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『三体』感想記②

圧縮ロフトです。この記事は『三体』感想記①の続きで、同じく一巻の感想を記述していっています。



この感想記②では敵側の文明、三体人の視点で書かれた章について書いていきたいと思いますが、
その章の主役格である三体文明の宇宙電波監視員1379号の心理も非常に良く描かれています。


三体人はその居住している惑星の特徴から肉体は非常に頑堅で、環境も過酷である事から詩や音楽など豊かさから生まれるような文化を持っておらず、精神性は冷徹です。

しかし地球人と似た思考プロセスを持っているように作中では描かれており、王や科学者など社会層も存在し三体社会の下層民である監視員1379号の心の叫びも痛いほど刺さってきます。

特に文潔が紅岸基地で過ごした日々と監視員1379号の視点は対比構造になっており、
ここに仕掛けられた作中人物では分からない、読者にしか読み解けないメッセージに気付いた時に私は戦慄しました。

超すごい読書家とかSFに詳しい人でないと分からないようなイジワルな構成ではなく、
順当に読んでいけば分かる構成になっているので、未読の方はぜひここは意識して見てみて下さい。



また上記のように三体人の人間的な心理表現も見るべきポイントの一つだと私は考えていまして、
というのも三体人は地球より遥かに進んだ科学力も持った情を理解しない冷酷な侵略者、ではないのです。


監視員1379号の視点で進む章の話もそうですが、
三体人自体自分達の産まれた星を捨てて住みよい環境の星系を探す止むにやまれぬ事情がありますし、
三体文明の科学を大きく発展させる時には人間(三体人)を何千時間も
機械そのもののように振る舞う事を強要したり
智子(ソフォン)というスーパーコンピューターを作る時は
失敗したら三体星そのものが消滅してもおかしくない実験をしたりして
めちゃくちゃな綱渡りをやっています。

そしてちょっとだけネタバレになってしまうかもしれませんが、
三体星は地球との距離と星間航行技術の関係でやってくるのに450年かかります。
三体人もこれがまさに危惧するところで、「いかに地球でも、450年もあったらその間に三体を追い抜くくらいの科学発展してもおかしくないだろ」と作中で言っています。



そう、彼らは勝ち確ではないのです。


まだ一巻しか読んでいない身ではありますが、ここは非常にエンタメを感じるおもしろい所だと思います。
三体宇宙艦隊は地球太陽系に向かってすでに発進してはいるのですが、その艦隊も450年後勝てるとは限りません。地球もピンチですが三体もピンチなのです。

『三体』を読んでてとにかくおもしろい!と感じる所は作中人物は全て地球人も三体人も「やるしかねぇ!!」という状況に追い込まれがちな所で、
その判断までの心理プロセスもきっちり描かれているため不快感もまるでなく、非常に読みやすいです。
(ここは翻訳家の方のスゴさもあるとは思いますが)



また今さっき読みやすいと言ったものの、SF知識や科学知識を求められる部分がそこかしこにあって、
こればかりは読みづらい!分かんない!となる人がいるのもやむを得ないと思います。

文潔が紅岸基地でやってる研究の天文関連の知識や、
汪淼の飛刃(フライング·ブレード)に関するナノマテリアルの辺りは
巷にある文系でも分かる科学知識の本とか、まとめ記事で科学関係の記事を斜め読みしてるくらいで充分だと思いますが、
「なんかこの世って11次元まであるらしいよ」みたいな話を聞いた事がなかったら、智子(ソフォン)を開発しているシーンが何やってるのか分かんないんじゃないでしょうか。
(いや、まぁ 私も聞いた事があっても何やってるのか分かってないんですが。)


そんな訳で難しい内容だが非常におもしろい!といえる一作ですので
万人にオススメできる難易度ではないですが、
「ほう、これが映像化もされている今世界で最もホットなSFかい?」
みたいな感じで興味がある人は手をつけてみてもいいんじゃないでしょうか。


私もなるべく早く『三体』二巻上下を読んでまた感想を投稿してみたいと思います!それでは今回はこの辺で。


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