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消えたベイブレードと少年の日の思い出

私のレオーネは何処に行ったのか、思い出してモヤモヤしている。

小学生頃、我々の間ではベイブレードが流行っていた。いや、もはや社会現象と言っても良いだろう。公園へ遊びに行くと、誰か1人はベイブレード用のスタジアムを必ず持ってきている。
それくらい我々の遊びに根差し、日常へ深く溶け込んでいたのだ。

かく言う私は「レオーネ」というベイブレードを特に気に入っており、限定モデルも所持していた。それは親が誕生日に買ってくれた、私の大切な宝物だった。

ベイブレードが入ったケースをチャリのカゴに入れて放課後の公園に行くと、そこには山野(仮名)という男とその友人数名がいた。彼はネグレクトを受けていた子供で、父親と苗字が頻繁に変わっていた。そんな家庭環境が影響してかは不明だが虚言癖があり、対人関係の問題が絶えないヤツだった。

レア物を持っている優越感からか、私は彼らに“お気に入り”を自慢した。「誕生日に親が買ってくれた」と。山野は人一倍食い付いていた。その後はベイブレードで一通り遊び、かくれんぼをしてから家路についた。

帰ってケースを確認すると、レオーネが消えている。翌日の学校で彼らを問い詰めるも、揃って「わからない」と答える。終いに山野は逆上して私の胸ぐらを掴んできた。「俺を犯罪者扱いするのか!」彼の焦りに満ちた表情と荒げた声は、今も私の記憶に強く残っている。

私は悔しかったし、彼を疑っていた。
そして、彼の非を証明できない事が何よりも悔しかった。

下校後、母にその話をした。

「付き合う友達は考えなさい。」

返ってきた言葉、それはため息混じりの一言だけだった。

嗚呼、少年の日の思い出。
私のレオーネは何処へ。

↑消えたカウンターレオーネ

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