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北海道旅行記: 3日目 (帯広→網走)

7月10日(日): 三日目のルート


雨のナイタイ高原牧場

帯広での宿泊先であるHOTELNUPKAを出るとすでに雨模様でした。カッパを着用して出発。帯広から北上し、日本最大の牧場と名高いナイタイ高原牧場を目指します。
雨の早朝にも関わらず、交差点には警察官と思われる人がポツポツ立っていて、信号を守って停車すると会釈してきました。こんな天候、時間帯から交通を見守っている方々に、こちらこそ頭が下がる思いです。

ナイタイ高原牧場は総面積約1,700ha(東京ドーム358個分)、日本一の広さをほこる公共牧場です。緩やかな高原に地平線が見えるほどの放牧地が広がっていて、多くの牛や馬などが放牧されています。
観光に来る人も多いので、広大な牧場の真っ只中にしっかりと舗装された道路が通っており、その先には「ナイタイテラス」というカフェスペースが設置されていて、牧場の美味しいミルクを使ったソフトクリームやコーヒー、軽食などを楽しむことができます。
まさに絶景地として有名な場所で、晴れていれば大勢の人が押し掛ける、道央の観光名所のひとつです。そう、晴れていればね。

そう、晴れていればね……

実際のところは結構な雨で、景観は白い霧に塗りつぶされ非常に残念な感じでした。
「知り合ったばかりなのに、そう簡単に内面を明かしたりしないわ」と、脳内で妖艶な美女に設定された北海道が高笑いしています。お高くとまりおって。でもあとでちょっと雄大な景色を見せてくれたので優しい一面もあるようです。

帰り道にて。晴れていればさぞかし。
次は晴れたときに来たい。

ナイタイテラスではソフトクリームと暖かいカフェオレをいただきました。ミルク感たっぷりなのに後味はしつこくなく、まさに北海道の食べ物という感じがしました。テラスは大きなガラス窓があり雄大な牧場を眺めながら飲食できるようになっています。次は晴れてるときに是非来たいところ。

テラスから外を見ながらの白黒ソフト

ナイタイテラスを出るとき、少し先の高台にライダーたちが集まっているのが見え、こちらに手をふっていました。手をふりかえしたら遠目でも喜んでいるように見えました。ライダー同士のみで通じる、「心の交流」みたいなのは確かに存在します。

ヤエーとは心の所作

ここでライダーの挨拶である「ヤエー」について紹介します。
とはいえ何か特別なことをするのではなく、ライダーがすれ違うとき手をふったり会釈したりすること。
もとはアメリカで始まり、モトブログなどを通じて日本でも普及しました。ライダー同士で楽しい気持ちを共有したりできますが、個人的には「お互いの安全を祈る」気持ちで手をふっています。

ヤエー返答率は土地によって様々ですが、北海道ではほぼ100%でした。さすがライダー天国ですね。中央分離帯を挟んだ対向車線から手をふってくれる人もいました。
楽しいときは「楽しい!」気持ちを、しんどいときは「お互い頑張ろう」という気持ちを共有できる気がして、私は大体バイクに乗るときはヤエーするようにしています。
もちろん、相手の状況によっては答えてもらえないケースもありますが、凹んだり腹をたてたりしてはいけません。ヤエーとは心の所作。心が正しく形を成せば想いとなり、想いこそが実を結ぶのだ。

大雪山を越え

ナイタイ高原牧場をあとにし、道央の主峰である大雪山に向かいます。
雨と霧は相変わらずまとわりついて来ますが、糠平湖を抜けた辺りからまさに高原道という雰囲気が強くなり、走っていて楽しいです。
上士幌から大雪山の脇を通る国道273号線は大雪湖で国道39号線につきあたり、一方は旭川、一方は北見へと続いており、私は北見を経由して網走方向に向かいます。

ちなみにこの273号線、ガソリンスタンドがほんとに少ない区間です。帯広から北上する人は、上士幌の町中でガソリンを補給しておくのが無難です。私はこの時はENEOS 上士幌SSで補給しました。

広さの割にガソリンスタンドが少ないのが北海道の特徴と思います。土日休業のところも多いので、ガソリン補給を怠るといざというとき困ることがあります。ガソリンはこまめに補給しましょう。

大雪湖手前の三国峠展望台で休憩。こちらはカフェも併設されていて、コーヒーや軽食を楽しむことができます。展望台は24時間入れますが、カフェは9:00~17:00までの営業です。
私はコーヒーと、サラダにハチミツがついたトーストをいただきました。オリジナルブレンドのコーヒーは香り高く、厚めのパンにはちみつを塗ったトーストが疲れた体に染み入ります。

三国峠
霧まみれですが眺望はかなり良かったです。
トーストセット。かなり美味しい。

峠のカフェでは二人連れの老夫婦ライダーに出会いました。2人乗りでここまで上ってきたとのこと。
バイクでの2人乗りは体重移動などで息を合わせないといけないので、長時間の山道を登ってくるのは相当なコンビネーションが必要です。
お二人の信頼関係と、それを築いてきた歴史に思いを馳せるとともに、こういう信頼関係を自分も築きたい、と思いました。素敵なお二人でした。

