イベントを運営するということ
先日、「Scientia Meetup in 山口 2024 春」、通称 #山口でゼミ3 を開催した。全国から大学生が山口県に集まり、数学・物理・化学・生物・地学・情報のそれぞれの分野に分かれて、特定のテーマで自主ゼミを行う合宿イベントである。
一昨年から毎年開催しており、今回で3回目。僕は全3回すべてにおいて、運営代表を務めさせていただいた。
中学時代の後輩と見よう見まねで始まった合宿運営であり、拙いところは多々ありつつも、毎回のフィードバックで課題とその改善点を把握しながら、どうやらこうやら第3回目を無事に終えることができた。
ありがたいことに、運営のスムーズさを賞賛するフィードバックやツイートを毎回いただいている。
そのおかげもあり、2024年3月現在、Scientia Meetupは合宿イベントだけにとどまらず、オンラインの場でも定期的に活動するべく、団体を立ち上げ、絶賛会員を募集中である。
(興味のある人は、こちらの募集要項をご覧ください)
この記事では、今回の #山口でゼミ3 を運営するにあたって、心がけたことなど、運営のノウハウを共有してみようと思う。もちろん、完璧ではないし、まだまだ未熟な部分もたくさんあるので、小サンプルの経験談と思って読んでくれると嬉しい。
(この記事中では、#山口でゼミ 専門用語みたいなものがいくつか出てきます。シャッフル報告会、ナイトLTなど、、、何を指しているか分からなくても読み進められるようにはなっていますが、気になる人は、第2回目終了時に書いたこの記事とかホームページとか公式Xとかをご覧ください。)
最も大事だと思っていること
曲がりなりにも運営をやってきて、「運営観」なるものを言語化できるようになってきた:
無駄なもの(無駄な動きや無駄な時間)がなくなるようにすること
動くのに必要な情報は、記憶しやすい形ですべて開示しておくこと
1つ目がスケジュールの組み立て方や参加者の移動の設計に関する指針、2つ目が指示の出し方に関する指針である。
「これは失敗したな」という反省はこのどちらかができていないことが多いし、「これはうまくいったな」と成功したときは大抵このどちらも徹底できている。
それぞれの指針について、今回の #山口でゼミ3 の具体的な例を取り上げながら説明してみようと思う。
1. 無駄なものがなくなるようにすること
「参加者が無駄だと感じる時間や動きは徹底的になくすこと。運営の準備はそのためにある」
例1. 集金の反省と改善
#山口でゼミ では、現金で参加費を集めている。研修施設に到着し、開会式・オリエンテーションを終えると、集金時間がやってくる。
#山口でゼミ2 では、各班の班長(以下、庶務と呼ぶ)に封筒を渡して、班員分の現金をその封筒に入れて提出してもらう流れを踏んだ。しかし、その際、班番号と集金金額の対応がパッと把握できる状況ではなく(班によって人数が異なった)、正しく集金できているかの確認に時間を要してしまった。
お金の管理は慎重にしたいところなので、ここでかなりのタイムロス、というか、ばたばた。。。終了後に書いた「運営指揮のメモ」には、その課題を記しておいた。
その反省を生かして、#山口でゼミ3 では、事前に封筒に班番号と集金金額を書いておくことにした。そうすることで、班長としても自分の班の集金金額を確かめるという無駄な計算をせずにすむ。
さらに、運営が金額を再確認するときにも、封筒に書かれた合計金額と中に入っている金額が一致しているかを確認するだけで良く、非常にスムーズな集金が可能となった。
例2. 退室時点検表の配付・回収
会場となる研修施設の宿泊施設は、退室時「退室時点検表」なるものを提出することを求めている。そこで、退室の前夜、「退室時点検表」を1部屋に1つ配付する必要があった。
退室の前夜は、ナイトLT partBを開催しており、研修施設2部屋のどちらかに全員が集合している状態だった。この状態で点検表を行き渡らせたい。
案1. 前から回す。
これはダメだ。なぜなら、2人で1部屋を使用しているため、「同室の2人のうち、どちらが受け取るか」という意思疎通ができていないと、正しく配付することができない。なので、この案は棄却。(今思えば、意思疎通させておくために、部屋ごとに部屋の代表を決めておいてもらっても良かったかもしれない。)
案2. 部屋番号を読み上げて、取りに来てもらう。
