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月の子ちゃん

大きな大きな空の下。
小さな小さな女の子がぽつんと一人ぽっちで空を見上げると。
大きな大きなしずくがぴちょん。女の子の頭に落っこちました。
雨は降っていないみたい。しずくは少しだけしょっぱいだけです。
女の子がしずくの跡を探していると、見つけました。しずくの正体。
お空の上にポッカリと浮かぶ、大きな大きな女の子。
女の子というとなんだか不思議。凸凹だらけの灰色な女の子。
その子がずぅぅぅとしずくをこぼしていたのです。
困ったなぁ、困ったなぁ、このまんまじゃ大雨かなぁ。
小さな女の子は灰色な女の子にちょっと聞きます。お空は真っ暗。
「どうしたの?」
シクシク、スンスン、シクシク、スンスン。灰色少女は答えません。
「どうしたの?」
シクシク、スンスン、シクシク、スンスン。
「どうして泣いているの?」
「……私は月の子。月の子ちゃん」
急に灰色少女は名前を言い出しました。まだまだお空は真っ黒です。
「月の子ちゃん?」
「月の子ちゃん。太陽がいないと輝けない、私は影の月の子ちゃん」
「それが嫌だから泣いているの?」
小さな女の子にはしずくがポタポタ、溢れかえって、もう女の子はびしょ濡れです。
「月の子は誰かの光がないと輝けない。それが悲しくて泣いてるの」
小さな女の子はずぶ濡れです。体もしょっぱくなっちゃいそう。
「あなたが泣いてるおかげで私の身体はびしょ濡れだし、私の身体は塩漬けになっちゃったじゃない」
「月の子、影にしかなれなくて、迷惑しかかけれないなんて」
しずくが大きくなりました。
「そのしずくを私にこぼしていくのはやめて。月の子ちゃんが泣いてたら、ただでさえ一人ぽっちしかいない夜がもっと悲しくなるのよ」
しずくは小さくなりました。
「月の子、でこぼこ、影のいらないこ?」
「あんたがいなくなったら太陽も消えちゃうのよ」
「それはどういうこと?」
「太陽はあんたを輝かすためだけに生きてるんだから、もしあんたがいなくなったら、太陽の存在価値はなくなるじゃない」
女の子は少し口が悪い時があります。心が口を動かすときがあります。
「それにあんたが太陽に照らされてくれてるお陰で、真っ暗な夜にあんたの光がみんなに届いてるの。あんたの光で夜に輝ける他人がいるのよ」
しずくは止まって、ただの水溜りになりました。
「月の子、誰かを照らしてる?」
女の子は言い放ちました。
「夜、一人ぼっちで空を見上げてたあたしを照らしてくれたよ」
月の子ちゃんはそのまますぅっと小さくなって、雲に隠れてしまいました。
女の子は少し寂しさが襲ってきた感じがして、そのままトボトボと、どこが目的地なのかわからないまま歩き始めました。
その女の子の周りだけ、不思議と柔らかい光に包まれていたことを、女の子は知りません。

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