ゴーゴー・トリトン

大雪湖で北見方面に分岐し、石北峠というこれもまた眺望のよい峠を抜け、おんねゆ温泉についたあたりでようやく雨も収まってきました。北海道は広いので、道東と道央では天気も違うようです。

大雪湖パノラマ
石北峠
石北峠のパノラマ

雨の心配がなくなったので、道の駅でカッパを脱いでようやく人心地つき、北海道の有名な回転寿司チェーンである「トリトン・夕陽ケ丘店」に向かいます。

トリトン 夕陽ケ丘店

トリトンは北海道では有名な回転寿司のお店で、ネタが大きく新鮮なのが特徴。北海道を走るなら一度は訪れるべし、とよくおすすめされるお店です。
回転寿司と侮るなかれ。チェーン展開で新鮮なネタをまとめて仕入れることができるので、店によっては回らない寿司よりよほど美味しかったりします。とくに新鮮な魚介が手に入りやすい土地ならなおさらです。

トリトンはかなり混むと聞きましたが、遅めの時間に入店したので、さほど時間を置かずに案内してもらえました。
ホタテ、ネギトロ軍艦、いくら、あぶりサーモンなどを注文。一口頬張ると大きくて新鮮なネタから旨味が口一杯に広がります。ネタが大きいのに大味な感じはなく、嫌な生臭みも全くありませんでした。
回転寿司にしてはお値段高めですが、寿司屋でランチを食べるよりコスパはいい感じです。トリトンは北海道各地にチェーン展開しているので、見かけたらまた行きたいと思います。

ネギトロ軍艦+ホタテ。うまい!
いくら軍艦。うまい!うまい!
あぶりサーモン。うまい!うまい!うまい!

民宿いもだんご村

北見まで着けば、網走まではあと一歩です。
網走湖やオホーツク海に面した道の駅を越え、今夜の宿である「民宿 いもだんご村」に到着しました。

網走の港。道の駅からクルーズ船に乗ることができます。

遠目からみると一軒家に見える不思議な雰囲気で、到着するとテラスで飲み会をしていた先客が手を振ってきます。チェックインをすると、雨の中走ってきたことを宿のおかみさんが気遣ってくれて、靴を乾かすための新聞紙をくれました。

いもだんご村・入口
いもだんご村・外観

宿と客、客と客の距離が適度に近いのがこの宿の魅力だと思います。
個室もいくつかありますが、基本的には2階部分の大部屋で各自布団を敷いて寝るスタイル。壁などはありませんが、となりの人の布団とはけっこう距離が空いているので人の気配はさほど気になりません。

共用のキッチンと冷蔵庫があり、宿のおかみさんもこのキッチンで食事を作ったりします。
宿泊施設というより、親戚のおばちゃんの家に泊まりに来たような雰囲気が唯一無二だと思います。客はリビングのテーブルや外のテラスで思い思いに食事や酒をとりながら、その日あったことを話したり情報交換したりします。
私は旅行にいくときは一人が好きなほうなのですが、ふと気づいたら交流を広めているような居心地のよさがこの宿にはありました。距離感の近さに最初は戸惑いましたが、次に網走に来るときはまた泊まりたいと思います。

「いもだんご村」という変わった名前は、この宿が一面のじゃが芋畑の中にあることに由来するそうです。
それもイモモチ(現地では「いもだんご」と呼ぶそう)を作る専用の芋であることからこの名にしたのだとか。家に帰っても片栗粉を見るたびこの宿のことを思い出します。今度イモモチを作ってみたいと思います。

一面の芋畑

人のいとなみ

宿に荷物を置いたら周囲を散策。じゃがいも畑の脇を通り海のほうに向かいます。この時期のジャガイモは白い小さな花をつけており、まるで一面の花畑のようです。

徒歩数分で海岸に出ると、オホーツク海の雄大な景色が眼前に広がります。宿から最寄りの駅は釧路と網走を結ぶ釧網本線の「鱒浦」という駅で、木造の小さな駅舎には木彫りの鱒が飾り付けられています。冬の厳しい季節でも、この駅舎を見るとホッと一息つけそうです。

オホーツク海
鱒浦駅

駅の周囲には高校生が二人座って楽しそうにおしゃべりしていました。Tシャツには「不老不死」と書かれていて、この年代特有の無敵感に溢れていました。
見知らぬ土地、それも北の果てを訪れてどことなく異国に来たような感覚がありましたが、ここにも子供たちがいて、暖かい人たちがいて、人のいとなみがある。当たり前のことではありますが、暖かい飲み物を口にしたように、どこかホッとしたのを覚えています。

宿に戻っておかみさんとお話し、翌日のルートを考えます。
翌日は屈斜路湖と摩周湖を回り、その後知床半島を回って網走に戻ってくるルートに決めました。
摩周湖では、さくらマスの遡上が見られる「さくらの滝」、摩周湖から地下で繋がっているという透明度の高い「神の子池」を巡り、裏摩周展望台に向かう予定です。

話が終わりふと表に出てみると、外は満月。仄かな明かりにボンヤリと浮かぶジャガイモ畑が幻想的でした。明日こそいい天気になるといい、と思いつつ就寝です。雨は辛かったですが、高原の道に人々との出会い、うまい料理があり、この日も楽しい旅でした。

月のいもだんご畑


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