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なかよしのおともだち

~まみちゃんとつかさくんシリーズ1~


そう遠くない昔に、 真実ちゃんという女の子と、 司君という男の子がいました。
二人は家がお隣同士の 幼馴染で、 生まれた時から 一緒に遊ぶ お友達です。
真実ちゃんは、 明るく天真爛漫で好奇心旺盛な、いつも笑っているような元気な四歳の女の子。
司くんは、活発で怖いもの知らずな、ちょっと騒がしい四歳の男の子です。

ある日、二人はお母さんに連れられて 近所の公園に遊びに来ていました。
真実ちゃんがお砂場でお団子を作って遊んでいると、司君がやってきて お団子を入れたお皿に お水をジャバジャバかけました。
「あー! 何するの、やめてよ!」
真実ちゃんが止めた時には、 お団子がすっかり溶けて、泥水になっていました。
それを見て、真実ちゃんはとても悲しくなります。
真実ちゃんは、司くんがお皿に並べていたお花を掴むと、ポイっと捨ててしまいました。
それを見て司くんは叫びます。
「あー! 何するんだよ真美ちゃん、ひどいよ!」
そういって司くんが怒ると、真実ちゃんも怒って言います。
「だって司くんが真美のおだんご壊したんだもん!」
「それは真実ちゃんにあげようと思ってたお花なのに」
司君は足を踏み鳴らして言いました。
真実ちゃんはびっくりしましたが、それでもまた 怒り出しました。
「真実悪くないもん! 司くんが悪いんだもん!」
そう言うと真実ちゃんは司くんを ぽかすかぽかすか殴ります。
それを見て真実ちゃんのお母さんと、司くんの お母さんが 走ってきました。

「こら真実何やってるの!」
お母さんが叱ると、真実ちゃんは「だって司くんが真実のお団子を 壊しちゃったんだもん」と 報告しました。
それを聞いて司くんのお母さんは、司くんに聞きました。
「何でそんなことしたの!?」
お母さんに叱られて 司君はしゅんとしながら言います。
「違うよ壊したんじゃなくて、おしるこにしようと思ったの」
「おしるこ?」
その言葉にそこにいたみんなは驚きます。
みんなに注目されて 気まずくなりながら 司くんは言います。
「真実ちゃんのお団子にお水を入れてあげたら おしるこになるんじゃないかと思ったんだ。だって真実ちゃん、こないだ おしるこ食べて 美味しい美味しいって言ってたから、おしるこ 作ってあげたかったんだ」
そしてしゅんと下を向きます。

その時、真実ちゃんのお母さんは、真実ちゃんの手の中に首の折れたお花がくっついてることに気がつきました。
「真美ちゃん、このお花はどうしたの?」
お母さんは真実ちゃんに聞きます。
「それは……」と、真実ちゃんは口ごもります。
本当のことを言ったら叱られると思ったからでした。

すると司くんが「それは真実ちゃんがぽいってしたの」と言いました。
「まあ、なんでそんなことするの?」
真実ちゃんのお母さんは、また真実ちゃんを叱りました。
「だって、司君が真実のお団子壊すから、真実も司くんのお花 ぽいってした」
真実ちゃんは言いにくそうにそう言って、告げ口をした司くんを睨みます。
「せっかく真実ちゃんにあげようと思ったお花だったのに」
司君も負けじと真実ちゃんを睨みます。

それを聞いたお母さん二人は、それぞれの子供を叱ります。

「やってあげたい気持ちは分かるし、喜んでもらいたかった気持ちも分かる。だけど、最初にお水を入れてもいいか聞いたら良かったんだよ」
司くんのお母さんは、そう言って司君の頭をポンと撫でました。
「真実も やられた事に怒るのは分かるし、暴れたい気持ちも分かる。だけど、 だからってそれをやっちゃいけない。 自分がやられて嫌で悲しかった事は、司くんだって嫌で悲しかったんだよ?」
真実ちゃんのお母さんは、そう言って真実ちゃんの頭をポンと撫でました。

二人はまだふてくされて、お互いを睨んでいます。
「はい! じゃ、両成敗という事でこの話はおしまい。ほら二人ともごめんなさいして」
言われて 司くんと真実ちゃんはごめんなさいと言いました。
だけど本当はそう思ってなくて、納得のいかない気持ちでお家に帰って行きました。

お家に帰った真実ちゃんは、しばらく一人で遊んでいました。
そこにお母さんが洗濯物の取り込みを終えて、休憩しようとソファ座りました。 
「ママ疲れちゃったから、少しお休みするね」
「うん、いいよ」
そして、ママが少し横になろうとした時に、トゥルルルと携帯電話が鳴りました。
お母さんは慌ててそれを 取りに行くと、そのままお話を始めます。
しばらくの間、それを見ていた真実ちゃんは、お母さんが疲れた時はコーヒーを飲むことを思い出しました。
真実ちゃんは一生懸命冷蔵庫の 扉を開けて、ペットボトルのコーヒーを取り出しました。
そしてコップに注ごうとした時にそれをこぼしてしまったのです。
買ったばかりのコーヒーのボトルは 真実ちゃんにとっては とてもとても重かったのです。
びっくりして固まる真実ちゃんですが、どうしていいかわかりません。
するとそこへ 電話を終えた お母さんがやってきました。
「何やってるの真美、なんでこんなことしたの!?」
聞かれた真実ちゃんは青い顔して言いました。
「ごめんなさい。ママにコーヒー入れてあげようと思って。そしたらこぼしちゃったの」
そう言うと、お母さんは優しく言います。
「そうだったの。それは嬉しいな。だけどこれは重いし、大変だから、一人の時はやらないでいいんだよ。ママが一緒にいる時に手伝ってって言ったらやってくれるかな?」
ママは、真実ちゃんの頭を撫でながら笑います。
真実ちゃんはうんとうなずくと、リビングに戻って反省しました。
片付けるからリビングの方に行っててちょうだいと言われたからです。

その時真実ちゃんは気づきました。
司くんも同じ気持ちだったんだ。
喜ぶと思ったからやったのに失敗ちゃって怒られて悲しかったんだ。
そう思った真実ちゃんは、いてもたってもいられずに そわそわし始めます。
どうしようどうしようどう、どうしたらいいかな?
真実ちゃんは分からなくなって お母さんに 説明しに行きます。
するとお母さんは じゃあ今から司くんに謝りに行こうかと言ってにっこり笑いました。
それを聞いて真実ちゃんも、大きく大きく頷きます。

真実ちゃんは自分の部屋から隠し持っていたラムネの袋を持ってきました。
ラムネは司くんの好物だから、喜んでくれると思ったのです。

心の準備をする暇もなく、あっという間に司くんのお家に着きました。
なんてったって、お隣ですからね。

「司くん、ごめんね」
顔を見るなり、真実ちゃんは大きな声で謝りました。
「うん良いよ。ボクこそごめんね」
司くんも真美ちゃんに謝ります。
そうしてお互い嬉しくなると、えへへと照れくさそうに笑いました。
「そうだ、司くんにねラムネ持ってきたんだ」
真実ちゃんはラムネの袋を司君に渡します。
「ありがとう。じゃあ、一緒に食べよう?」
「うん!」
司くんは、真実ちゃんの手を引いてお家の中へ入っていきます。

それを見て、二人のお母さんは嬉しそうに微笑んでいました。

おしまい。

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