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noteのお題やコンテスト応募用等で書いた作品集。色んな物語がつまっています。
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2022年4月の記事一覧

桃色の夕焼け

 父が死んだ。あっという間だった。覚悟はしていた。がんが見つかった時にはもう手遅れで、ど…

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コインランドリーみたいな恋

ゴーォ、だろうかグォンだろうか。 深夜のコインランドリーは、機械音だけが静かに響いていた…

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揺さぶる

君はどういうつもりなのだろう。僕の気持ちを知りながら、もて遊ぶように笑うのは、君の常套手…

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ホットミルクの距離感

午後8時、いつも通り息子の颯太の帰りが遅い。武藤彩夏は、こんな大事な日なのに、きっとあの…

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レプリカは要らない

「面白いクリエーターがいる」 秋山が、いつにも増して興奮していた。 「新しい風が吹くかも知…

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消えてなくなれ

偽りで生きている。 誰もがそうであり、そんなことは当たり前だと、いつからか笑い方を忘れて…

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血の実を食べ

 午前3時。その時は、突然だった。 「逃げろ!」  走り出した時には、もうこの世界から消えたことにするしか生きる道はないと覚悟を決めた。ネオン街は、孤独を隠すにはもってこいの場所だ。マモルはうまく逃げ切れただろうか。鼓動が速いのは、駆け出して体が悲鳴を上げたからではない。緊張で手が震え、俺は座り込み、笑うしかなかった。 「まずいことになった」  マモルからそう聞かされたのは、1ヶ月前だ。 「俺らの動きが、上層部にバレている」  仲介に入った江口が死んだことで、上層部は、犯人

供述調書(クラスメイトA)

市営住宅というのは、どうにも住みにくく、ご近所の目というものを、小さいながらに気にして育…

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こころ、手、ヘルパー

 空を見上げると、大きな白い粒が、春田三奈の頬に一つ、また一つと降り注いでくる。白い雪は…

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作文「ぼくのすきなもの」

ぼくのすきなもの       1ねん2くみ 浅岡 陸   ぼくのすきなものは、3つある。 1…

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三途の川食堂

「いらっしゃい。空いてる席にお座りください」  僕は、会釈して、窓際の席を選んだ。店内に…

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届かないラブレター

元気にしているか。寂しくないか。 いざ、手紙を書こうとして、何を伝えればいいか、父さんは…

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見えないもの

ーあなたには、私が見えるのですか。 はい、見えます。あなたは、誰ですか。 ー落ち着いてく…

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寒い朝の戯言

 一人分の朝食を準備して、録りためたドラマを一気見する。私の休日は、いつもこんな感じだ。カレンダーを見れば、もう時期、誕生日がくる。歳を取ることがこんなにも虚しいものなんて、小さい頃には想像もしなかった。  自分の人生は、自分で選択してきたつもりだ。人のせいにするつもりもなければ、後悔もない。ただ、少しだけこんな毎日がいつまで続くのだろうかと、そう思う時がある。  就職、結婚、子育て。色んな選択肢のなかで、私は独身を選んだ。選んだつもりでいるだけだろうと、揶揄する人たちと