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北海道旅行記: 6日目 (稚内→札幌)

7月13日(水): 六日目のルート

宗谷丘陵と(いろいろな意味で)白い道

稚内の宿を6時30分に出発。まずは昨日訪れた宗谷岬の方に向かって出発です。なぜそちらに?といえばここには北海道北部の名所である「白い道」があるから。
昨日も通りかかりましたが、時間が遅めだったのと霧が出ていたので断念したのです。宗谷名産であるホタテの貝殻を敷き詰めた道は真っ白で、海の青と空の青のコントラストが重なれば、日本とは思えないような絶景を味わえると聞きます。宗谷岬をツーリングするならば一度は訪れたい名所です。
名所、なのですが......。

(霧で)白い道

まあ、そうですよね!
「ねえ、人はなぜ……同じ過ちを繰り返すのかしら?」と、脳内で妖艶な美女に設定した北海道が物憂げな眼で囁きかけます。おだまらっしゃい。

ここまでの旅で北海道さんのご機嫌は何となく読めてきました。白い道に白い霧。コントラストはありませんが、細かく砕かれた貝殻が敷き詰められた真っ白な道は、異世界感があってなかなか楽しかったです。
白い道を抜けて宗谷岬に下る辺りでは、やはり先が見えなくて怖かったですが。

白いよ怖いよ

ノシャップ岬のイルカさん

丘陵から麓に降りた時、視界が広くなりさすがにホッとしました。
Uターンして稚内を通過し、ノシャップ岬の方に向かいます。宗谷岬より少し南に位置するこの岬は、イルカのオブジェがシンボルです。遠くには赤と白のしましまの灯台がきれいに見えます。

ノシャップ岬のイルカさん
赤と白のしましま灯台。視認性よさそう。

夕陽の名所でもあるそうですが、時間の関係で見れなかったのが残念。昨日宿に入る前に、少し足を伸ばしてここまで来ていればよかったかも。
近くには日本最北の水族館である、「稚内市立ノシャップ寒流水族館」があります。小さな施設ながら、アザラシやペンギンなどの海洋生物がイキイキと飼育されているそうです。稚内周辺を観光するときの候補地としていかがでしょうか。

進めオロロンライン

ノシャップ岬を通過し、オロロンラインを辿って南に向かいます。
オロロンラインは天塩郡天塩町から石狩市まで続く国道231号、232号の愛称です。

海と原野と道。こんな感じの道がずっと続きます。

特徴的なその名前は、海ガラスの別名であるオロロン鳥に由来するとのこと。北海道北部の日本海側の海岸線をなぞるように延びる380kmのルートで、北海道でも1、2を争う名道として有名です。
海沿いの原野に引かれた荒削りでまっすぐな道をひたすら進んでいると、都会で生活していたら決して味わうことのできない、日本の原風景のようなものを感じることができました。

サロベツ原野

オロロンラインを途中で内陸側に曲がり、サロベツ湿原センターに向かいます。
サロベツ湿原は、世界的にも重要な湿地(ラムサール条約湿地)として認められている、日本最大の湿原です。
元々は海と繋がる大きな湖だったところ、枯れた植物が泥炭となって堆積し、長い年月を経て湿原になったとのこと。

中央に位置するサロベツ湿原センターは、周辺の自然を解説するネイチャーセンターになっており、そこを基点に全長1kmほどの木道が伸ばされていて、湿原の上を歩くことができます。
広大な湿原が地平線まで伸びているのが体感できます。

湿原名物・木道
地平線が見える

周辺はサロベツ原生花園とも呼ばれていて、その名のとおり湿原に咲く様々な花を楽しむことができます。原野に咲く花には、花屋に並ぶ花たちとは趣が異なる、逞しい美しさを感じます。

原生花園
小さな花
線香花火のよう
何かのつぼみでしょうか?
花の名前を覚えたい

湿原には成長段階があり、水面よりも高い位置に積み重なった状態は高層湿原と呼ばれるそうです。その成長速度は1年で約1mm。湿地の最深部は水深6mだそうですので、底から堆積された高層湿原には6000年の歴史があることになります。私がこの先50年生きたとしても、高さの変化は5cm程度。地球の歴史に比して、人間の一生のなんと短く、儚いことか。

湿原の成り立ち
木道の先

サロベツ原野は1970年から2003年にかけ、泥炭採掘の地としても利用されてきました。国立公園に指定されてからは、湿原の保護と再生が計られているようです。

サロベツ湿原センターでは、展示により当時行われていた採掘の様子も知ることができます。湿原の地盤はジュクジュクしていて極めて軟弱、重機などまともに入れないので採掘は「船」で行われていたようです。土に浮かぶ船、なんとも不思議な光景です。