これもダメだ。研修施設2部屋に分散している以上、片方ずつ部屋番号読み上げを行う必要があるし、ここでも「どちらが受け取るか」でややごたつくだろうし、何より取りにくる間、他の人たちは暇すぎる。こういう無駄な時間をなくすのが、運営の力の見せ所だ。
というわけで、最終的に「解散後に、ロビーまで部屋の代表1名に取りに来てもらう」ことにした。
そうすると、解散した後、2人で話し合ってどちらが取りに行くか決めることができるし、参加者にとっては一瞬の仕事で待ち時間などない。(待ち時間をなくすために、取りにくる時間にも幅をもたせた)
もちろん、必ず全部屋に取りに来てもらう必要があるが、これは後述する「指示の出し方」をなるべく工夫した。
さらに、次の日の朝、点検表の回収をする際にも同じ方法をとった。#山口でゼミ2 では、一旦庶務が班員全員の点検表を回収してから運営に持ってきてもらうようにしていたが、必ずしも班ごとに部屋が割り振られているわけでもないし、遅れた人を庶務が待つことになり、ゼミの指揮を取る人がいなくなってしまう。そのため、直接、運営に提出するようにすることで、かなり円滑に回収することができた。
例3. シャッフル報告会と掃除の順番
合宿最終日の日程は、当初、「自主ゼミ → シャッフル報告会 → 掃除」であった。その際、
自主ゼミ:各班ごとに分かれて実施し、研修室3部屋を使用
シャッフル報告会:班をばらばらにした違う班に分かれて実施し、研修室2部屋を使用
掃除:研修室3部屋をすべて掃除するため、自主ゼミで使った部屋で担当を割り振り
という形であった。
ただ、これだと無駄な動きが多くなってしまう。元々、班ごとに分かれて自主ゼミをしているのに、一旦、班ばらばらで部屋を移動してもらった後で、また元の班・部屋に戻って掃除をしなければならない。
さらに、大人数が一斉に動くとなると、多少時間がかかる。
そのため、この無駄な動きと無駄な時間をなくすために、当初の予定を変更して、「自主ゼミ → 掃除 → シャッフル報告会」という流れとした。
こうすることで、副産物として、シャッフル報告会中に使わない研修室1部屋の施錠をすることもできた。
まとめ ー確認用チェックボックス
割と些細なことが多いように見えるが、この積み重ねで、運営を含め全員の時間を削減でき、全員の快適さを向上させることができる(と信じている)。
次回の自分のためにも、チェックボックスの形で整理しておこう。
□ 参加者の待ち時間を削ることはできないか?
□ 参加者の移動回数を減らすことはできないか?
□ 運営の作業と参加者の作業を同時進行にすることはできないか?
2. 動くのに必要な情報は、記憶しやすい形ですべて開示しておくこと
「参加者が「今が何の時間かわかる」「何をいつまでにすればいいのかがわかる」を把握できているようにすること」
例1. オリエンテーションのスライド
#山口でゼミ3 最初のプログラムが、参加者に諸注意などを伝えるオリエンテーションである。代表挨拶、運営・庶務紹介、3日間の流れ、諸注意と続き、その場で参加者にやってほしいことを伝えるフェーズに入る。
すべて簡易的にスライドを作成し、それを提示しながらの説明とした。
今からやることについて、参加者には手を止めて聞いてもらい、その後、まとめて説明したことを実行してもらう。
今からやることが複数あるときは、どうしても話を聞きながらやりたくなってしまうが、そこは制止して、ちゃんとすべて話を聞いてから動いてもらうようにしないと、かなりごたつく。
また、今からやることは一覧性が高いスライドにし、それさえ見れば、実行できるようにした。(この工夫で、前のスライドに戻ったりする手間が省けた。)
こういうスライドという名の外部メモリを活用するのも、参加者に漏れなく実行してもらうための一つの手法だと思う。
例2. ナイトLT, シャッフル報告会の配置図の連絡
ナイトLT, シャッフル報告会という、班をばらばらにして交流するイベントの際にも、参加者が動くのに必要な情報はすべて開示するモットーを心がけた。
具体的には、各部屋で写真のような座席表を設定し、それを事前に参加者への連絡ツールであるDiscordで周知しておいた。
#山口でゼミ2 では、こうした座席表を作らずに、前のホワイトボードでに乱雑に記入しただけであり、質問が来たり、やや混乱を招いたりした。
