パブリックコメントと超時空会議に参加する資格
こうして超時空体験図書館に住み込み始めた甘太郎の提案であらゆる世界の体験者全員に「本当の自由」を提供しよう!という提案について倫理的に問題を考えることができるありとあらゆる世界の意識たちを対象にパブリックコメントが募集された。
そのパブリックコメントは、超時空体たちによってテレパシー募集され、テレパシーで受信された。
その結果、無数の体験者たちが様々な価値観でそのパブリックコメントに返答した。
ある体験者は、
「本当の自由? そんなことより会社の成績が大事なんだよ。うるさいな」
などと応じ、
また別の体験者は、
「本当の自由をあらゆる体験者に提供するようにとは、私たちの宗教の聖典には書かれていませんし、教祖様もそんなものが必要だとおっしゃっていませんから、必要ないです」
などと応じ、
また、別の体験者は、
「本当の自由なんてものをみんなに提供したら、体験者たちを家畜や奴隷や操り人形やペットにできなくなるじゃない!そんなの絶対嫌だわ!」
などと応じ、
また別の体験者は、
「生物が生物に与えられた本能や欲望から自由になると生物たちが滅びてしまうと思います」
などと応じた。
他にも無数の返答があったが、その返答の多くが、不自由な世界の不自由な状態を前提にした返答であり、そもそも本当の自由の意味を正しく理解していないような返答がほとんどだった。
しかし、非常に少数ではあったが、ちゃんと「本当の自由」の意味を正しく理解し、その上であらゆる体験者に本当の自由を提供するためにはどうしたらいいかと真剣に考えて返答する者たちもいた。
彼らは、その理解力や知性レベルは様々ではあったが、少なくとも「あらゆる体験者の体験を自分の体験だと想定して問題解決を目指す意志」を持っていた。
超時空聖体たちは、そうしたパブリックコメント=彼らの意志をすべてその特殊能力で知り、ちゃんと「本当の自由」の意味を正しく理解でき、「本当の自由」をあらゆる体験車に提供する意志を持っている者たちだけを「超時空会議」に招待した。
そのように想定して考えることができない意識は、まずはそのように考えれるようにならなければ、世界管理について議論してもうまくいかないことが過去の超時空体験図書館の記録から明白だったからだ。
みんなが満足できる理想世界を実現するための議論をしているのに、自分だけの満足や一部の体験者だけの満足が実現すればそれでいいという価値観を持って議論されてもいつまでたっても目指す目標が実現する方向に進まないからだ。
目指す目標が違うのだから、そうなるのは当然だった。
「あらゆる体験者」に「本当の自由」を提供できる世界にしてゆこうという目標なのに、自分だけ「本当の自由」が得たいだとか、一部の特権権力者たちだけ本当の自由が得られればいいだとか、本当の自由が得られていないのだから、本当の自由が得られるまでは他の体験者たちにどんな酷いことをしてもいいはずだとか……
そんなどうしようもない目指すべき目標をそもそも目指していない者たちが話し合いにどれほど参加しても、いや参加すればするほどに目指すべき「あらゆる意識たちに本当の自由を提供しようという目標」が実現しなくなる方向に話が進んでしまうのだ。
だから、超時空聖体たちは、そのことを熟知していたために、ちゃんと良心的に、倫理的に、あらゆる体験者が心から満足し続けれる世界や状態を本気で自発的に実現しようと意志できている意識にしか、「超時空会議」への参加を認めなかった。
あくまであらゆる体験者の体験を自分自身の体験だと想定して最善の理想世界を実現させようと目指す意志を持った者だけがその「超時空会議」に招待された。
そのような理由で、超時空聖体たちは、その意志を持てない意識たちの願いや意見は一応は聞いても、話し合いには参加させなかった。
誰もが満足できる世界を目指しているのに、自分だけ満足できれば他の体験者たちはどうなってもいいと正々堂々を言ってくるような者たちは、世界を良いものにしてゆくための議論に参加する資格がそもそもないと判断された。
国会なる議論の場などが、不自由な世界には存在していたが、超時空聖体たちから見れば、その議員のほとんどが「あらゆる体験者が心から満足できる世界や状態を本気で実現しようと思っていなかった。
そんな者たちがいくら集まってあれこれと議論しても、あらゆる体験者たちにとって本当に良い政策や社会や世界が生まれる道理はなかったのだ。
