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【鹿児島県】総合診療医・室原誉伶先生が語る離島医療との関わり方〜医者の肩書きを外した個人として〜◆Vol.3 #file8

こんにちは!離島医療人物図鑑のすずきはるえです!

今回の第3弾記事では室原先生が考える離島医療、そして日本の医療の未来などについてご紹介します。

こちらの記事は

【鹿児島県】総合診療医・室原誉伶先生が語る離島医療との関わり方~医者の肩書きを外した個人として~◆Vol.2 #file8

の続きとなります。ぜひVol.2をご覧になってからこちらの記事をお読みください。

離島は日本の未来図

---- 日本の未来をどうしていくかを考えるうえで、少子高齢化が進んでる島での離島医療は日本の未来のシミュレーションという意味ですごく大事そうですね。
これまでお話いただいた以外にやっていきたいことはあるのでしょうか?

「すみません、全然そこまで考えてないですね(笑)
医療をやっていても、結局この人たちの生活を守るためには医療じゃ収まりきらなくなってくるんですよね。

診療所で医者をやってるだけだったら、この人たちの生活を守れない、支えられないと思ってきて。

それで介護も必要だなとすごく感じたので、介護の領域に足を踏み出した感じです。

 あとは、こういう離島が今後の日本の行く先の未来図だったりするじゃないですか。Drコト―がいた30年前のことを聞くと、今のへき地医療で理想とされているようなもの ー例えば、多職種連携を取りましょう、とかー がもう出来てたんですよ。

 30年前、この地域の高齢化率は30%で、今の日本と同じくらいだったんです。

30年くらい前から、日本の未来の場所がここにあったんです。

そこではしっかり地域連携をとっていて、各地区にある民生委員と診療所の看護師・医者がちゃんと連携を取って、この人は見周り行った方がいいとか、そういう話をちゃんとしていたらしいです。

 でも今は、それから30年くらいたって高齢化率50%になって、そういうサービスが全部なくなってしまっているのですよね。

人がいなくなった問題とか、予算がなくなった問題とかがあるのだと思うんですけど、今の日本で理想としているへき地医療がもともとここで出来ていたのに、今度は未来ではなくなっています

だから、きっと今の日本でやってることも何もやらなかったら同じ未来が起こると思うんですよね。人口が減って行けば役場の市の財政とかは無くなっていくじゃないですか。

それでお金がなくて事業がなくなるのは普通にあり得るのかなと思って。そこを行政が手を引いたからそこで終わるのではなくて、御用聞きみたいなちゃんとビジネスとして回すシステムを作っておけば続くだろうし。そういうことも思ってます。」


手作りのチラシ

---- 医療機関に行かずに普通に住んでいる人に対しての支援がなかなか行き届いていないという現状はやっぱりありますよね。そういったことが、離島とか小さいコミュニティでは挑戦がしやすいのかなと思って聴いていました。自分もいつかそういうのに携わってみたいと思っているんですけど…

「もう来年にでも来てください! お願いします(笑)
医療も看護も介護も目的は一緒じゃないですか。

最後はその人の生活を支援するというところに持っていかれるはずだから。生活を支えたいと思ったら何でもありだなと思います。どんな形でも支えられればそれでいいんだなと。」

---- 子育て支援の面では、都心はコミュニティが形成されづらいから、情報が取れていないお母さんなどが置いてけぼりにされたりするけれど、首都圏よりもコミュニティが形成されやすい離島での取り組みから学べることがありそうですね。

「本当に、仰る通りですよね。地域包括がなかなか上手くいかないという話があるじゃないですか。この1番の原因は、医者のコミュニケーション力不足だなとずっと思ってるんですよ。なんでこの医者こんな偉そうに喋るんだって思いません?(笑) 何なの、チーム医療でしょうって。
 
 チーム医療で医者は脇役で良いわけで、例えば看護師さんとかがトップに立ってくれるのが一番いいなと個人的には思ったりしています。同じ環境の離島でも、この医者は地域連携を良くする、この医者は地域連携を良くしない、と分かれてくるんですよね。まともに聞いてくれないとか、高飛車な医者だったら、色々な職種との話しやすさにも影響して向こうが話す気になれないじゃないですか。

 だから、今は昔からの流れでどうしても医者が上になりがちだけど、別の人がリーダーになったらもっとうまくいくだろうなとか、医者がトップになりがちなのだったら医者がコーディネーターとして皆を上手くまとめて後押しするような感じでやれば、地域連携はもっと進むのかなと思います。
 これから医者になる方、お願いします(笑)」

町の終活

---- 最近医学部でも他職種連携の授業が始まったのですが、あまり重要視してないというか、テキトーにやろうという人が多くて…。日本は人口が減っていく中で多職種連携の知識が必要になってきて、そういうのが出来る人が重宝されると思っているので、自分はちゃんと勉強したいと思いました。

「日本全国で人口が減っていくじゃないですか。人がいなくなる地域があるのは100%確実です。だから、僕が今いる地域がそうならないとは言い切れません。

僕よりも過去の偉人、もっと力のある人、権力ある人達が、若い人を集めたいっていう気持ちを持って、町おこしをやってきたけれど、それでも人口は減ってしまっているのだなと思うので。

 僕はもしここがそうなるとなったときに、最後にこの町を上手に閉じれるような形も作ったほうがいいな、準備をしておいた方が良いなと思います。

ここだけじゃなく日本全国色々な所で。よく人生の終活っていうけど、町の終活みたいなのもあったほうがいいんだろうなというのを、なんとなくここにきて思っています。

僕の中でも全然どうすればいいか答えはまだ出てないですけど、今後必要になるだろうなと考えながらここで過ごしてますね。」

---- 今後は何年くらいお休みして、また復帰されるイメージは出来ているのでしょうか?

「家族を養うために医者には戻ります(笑)
だけど、どういう感じで生きて行くのが、自分の人生がどうなったら楽しくなるのかはまだ分かりません。収入を上げることが人生の幸福度を高める訳ではないじゃないですか。

だから、自分の人生の幸福度を高めるための生き方がどういう生き方になっていくのかというのは、新しいことを始めた中でまだ自分でも見えていません。

どういう形で働くのがいいという結論は、また1年後の自分がどう思うか次第だなと思うので、だから考えていないです(笑) 今はまだ考えないようにしよう、悩まないようにしようって。」

---- いずれにせよ、パワーアップして戻ってこられそうですね!またその頃にお話を聞けたらいいかなと思います。



編集者よりコメント
私自身は臨床検査技師という職種についていますが、将来的には他の医療職や介護分野と連携したりできたらと考えています。ただ、最近は地域包括ケアとか、保健と医療と福祉の連携とか、色々と言われていますが、なかなか自分の専門の領域に留まってしまって、そこから他の分野へ手を伸ばすだけになってしまっています。室原先生のようにそういった分野の狭間に自らわざわざ、医者という職業から飛び出していく勇気は素晴らしいと思いました。


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この記事を書いた人

すずきはるえ
東京都出身。現在は臨床検査技師として長野県の病院で働きながら社会人大学院生として奮闘中。
臨床検査技師は医師や看護師と比べて、将来的に機械やAIにとって変わられる職業と言われている中で、これからの臨床検査技師の役割を模索している。将来の夢は職種や地域間の間をつなぐことができる医療人になること。

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