情報をすべて伝えるという原則の大きな利点は「質問が来なくなる」ことにあると思っている。すべて情報が伝わっていれば、運営に質問をしなくても次の行動に移ることができる。それによってスムーズに行動が行われるため、運営は情報が伝わりきらなかった人へのフォローやトラブル対応に専念することができる。
また、テキストメッセージにて情報を残しておくというのも「質問が来なくなる」ための一つの手段だ。耳だけで聞いた情報は、聞き間違えた人がいた場合に、どっちが正しい情報か参加者の間で混乱が生じる場合がある。その時に運営からの一次ソースとして、文章にして残っていることが重要となる。
例3. 退室前夜のお願い
原則1の例2でも書いたように、退室前夜は退室時点検表の配付・回収の指示を伝える必要があった。さらに、それ以外にも次の日の朝にやるべきことが多く、ここの指示がすべて漏れなく伝えることには他以上に気を使った。
具体的には、
情報を整理して伝え
テキストメッセージとしても残し
大事なことは繰り返し言う
ことを心がけた。
まず事前にDiscordで次のような投稿を行った。
そのうえで、参加者に、この情報を伝えた。その際、今から何をして、明日の朝何をするのかが明確になるような伝え方をし、漏れなく伝わるように繰り返した。
また、連絡事項が一通り終わった後にも再度、「なので、今からは〇〇をして、明日の朝やること3つをお忘れなきようよろしくお願いします」と念押しまでした。
情報をいくつかのチャンクに分けたり、何個あるのかだけは必ず覚えてもらうようにして、Discordに戻ればいつでも思い出せるようにした。
そのおかげもあり、参加者全員が全ての行動を忘れることなく実行してくれた。(もちろん、参加者が真面目に話を聞こうとする姿勢にも毎度毎度助けられています。)
まとめ ー確認用チェックボックス
伝え方は難しい。僕もまだまだ喋り慣れているとは言えない部分が目立つし、何より伝え方のフィードバックがなされることがあまりない。
ただ、少なくとも参加者の目線に立って、「今が何の時間かわかる」「何をいつまでにすればいいのかがわかる」のが大事だと思っている。さらに、やることが多いときは、「何かをやればいいことは記憶している」かつ「どこを見れば、やることがわかるのかがわかる」ことも必要だ。
この項でも同様に、チェックボックスの形で整理しておこう。
□ 参加者は、今の時間にやるべきことを把握しているか?
□ 参加者は、次にやるべきことを把握しているか?
□ 参加者は、どこを見ればやるべきことが書いてあるか把握しているか?
終わりに ー最近考えていることを添えて
この記事は、決して自分たちの運営の出来を褒め称えようという趣旨のものではない。
むしろ目的はもっと外向きである。
Scientia Meetupは、より大きな団体として成長し、運営メンバーも徐々に募集していくつもりである。長く持続する組織にするためには、特定の運営のワンマンではなく、組織編成の変更に対してロバストである必要がある。運営が変わるたびに一からイベントを作り上げるのではなく、過去のイベントの成功は容易に達成できるベースラインとなるように、過去のノウハウを言語化して伝える必要がある。
そうした引き継ぎを丁寧に行い、次にバトンをつなげることができるか。
次の僕ら運営の真価は、こういった視点で問われているんじゃないかと最近、よく思うようになってきた。その第1歩としてのこの記事である。
そして、さらに、欲を言えば、イベント運営を考えている今後の団体たちにとって、ロールモデルとなる存在になりたい。Scientia Meetupはそういった思想も背景に、立ち上げた団体である。
これらの目的のためにも、まだ #山口でゼミ3 の記憶が鮮明なうちに、運営代表としての心がけを書き起こしておきたかったのである。
もちろん、この言語化が、イベント運営に携わる方の助けになれば、それはそれでとても嬉しいことだし、「ここは違うんじゃないか」と批評してもらえれば、それはそれで改善の可能性が増えて嬉しい。(これきっかけでScientia Meetupのことに興味を持ってくれる人がいたら、それもそれで非常に嬉しい)
そういう意味で、たくさんの方に読んで欲しい。
少しでも良いなと思った人は、スキだったり、SNSの共有をしてくれると幸せです。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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