モナ

 君は、僕の前から姿を消した。季節外れの雪は、まるで僕らの未来を表しているようだ。あの時、僕は君に何を伝えられたのだろう。ホームに佇む君は、あどけない笑顔で手を振ったんだ。わかっていたよ、君はあの時、もう僕の前から消えることを決めていたんだね。

 僕の脳裏に焼き付いているのは、透き通るような肌、右頬のほくろ、肩まで伸びた黒髪、それから、君の震えるような瞳だ。

 ねぇモナ。僕らは許されるのかな。小さな幸せで十分だと、そう思っていたのに、僕もまた、汚い大人になっていくのだろうか。君が乗った電車は、どこへ向かうの?僕とは違う場所へ向かっているのかな。

 朝焼けのように、僕の心に残るのは、君と過ごした日々だ。僕たちの戦いは、ここで終わりではない。繋いだ手を離したその日から、もう決めたことだから。もし、また君に会える日が来たら、その時には、一緒に笑おう。涙はもう、十分だから。

 ねぇ、モナ。君がいなくなってから、僕の心には大きな穴が空いているよ。何をしていても、どうやっても、あの日のように笑うことは出来ない。二人で犯した罪を、僕はどこかで証のように思っているんだ。君もそうであってほしい。そう思うのは僕のエゴだね。

 ねぇ、モナ。あの時、僕が引き留めていたら、また違った未来があったのかな。僕の隣で笑うあの時の君と、僕は小さな幸せを手に入れられたのかな。

 ねぇ、モナ。

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