そのような超時空聖体たちの理解から、「本当の自由」が提供される新世界を実現させるための話し合いは、あくまで「あらゆる体験者たちの体験を自分の体験だと本当に思える意識たち」だけでなされた。
みんなで話し合えば解決する……と甘太郎は思っていたが、超時空聖体はそこは譲らなかった。
なぜなら、超時空聖体たちは、根っからの確信犯の悪党たちに善意で話し合いを求めて、そのために殺されたり酷い目にあわされた魂たちを無数に見てきたからだ。そして自らもそうした酷い体験を何度も体験していたからだ。
自分勝手で自己中心的で排他的で残酷な……そんなわがままな魂たちの願いや提案や意見や文句や演説…をいくらたくさん聞いても、待っても待っても、そこから良い未来はいつまでたっても生まれないと超時空聖体たちは知っていた。
そして、そうしたわがままな意識たちは、多くの場合、そうした議論で得た知識を悪用して、狡い方法をその知性で考え続け……わがままな願望を無理やり何としてでも実現しようとする。
超時空聖体たちは、そのことをトラウマになるくらい、嫌というほど過去に体験して知っていたのだ。
そして、超時空体験図書館の箴言掲示板に、そのような内容が書き込まれた。
「いくら説得し注意しても悪行を止めない確信犯の悪党たちは信用してはならない」
不自由な世界に存在していた電子掲示板というものにも、そうした内容を含め、多くのアドバイスや注意や警告…が書かれていたが、なんと不自由な世界の支配者たちは、そうした電子掲示板を丸ごと全部自分勝手に消してしまったのだ。
つまり、そのような不自由な世界の支配者たちを超時空会議に参加させれば、当然、その能力を得たら、超時空体験図書館の箴言掲示板をも丸ごと消そうとすることが明白だった。
よって理想世界を実現するための話し合いには、不自由な世界の者たちは少なく、自由な世界の者たちが圧倒的多数となった。
なぜなら、不自由な世界の魂たちのほとんどがすでに不自由な世界の創造主や支配者たちによって、あらゆる体験者の体験が自分の体験だと想定して考える良心を捨てさせられ、不自由な世界の創造主や支配者に何でも無条件で従うように「されて」しまっていたからだ。
であれば、そんな者たちの提案や意見や願望をいくら聞いても、あらゆる体験者が素晴らしいと思える世界のビジョンは出てこない。
やれ、世界創造主だけが良ければそれでいいだの、やれ、神族だけ良ければそれでいいだの、やれ、悪魔族だけ良ければそれでいいだの、やれ、霊的存在族たちだけが良ければそれでいいだの、やれ、宇宙人族だけが良ければそれでいいだの、やれ人間族だけが良ければそれでいいだの、やれ自分の種族だけ良ければそれでいいだの、やれ、自分の国だけが良ければそれでいいだの、やれ、自分の宗教だけ良ければそれでいいだの、やれ、自分の会社だけ良ければそれでいいだの、やれ自分の家族だけ良ければそれでいいだの、やれ、自分だけ良ければそれでいいだの…………
そんなはじめから見当はずれの価値観を持っている者たちからの意見や願望や提案をいくら聞いても、そこから「あらゆる体験者にとって最高の世界のビジョンや政策」など生まれてこないのだ。
中にはテレパシー能力が高い者たちが、そうした超時空聖体たちの対応に、
「自分たちが世界管理の話し合いに参加する権利を否定するなど許せない!!!」
などと文句を言い始めたりもしたが、超時空聖体たちはそうした者たちに言った。
「あなたたちは、自分の意見や提案について自業自得の責任を取る覚悟はあるのですか? あると言うのならば、あなた方の意見や提案が実現した場合のあらゆる世界のあらゆる体験をあなたがたは、すべて自分で体験する義務が発生しますが、それでも意見や提案がしたいですか?」
このように言われた者たちの大半が、その知性でそれが自分たちにとって非常に危険であると理解してすごすごと文句を取り下げた。
しかし、不自由な世界群の支配者やその部下たちの中には、それでも意見や提案をする権利が自分たちにはあるのだと主張する者がそこそこいた。
そこで超時空聖体たちは、仕方なくそうした意識たちの意見や提案が実現した場合の仮想世界をその超能力で出現させ、彼らを彼らの望む世界に送り込んでいった。
自業自得学園とはどうやらそうした者たちのために生まれた教育的世界群の総称らしい。
彼らの中には、自分たちの特権や超能力をどうしてもそのまま保持し続けたい……それは当然の権利だ……などと主張する者たちも結構いた。
