企画ではあるのですが、まず当面は、今もっとも避けて通ることができない取り組むべき課題として、新型コロナウイルス感染症=COVID-19との付き合い方、ウィズコロナのためのデザインからはじめたいと思います。

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