【短編】8月31日、切符を拾った。01
*午前中*編
仰ぐと玉座のような入道雲が天を蹂躙していた。8月31日。ツクツクボウシの断末魔の声が響く。夏の終わり。どこかの体育館から、とぎれとぎれの、カノン。
わたしは多分、”切符”を拾った。というか、切符だったんだろうと思う。
───その前にわたしのちいさな頃の話をしよう。
───”ちいさなワタシ”は10数年前のこの日、朝から大きな肩掛けかばんに少しの旅の装備を詰め込み、お気に入りの麦わら帽子と白いワンピースはためかせ、出発した。とにかく何も考えずに歩いた。夏の宿