婚活

「本を読んでみたらどうですか?」

とあるカフェ、婚活で出会った女性に僕はそんなアドバイスをした。

「転職するよりもリスクは低いですし、考え方が広がりますよ」

「なるほど確かにそうですね。ちょっとその考えはなかったかも」

「そのほうが良いですよ、やっぱりこの歳で転職は勇気いりますし」


満足気にアドバイスをしたのもつかの間、僕は本来の目的に気づく。

しまった、今日の目的を完全に忘れていた。

会ってから2時間以上が経過していたものの趣味や好きな食べ物の話、恋愛の話を全然できていない。もはや場の空気が婚活ではないことに気づく。

お互い40代で同い歳ではあるものの、ふたりとも今日の目的を完全に忘れていたとは。話の流れを遮って、将来の家庭像なんてできる間ではもはやなかった。

その分、お互い恋愛対象ではない、と踏んだのかもしれない。


人間とは不思議なもので、会った瞬間にこの人とは波長が合う/合わないがはっきりする。それは呼吸だったり声のトーンや早さ、外観から来る雰囲気や歩く速度などさまざまではあるが、第六感的な何かがしっくり来たり、そのまた逆にしっくりこなかったりすることがある。今回はしっくり来なかった方だ。僕自身がそう感じていることなのかもしれないが、これは相手にも伝わっているのかもしれない。

そんな無意識な違和感が”仕事の話”へと自然とシフトしてしまったかもしれない。この人との”次”はないな、そう感じた僕だった。

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