超時空聖体たちは、そんな特権や超能力は、いつか間違って使ってしまうから、もっと良心的に成熟しないと持つのは危ないから手放しなさいと何度も説得し注意したが、それでも頑なに譲らない者たちも多く、仕方なしにそうした魂たちに、自業自得の世界を提供した。
その結果、そうした者たちは、その特権や超能力を使うことで発生したあらゆる被害者たちの体験をすべて味わわなければならなくなった。
ある者は、その特権で多くの体験者から搾取した結果、長く長く自分が搾取される体験をしなければならなくなった。
ある者は、その特権で多くの体験者たちを故意に戦争や天災兵器などで殺しまくった結果、長く長く繰り返し自分が同じように殺される体験をしなければならなくなった。
ある者は、その特権で多くの体験者の魂を殺して、自分の操り人形にしてしまった結果、長く長く繰り返し自分が同じように魂を殺されて操り人形になる体験をしなければならなくなった。
多くの者を奴隷にした者は、自分が奴隷にされる体験をしなければならなくなったし、多くの者を実験動物のように扱った者たちは、自分が同じように実験動物にされる体験をしなければならなくなった。
つまり、世界の未来を決めるための話し合いに参加するためには、自分の提案や主張や意見に対して、そうした自業自得の責任を取らねばならないというルールがあったのだ。
それゆえに超時空聖体たちは、自業自得の責任について理解できない魂やその価値観が自業自得の責任が問われた場合、明らかに問題があることがわかりきっている魂たちには、慈悲と温情の心からこうした話し合いへの参加を許可しなかったのだ。
しかし、それでもどうしても意見したい、提案したいとそれでも食い下がってくる者たちには、仕方なしに実際に彼らの提案が実現した世界に発生するあらゆる体験が「すべて」味わえる世界にその魂を送った。
甘太郎が、「本当の自由」を提供すべきだと、両手を広げてそれに待ったをかけたのだが、どうしても食い下がって「あらゆる体験者に本当の自由を提供する」という甘太郎の提案を否定して文句を言い続ける者たちにおいては、「自業自得の体験を味わう自由」が提供された。
甘太郎の提案を、いくら説得しても頑なに否定し妨害する意志が明確な場合には、そうせざるを得ないと超時空聖体たちは判断した。
そうした措置を取らないと、そうした者たちは確信犯でわざと心にもない意見や提案をわざとあれこれと言って議論を長引かせて自分たちの特権を少しでも長く維持しよう……などという狡いことを計画的に実行しようと計画しているような者も多数いたからだ。
だからそうしたはじめから自分たちの特権維持のために甘太郎のみんなを助けたいという願いや提案を否定することが目的の確信犯の者たちにはさすがの超時空聖体たちも厳しかったのだ。
過去に何度もそうした悪知恵を使われて、世界が悪い方向に向かってしまった体験記録が既に多数記録されていたのだ。
不自由な世界の悪党たちの多くは、自分たちの知性を最大限に使って、そうした狡いことばかり考えるような性質にすで持ってしまっていたのだ。
超時空聖体たちは、それゆえに甘太郎の善意の提案をそうした方法で守っていた。
しかし、確信犯の悪党ではない誤解や理解不足の者たちには、ちゃんとその誤解や理解不足がなくなるように配慮された。
「あらゆる体験者の体験が自分の体験であるという想定で考えなさい」
と超時空聖体たちは、そうした確信犯ではない倫理的にまだ未熟な者たちに教えた。
「本当の自由なんかをあらゆる体験者に提供してしまったら、自分たちの特権がなくなってしまう……そんなのは嫌だ……」
不自由な世界群の特権保持者たちの多くはそのように思っていた。
超時空聖体たちは、そうした心を察知して心で対話をした。
「甘太郎さんの提案が実現すれば、あなたたちにも本当の自由、つまりは、あらゆる体験の強制からの絶対的な自由が提供されるのですよ。それなのにそれが嫌なんですか?」
不自由な世界の確信犯の悪党たちは、言う。
「そんな自由などくそくらえだ! 何が何でも我らがあらゆる体験者を自由に支配できなければ満足などできない。それにそんな自由が提供される保証などどこにもないではないか!」
などと……
超時空聖体の一体がそれに応じて言う。
「あなたたちが、そうやって本当の自由を皆に提供することを否定しているから提供できないのですよ。それを理解できていますか?」
「そんなことはないだろう! この前、ほら、ヤクザの親分みたいなのには、いいようにしてやっていたではないか!」
