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絆は消えない #創作大賞感想

#創作大賞感想  として、初めて記事を書きます。
心を揺さぶられた作品への思いを文字で残し、もっと多くの人に読んで頂きたいと思ったからです。

今回感想を書かせていただくのは、
コッシ―さんの【ばあちゃんと僕と金ちゃんヌードル】。

既に多くのコメントがついています。
お読みになった方も多いでしょう。
もし未読でしたら、まずはご一読ください。

下記、エッセイの内容に触れます。
今一度、未読の方はまず作品をお読みになってください。



お顔をくしゃくしゃにして笑う、コッシ―さんの優しいおばあちゃん。おばあちゃんは、幼き日のコッシ―さんが学校から帰ると、大好物の金ちゃんヌードルを食べさせてくれました。

金ちゃんヌードルを切らしてしまっていた時、コッシ―さんが苛立ちをぶつけると、悲しそうな顔をしたおばあちゃん。その出来事があってから、おばあちゃんは、金ちゃんヌードルを切らさないよう、ストックし続けます。

食べたいときにはいつでも、金ちゃんヌードルを食べさせてくれたおばあちゃん。おばあちゃんは、きっと、コッシ―さんが美味しそうに金ちゃんヌードルを食べる姿を見ながら、お顔をくしゃくしゃにして笑っていらっしゃったのでしょう。

ストックを切らして苛立ちをぶつけられてしまった時に、「我慢しなさい!」と怒ることもできたはずです。それをしなかったおばあちゃんは、コッシ―さんががっかりしている姿を見ることが辛くて、コッシ―さんが可愛くて仕方がなかったのでしょう。

月日は流れ、コッシ―さんは、大人になっていきます。
おじいちゃんを亡くしてから、おばあちゃんの認知症が、進んでいきます。

コッシ―さんが社会人になって間もなく、おばあちゃんは、コッシ―さんを思い出せなくなってしまいます。

「ばあちゃんは僕のことなんて忘れてしまったんだ。ばあちゃんにとって僕はもう赤の他人なんだ」

エッセイ本文より引用

変わっていくおばあちゃんを見る辛さに耐えかねたコッシ―さん。
おばあちゃんがいる施設への足が遠のきます。

そして、別れの時は突然やってきました。
声をかけても、返答はありませんでした。

おばあちゃんが天国に召され、悲しみに暮れるコッシ―さんが目にしたものは。

段ボール箱いっぱいの、金ちゃんヌードルでした。

おばあちゃんは、施設に入所してからも、金ちゃんヌードルを欠かさずストックし続けていたのです。

おばあちゃんは、コッシ―さんを忘れてなんかいませんでした。
また、いつでも金ちゃんヌードルを食べに来てもらえるように、準備をしていたのです。

学校から帰ってきて、お腹を空かせたコッシ―さんが、目をきらきらさせて、金ちゃんヌードルをおねだりに来るのを、ずっと待っていらっしゃったのかもしません。


ここで、少し私の話を。
中学生の頃、祖母とよく、百人一首かるたをして遊んでいました。
祖母は、次第に私を忘れ、日常生活を送れなくなりました。
祖母に対し複雑な思いでいた私の足は、施設から遠のきました。

そして私は、祖母と言葉を交わせないまま、別れを迎えました。

祖母は、何もかもを忘れたわけではありませんでした。
祖母が暗唱していた一首です。
『天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ』

かるたを持って、施設に遊びに行けばよかった。
謝りたくても、悔やんでも、もう祖母はいません。

あれから金ちゃんヌードルを食べる度にばあちゃんのことを思い出す。優しいばあちゃんはきっと僕のことを怒ったりはしないだろう。「気にせんでええよ」とくしゃくしゃの顔で笑ってくれると思う。

エッセイ本文からの引用

私も、そう思います。
おばあちゃんのくしゃくしゃの笑顔が見えるようです。

コッシ―さんのエッセイを泣きながら読み終わった後、コッシ―さんが読者に伝えたかったことは何か、私なりに考えました。

私がこのエッセイから読み取ったメッセージは。

認知症は、その人のすべてを壊すわけではないこと。
大切な人は、いつか必ずいなくなってしまうこと。
だから、大切な人を大切にすることから、逃げないでほしいこと。
絆は、たとえ見えなくても、消えないこと。

読み手のそれぞれが、自分の記憶とこのエッセイを重ねるでしょう。

コッシ―さん。
大切なことを教えてくださって、ありがとうございました。



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