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童話ー赤いナイトキャップー

しゃりっ

しゃりっ



大きく艶やかな黒いブーツが、雪の中に沈み込む。

目方の重さが、雪に沈むブーツがそれを物語っていた。

彼は、寒い雪国の出身であった。

寒さを凌ぐためか、真っ白な口髭と顎髭を蓄え、深々とナイトキャップを被っていた。

ナイトキャップから覗く白い眉毛と、その下にある丸く大きな可愛らしい青い瞳は、とても優しげであった。

彼は普段、木こりのような仕事をしているが、夜になると、余った木材で小さなお人形やクルマ、小さなお家、いろいろな動物たちをかたどったお人形をたくさん作っていました。

それは見るものの心を引き、とても優しい気持ちにさせる、そんな不思議な物でした。

どうやって作っているのか、私たちには分かりません。

でも、毎年年末になると、その不思議な贈り物は、大きな麻の袋に詰め込まれ、ソリの後ろに乗せられて、今か今かと待ち望む子供たちの枕元に届けられるのです。

そう、彼こそがサンタクロースその人であったのです。

彼の住む小屋のすぐ隣に、しっかりとした丸太で造られたトナカイたちの棲家がありました。

トナカイたちは、贈り物のたくさん載せられたソリを軽々と引いて、さらにサンタクロースも乗せて、舞い上がるのです。

星降る夜空を流れ星のように、トナカイの引くソリは、子供たちの住む街に向かって、疾走するのです。

そして、空からサンタが手を振ると、きらきらと星屑のように、子供たちの眠る枕元に贈り物が届けられていきます。

子供達が目を覚まして、贈り物を手にして喜ぶ姿を思うと、サンタは嬉しくて仕方ありません。

何より子供達の笑顔が大好きなのです。



子供達は、今は静かに夢の中。

クリスマスを想い、贈り物を今か今かと待っているうちに、あるいはサンタクロースに今年こそ会えるかもしれないと、ふわふわの羽布団の中で待っているうちに、子供達は眠りについていました。

明日には贈り物が枕元に、窓辺に、ツリーのもみの木の下にあるかもしれません。

明日になったら、サンタクロースに会えたと喜んでいるかもしれません。

ひんやりとした空気に包まれた冬の夜、子供達は手が冷えないように、足が冷えないようにと急かされるように布団に入れられ、あたたかな温もりに、いつしかその愛らしい瞳を瞼で閉じるのでしょう。

どこの屋根も、煙突からの煙が消え、いつしか街灯の明かりだけが点々と灯り、森の動物たちも身を寄せ合って夜を迎えました。

輝く星の空の下、優しいぼんやりとした月明かりが、トナカイの引くソリを照らしました。

大きないくつもの麻の袋は、同じ麻のロープでその口を固く閉じています。

サンタは、トナカイの走る背中を、ぽんぽんと叩くと、それが合図のように、空から白い綿のような服を身に纏った、小指よりも小さい妖精がふわふわと現れました。

その小さな手で裾を掴み、まるで社交ダンスのように、丁寧にサンタクロースにお辞儀をすると、空から次々と同じ妖精が降りてきました。

人にはそれが、ただ降っているだけの雪にしか見えていないことでしょう。

夜はまさに、ホワイトクリスマス。

美しい雪が降り積もる今宵も、サンタはどこかの空に駆っていることでしょう。





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