浚渫(しゅんせつ)船
浚渫船の説明

切り出された泥炭は、水洗分離機によって処理され、製品の原料となる繊維質とそれ以外の素材に分離されます。

水洗分離機
水洗分離機の説明

開拓機から高度成長期を経て、資源がどのように利用されてきたか体感できるのも、このセンターの面白いところだと思います。

泥炭層の採掘により、サロベツ原野は縮小し続けていたようですが、自然保護の対象となった今では少しずつ再生されているとのこと。
産業振興と自然保護、折り合いをつけるのが非常に難しい問題ではありますが、どうかこの自然がこれからも守られるように願います。

オロロンラインから札幌へ

サロベツ原野をあとにして、オロロンラインを南下し札幌の方に向かいます。
海沿いの道を3kmにわたり、風車が一直線に並んでいる「オトンルイ風力発電所」。

オトンルイ風力発電所。とにかく大きいです。

写真で見るとスケール感が分かりにくいですが一本一本の風車は見上げるほど大きく、風車と風車の間隔も100mくらい離れています。
徒歩だとなかなか次の一本が近づかず、バイクで少し走ると次の一本が迫ってくる感じ。北海道はとにかく何でもスケールがでかいですね。

道の駅留萌で食べたニシンそば。北海道で初めて食べました。

ニシンそば。北海道でハマったものの一つです。

別に留萌名物という訳ではないですが、美味しいです。甘辛く煮られた柔らかいニシンが、濃いめのそばつゆとよく合います。
開拓期、大量に供給されていた身欠きニシンを美味しく食べるために編み出された調理法なのでしょうね。

留萌を越えて石狩に向かう増毛国道に入ると、オロロンラインもいよいよ終盤です。この辺りから、海岸の岸壁をくりぬいて道路にしたような場所が多く出てきます。

白銀の滝
岸壁の道は変化に富んで楽しいです

厳しい地形的制約の中で、必死に交通網を整えてきた人々の戦いの歴史を感じます。荒々しい地形、美しい海を眺めながら変化に富んだ道を進み、いよいよバイクは北海道随一の都市、札幌に到着します。

とにかくバイクに厳しい札幌

石狩を抜けて札幌に近づくといきなり都会!という感じが強くなります。
札幌は言わずと知れた大都会で、碁盤目状に整備された街路は、西○北○と座標で通りを示すことができるので、迷いにくくとても便利。
すごく近代的でシムシティ上級者が作った街という感じがしますが、よく考えたら京都の街も同じなんですよね。こうした街づくりを1000年前に実践していた京都の街はすごい。

札幌は路面電車が整備され、徒歩であればどこにいくにも行きやすい街のように感じました。

路面電車。ルックスがイケメン
乗り場も近代的です

ただ札幌はバイク乗りにはかなり厳しい印象です。バイクを停められる駐車場はほぼ街中になく、あちこち迷うことになりました。
一年のうち冬の期間、つまりバイクが走れない期間が長い北海道では、必然的にバイクよりも車の需要が高くなり、バイク用の設備の整備は後回しになってしまうようです。
土地に十分な余裕があれば普通に止められますが、札幌のように大都市となるとそれも難しいようで。バイクで札幌に来る方は、akippaやtimes-bなどの予約サイトを使い、なるべく事前に駐車場を確保しておいた方がいいと思います。

なんとか駐車場を確保し、宿に入ってのんびりしていると割りとあっさり時間は過ぎてしまいました。この日の宿は「GRIDS SAPPORO HOTEL&HOSTEL」というお宿。

例によってホステルですが、宿泊スペースがかなり広めにとられていて荷物の整理もしやすく、北海道旅行全体を通しても一・二を争うくらい快適なお宿でした。
商店街のど真ん中にある、利便性の高い立地でこれはすごいことです。次回旅行した時も、是非お世話になりたいと思います。

北海道の夜の街をさ迷い、路地裏のいい感じのスープカレーのお店「Algo」で夕食をとります。素揚げされたゴロゴロ野菜に、スパイシーでまろやかなスープカレーがよく合います。地元で愛される穴場的名店という感じ。
旅先でこういう店を見つけると、テンションが上がりますね。

路地裏のカレー屋さん、Algo
スパイシーでまろやか、野菜も美味しい

この日は宿に帰って日記をつけて終了。オロロンラインの雄大な道のりと潮騒の響きを、まぶたの裏に映しながら眠りにつきます。明日は支笏湖、洞爺湖を越え、港町函館に向かいます。いよいよ北海道旅行も後半戦に突入。今日も有意義な一日でした。


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