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『三体』感想記①


SF小説『三体』一巻の感想です。


こんにちは、SF素人の圧縮ロフトです。

私としてはSFというもの自体は好きなんですが、じゃあ今まで読んだ中でおもしろかったSFは?と聞かれるとパッと何かのタイトルが出てくるタイプではありません
そんな私がアニメや漫画のフワッとしたSFの知識で『三体』に挑戦してみようという試み。
そんな訳で一巻を読破したので早速感想いってみようと思います!




私はエンタメを消費する時に新鮮な感動を得たいので事前情報をなるべく入れずに読み始めるんですが、
広告とか本の帯とかこれは意図的なものなんでしょうか?本屋さんの書籍を紹介してる一角や本自体を手に取って眺めてみても『三体』がどういう話なのかまずもって全く分かりません。

ここを読んでいる人が『三体』を読むかどうするか判断するための参考にしているのか分からないですが、
なるべく強めのネタバレはなしにしてざっくりと一巻を読んで得た概要をお話しますと
現代を舞台にした地球と異星文明とのファーストコンタクトを描いた作品である、という事です。


このタイトルにある三体、という言葉も主に異星側の文明の特徴を指して
作中の地球人が「三体文明」、「三体人」など
相手を刺す時に使う言葉です。


このテーマ自体はSFでは何度も触れられているそうで、
私もすごい小さい子供の頃そういったテーマの洋画や原作小説を持った映像作品なんかあったような気がします。

ただ『三体』は科学的考察を交えた異星文明の発見やコンタクトを取るまでの登場人物の背景や心理状態の詳細さが異様で、
例えば文革の影響で政治的立場を失い人間文明に絶望した科学者、
葉文潔(イエ・ウェンジェ/よう ぶんけつ)が
地球より遥かに進んだ科学力と高潔さを備えると思しき三体星文明に
自分達の問題を自分達で解決できない愚かな地球文明をあなた達の力で正してくれ、とメッセージを発し、
かつ地球の正確な宇宙座標を強大な電波増幅を用いて宇宙に発信し、三体側に教えてしまうシーンがあります。


これにより三体文明は地球を目指してくる事になる訳なのですが、
著名な科学者が言っていたのかSF作家が言っていたのかちょっと覚えていませんが、
侵略的で非常に進んだ星間航行技術を持つ宇宙人がすでに存在している可能性を考えたら地球(または未熟な宇宙技術しか持たない文明)が
自分達の星の場所を教えるような交信メッセージを宇宙に飛ばすのは良くないのだそうです。


これを登場人物の文潔がやってしまう訳なのですが、上記のようにこれは狂気の沙汰であると言えます。


誇張抜きで人類滅亡の引鉄です。

ですが人物の立場やそうするしかなくなるようまで押し潰された文潔の人生をまるで追体験するかのように詳細に描き出されているため
その狂気の選択が非常に腑に落ちるのです。

他にもナノマテリアル応用研究の科学者・汪淼(ワン・ミャオ/おう びょう)や
地球側の三体文明信望者達を追跡する攻性組織の一員で軍事経験と優れた閃きを持つ警官・史強(シー・チアン/しきょう)など
一巻において主役級の人物達がいますが、どれもその社会的立場において持ちうるであろう知識や経験、
それに基づく行動理念や心理は詳細に描かれてまったく違和感を覚えるところがありません。

人によってはこのために文章が長い、と感じるかもしれませんが、これはとても丁寧で読みやすい文芸と思える所です。


(長いのでいったん分割します。感想記②へ続く)

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