超時空赤ちゃんが休眠してしまった!

超時空赤ちゃんが誕生した結果、その中にいる体験者たちはとにかくあらゆることが自由に選択できるようになった。

食欲も、性欲も、睡眠欲も、その他の気分も、感情も、価値観も、種族も、性別も、住む家も、住む星も、住む世界も、住む次元も……

付き合う相手も、自分の才能も、スタイルも、顔も、体重も、記憶も、時代も、ありとあらゆる食べ物や飲み物を楽しむ体験も……

感動も、情緒も、読む本や漫画も、見る映画やドラマも、聞く音楽も、あらゆる過去の体験も……

空を飛ぶ体験も、異世界で遊ぶ体験も、その他のいわゆるダメ絶対体験のすべても……

それらの体験を楽しめる耐性さえあれば、どんな体験でも自由に選択できるようになった。

理想世界の設計図を取り込んだ超時空赤ちゃんは、あっという間に成長して体験者たちにありとあらゆる体験を自由に選び楽しめるようにした。
耐性がなくて楽しめない体験をうっかりと選んでしまった場合は、ちゃんと注意や警告までしてくれた。
とにかく心からありとあらゆる体験を楽しめるようにするために至れり尽くせりの配慮がなされた。

「あー、こうなればいいなあ……と具体的に空想できる体験は、すべてスタンドアロンのプライベート世界で体験できるようになった」

空想できることは、その超時空世界では即体験できることとなった。

また、そのそれぞれが独自に空想した空想世界を体験者たちは望めば自由に交換しあって楽しむことができるようになっていた。

自分だけで楽しむこともでき、公開して分かち合うこともできた。

望みが合致すれば互いのキャラ(性格や価値観や嗜好性など)をコピーしあうことすらできた。

そうしてそのコピー体の中には体験者がいないので成長はしないしコピー体が本当に苦しんだり喜んだりすることはないが、その時点での性格や立ち振る舞いがそっくりコピーできたのだ。

精巧なお人形みたいなものだが、普通のお人形と違ってリアルのキャラと同じように振る舞い、さらに精神的な交流で発生する恋愛体験や愛し合う体験などの体験もちゃんと再現されるようになっていた。

その結果、体験者同士の交流から発生するありとあらゆる体験が、誰もが本当にスタンドアロンで自由自在に楽しめるようになってしまった。

それはいわゆる良い感じの体験だけでなく、文字通りどんな体験でも、それこそ世界征服して王様になる体験などでも、そうした人形キャラたちを使ってリアル体験と同じように楽しめるようになった。

すると、不自由な世界の利己的な支配者たちは、こんな世界なら無理して他の体験者を完全支配などする意味も価値もないじゃないか……などと言って、自分自身のプライベート世界に引きこもってお好きな体験をコピーキャラたちを使って楽しむようになった。当然、そこには自分以外の体験者がいないので、自業自得の責任は一切発生しなかった。
魂のお勉強という仕組みも完全に消滅していた。他の体験者の体験の自治権を否定しないで心から楽しめれば何でもいいとされた。

不自由な支配者たちの一体は、「まじか! こんなやりたい放題して一切おとがめなしなのか! これは、すげーな、おい!」などと感動していた。
とうとう今まで求めていた感謝される体験なども自由に得られることがわかり、逆にその世界の創造者たちに深く感謝しはじめた。

今まで、自分たちは何をやってきたのだろうか……と唖然としている支配者たちもいた。

「俺たちが完全にアプローチを間違っていたわ……もっと早くこうした世界が実現できることを教えてくれればよかったのに……」などと悔やんでいる。

「我々は、なんて時間の無駄をしてきたんだろう……」などとがっくりしている者もいた。

「世界の完全支配なんかより、ぜんぜんこっちの方がいいじゃないか……」などと目からうろこという感じになっている魂もいた。

そう願い、意志するだけで、本当にどんな体験も自由に体験できてしまうのだ。そう思うのも無理はない。

恋愛体験も、戦争体験も、王様体験も、スポーツ大会で優勝する体験も、勇者や英雄として皆からちやほやされ感謝される体験も、さらには、漫画や小説に出てくるありとあらゆる空想上の体験も、異世界で冒険する体験も、なんでもござれなのだ。

そう願えば、あらゆる漫画や映画に出てくる主人公や脇役や悪党やモブキャラなどにも自由に変身することができた。

しかもそれがそれぞれのキャラ特有の感受性で体験できてしまうのだ。

さらにさらに、その感受性をいろいろ交換してみたり、変更してみたり、レベルを変えてみたり…などもできてしまう。

甘いお菓子があるとすれば、その甘いという体験の程度や情緒を無数の体験者たちの感受性を自由に選んで自由に変えたりもできるというわけだ。

感動という体験ひとつとっても、無数の体験者たちはその感動の程度が違うのだが、それを各体験者が感じたのとそっくり同じように感動できてしまう。

同じ音楽を聴いても、体験者によって感動する度合いや感動の感覚が違うので、同じ音楽を聴いても感受性や感動の質をいろいろといろんなキャラクターの感受性に交換すると無限に近い多種多様な感動や味わいが体験できてしまう。

そんな感じだから当然、もはやマンネリ体験に飽きてしまう……みたいなことがなくなってしまった。

あらゆる体験者たちが無限にいろいろな体験を楽しみ続けれる状態がそんな感じで実現していた。

そして楽しめる体験は、体験者たちの想像力によって次から次へと新しく生成され、その生成された体験をまた他の体験者たちが自由に選び楽しめるようになっていた。

さらに、物質世界の肉体のような不自由な拷問体験強制装置のようなものではなく、もっと自由にしかももっと素晴らしい体験が本当に自由自在に味わえる優秀な体験装置というか肉体や種族やキャラやシステム……が次々と新しく生成されてゆく……

そうなっていったのはその世界にいる体験者たちが、心からそうした世界を愛し、さらにより良い状態にしてゆこうと意志し続けていたからだ。

ただ無理して歯を食いしばって意志するのではなく、そうすることを心から楽しんでいたからだ。楽しくなければ続かないということをその頃には皆理解していた。

そしてその努力?はその超時空世界では当然、確実に実を結んだ。

なぜならそのような世界の進化を妨害しようとする意志がまったく存在していなかったからだ。

こうして、ムゲンや天使族や悪魔族や宇宙人族や神族や自業自得学園の生徒たちやその超時空世界に飲み込まれた世界の魂たちは、そうした体験自由自在のミラクル世界を体験できるようになった。

しかし、そこに予想外のハプニングが発生した。

悪魔族のアックンが、自業自得学園に備え付けられていた「時を巻き戻すボタン」を押してしまったのだ。

アックンは以前も、自業自得検証システムの「脱獄ボタン」をわざと破壊してしまっていた奴だったので警戒しておくべきだったのだ。時間調節装置のレバーを折ったのもアックンだった……

超時空赤ちゃんは、その結果、突如休眠してしまった。

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