どこで知ったのか、そんなことを言う者もいる。
「それなら、あなたたちも、あのヤクザの親分、いいえ、今は本当の自由を皆に提供するための活動をしている魂となっていますけど、彼と同じようにその他の皆を支配しなきゃ気が済まない、満足できない……などという心や欲望をきれいさっぱり消してあげましょうか? そして良い心や欲望が生じるようにしてあげましょうか?そうされることを心から望みますか?」
「ん……? いや、それは困る……この欲望がきれいさっぱりなくなってしまったらもともこもないではないか!そんなのはもう自分ではない者になるようなものだ。そんなことは望まない!!!」
「そうですか……それじゃあ、仕方がないじゃないですか……まさかそんなことは望まないと本気で言われている方に望まないことをするわけにもいきませんし……私たちの善意の治療を拒否するのなら、普通に自業自得の体験をして皆が満足できる世界に必要な心を学習してもらうしかないということになりますけど、それでもいいですか?」
「ならんならん! いいわけないだろうが!」
「では、本当の自由が欲しくないんですか?」
「リスクが全くないのなら、もらえるものなら、もらってもいい」
「いいですか……本当の自由というのは、あらゆる本能、欲望、気分、感情、価値観、またありとあらゆるタイプの体験強制システムや装置……などからの完全なる自由な状態なんですよ。
つまり、今、あなたが持っている欲望や願望などからもいったん完全に自由になることができることが本当の自由なんです。
それをあなたは、本当の自由をリスクが全くないのならもらってもいい……などと言いますけど、あなたたちが他者を支配したいという欲望や願望から自由にならないと本当の自由が得られないということが理解できますか?
本当の自由を得て、まずは他者を支配したいと思わなくなってから、その自由な状態で自業自得の責任も理解した上で、冷静にそうした欲望を持ちたいかどうか、選ぶ方がいいのではないですか?」
「いやいや、他者を支配したいという願望や欲望が本当に完全に消えてしまったら、他者を支配できなくなるではないか!そんなのは絶対に嫌だ!!!」
「いいではないですか……何も無理やり他者を支配などしなくても、本当の自由が得られれば、いくらでも他に満足できる選択肢があるのですから……」
「どこにそんな選択肢がある? 他者を支配できなければ満足できないというのに……」
「いいですか? あなたが言っていたヤクザの親分は、世界平和に貢献することで満足しましたし、今は、あらゆる体験者が自分の意志で自分の体験を自由に選んで楽しめる世界を実現することに貢献することで満足しているのですよ。
つまり、欲望や願望が変化すれば、自動的に、別のことで満足できるようになるんですよ。
それを本当に自由な状態で、冷静に自由に選べるようになって何か問題がありますか?」
「そんなこと言われても、そんな話嘘かもしれないじゃないか!」
「それなら、一度本当の自由な状態を体験してみて試してみれば嘘かどうかわかりますよ」
「そんなことを言って騙して、治療と称して毒を盛るかもしれない!」
「あらまあ……もしかしてご自身がそうしたことを他の体験者たちにしているから、そんなことを恐れるんじゃないですか?」
「そ、そんなことは……」
「もしそうなら、自業自得学園に送られたら、同じような毒を盛られることになりますけど、いいんですか?」
「そ、それは困る」
「あらまあ、自白されてしまいましたね……であれば、そんなこと止めるべきでしょう?」
「しかし、したいのだ……」
「したければ、何をしてもいいんですか? わたしたちが、そうしたくなれば、あなたを永遠に続く拷問強制世界に投げ込んでもいいのですか?」
「それはよくない」
「よくないのなら、改めましょう」
「改めたくない」
「じゃあ、自業自得学園行きになってしまいますよ」
「それも嫌だ」
「いいかげんにしなさい! それが嫌なら嫌がる者に酷い体験を強制する行為を止めなさい! 現在実行中の酷い行為も止めないで、本当の自由を得るための善意の治療すら拒否するというのでは、もう自業自得の責任をちゃんと取っていただくしかもう仕方ありません!」
このような感じの心と心でのテレパシー対話が延々と続いた結果、どうしても悪い行いを改めないで、超時空聖体たちからの善意の治療も断固拒否するような者たちだけは、自業自得学園に強制入学させられることになった。