花の名は
ちいさなころから草花が好きで、はじめて見る花に出会うとその名前を知りたくてしょうがない気持ちになります。花は容姿もさることながら、名前も味わい深いものが多いからでしょう。でも、時には「なんでこの名前?」と疑問に思うこともあり、なんとなく複雑な気持ちになったりもします。
まずはこれ。夏に山や道端で見るこの花。
雌しべと雄しべのフォルムがなんともいえません。つぼみの形、それがうっすらと色づいているところも素敵です。ちなみに、この花はとても甘い官能的な香りがします。まるで熟女が通り過ぎたかのような。特に夕暮れ時から、その香りが一層濃厚になるように感じられます。
この花の名前は「クサギ」というのですが、漢字で書くと「臭木」。
え?いい匂いですよ、でもあれを臭い、と思う人もいるのか、スメルハラスメントなんて言葉もあるしなあ、と名前を知ったときは思ったのですが、どうやら葉をちぎると悪臭がするらしいです。(怖くて私は試したことがありません。)だから、臭木。うーん、でも、他にいい名前はなかったんですかね。
ちなみにこの臭木、冬にはこのような実がなります。
赤い部分は「がく」で青い部分が実、なのですが、こちらも美しいです。この青い実は染料になる、と聞いたことがあります。淡いやさしい青に染まるそうです。
花も実も完璧なのに、この名前。ちょっと残念な気がしますね。
そして、もうひとつ。可憐な春の花。
この写真ではよく見えないのですが、つる性の植物で、しなやかな容姿です。秋にはオレンジ色の実がつき、こちらもなかなか乙なもの。
でも、この花の名前。ヘクソカズラ、というんですね。
漢字で書くと屁糞蔓。
……。
やめてあげてー、と思いましたね。これも、茎や葉を揉むとクサい匂いがするそうですが、そんなダブルで責めてこなくても……。調べてみると、万葉集や俳句、ことわざにもこのヘクソカズラは登場する、とのこと。私もいつか詩に書いてみたい、と思ったり思わなかったり。(言葉の響きが強烈すぎて、苦心しそうです。)さらに、この植物、薬や化粧水として用いられる、というではありませんか。なんてハイスペックなデキる植物なのでしょう。
まあ、名前にこだわっているのは私だけで、当の本人たちはきっとそんなことはどうでもよいのでしょう。どんな名前で呼ばれようとたくましく、相応しい季節に芽を出して花を咲かせ、実をつけて、朽ちてゆく。そんなところも、私が草花に惹かれる理由のひとつなのかもしれません。
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