「体験の牢獄」と「魔法の問い」と「お宝の意志」

不自由な世界のボスは、体験者たちを「体験の牢獄」にそれぞれ閉じ込めていた。

その不自由な世界では、あたかも多くの体験者が一つの現実世界を生きているように見せかけてはいたが、実際は、各々の体験者は各種の固有の体験が強制される「体験の牢獄」に囚われていた。

超時空城からは、その真実がはっきりと見えていた。

だが、その不自由な世界にいる体験者のほとんどすべてがその真実に気づいていなかったか、多少は気づいていてもその全体については気づいていなかった。

つまり、みんな大なり小なり騙されていた。

ある体験者は、まったくそのことを理解していなかった。
いわゆる動物と呼ばれる種族のほとんどが、植え付けられた生存本能や遠隔体験強制システムによって操られていたが、自分たちがそのような状態に置かれているという自覚などこれっぽっちも持っていなかった。

ただ生存本能に従って右往左往し、互いに傷つけあったり殺しあって食べあったりさせられていた。

その体験強制システムに抗おうとしても、苦痛やストレスが生じるので抗えなくされていた。

知性と理性を持つ人間族もまた、多少はそうしたことを理解できるものもいたが、そうした体験強制システムに完全に自力で抗える者は、ほとんどいなかった。

また霊的存在たちのほとんどもまた、より地位の高い霊的存在たちに体験の自治権を奪われていた。

つまりその不自由な世界の住人たちのほとんどすべてが、「体験の牢獄」に囚われていた。

そしていろいろな体験牢獄には他の体験者の体験の自治権をはく奪できる装置が各種取り付けられていた。

なんとか理性でそうした装置を使わない選択ができるものも少数いたが、ほとんどの体験者たちはそうした装置を使ってしまっていた。使わされていた。

その装置を起動すれば、自分の望む体験が得られるようにされていたためだ。

牙、爪、腕力、毒、権力、武器、想念の矢、経済力、知力、その他の能力、超能力……

そうしたものが体験者たちの体験の自治権を守るためでなく、奪うために、より使われていた。

不意自由な世界のボスの多くが、その意志で他の体験者たちの体験の自治権を奪おうと意志していた。

それが不自由な世界を不自由な世界にしていた主な理由だった。

なんともひどい仕組みを創造したものだ……とムゲンは思った。

不自由な世界群のボスたちはそうしたことをし続けてきていたのだ。

「体験の自治権を奪う体験の牢獄」そこに囚われてしまうと、よっぽど強い意志がなければ、自力では脱出できなくなっていた。

ただ例外もあり、「自分が体験の牢獄に囚われているのだ」と明確に気づいた体験者だけは、運が良ければその牢獄から自由になるチャンスがあった。

自分が牢獄に入れられていると気づかないままであれば、自力でその牢獄から出ることができない。

ある体験者は、自分は魂たちを牢獄に入れる立場なのだから、囚人などではないと思い込んでいた。

自分にはこれほどの権力があり、これほどの財力があり、これほどの能力があり、武力があり、知識があり、部下があり、安全な基地があるのだから、このままでいいのだと思っていた。

しかし、彼らは自分たちが「自分自身の体験を自分の意志だけで自由に選べるようになっていない」ということに気づかなかった。

つまり「自分の体験を自治すること」ができていないのに、そのままでいいのだと思ってしまっていた。

とにかく自分以外の体験者の体験や運命や自由を完全に支配し操作できれば、自分たちが安全になると思ってしまっていた。

そうした他の体験者たちを完全支配できるという状態もまた無数に生み出された「体験の牢獄」の一つに過ぎないということに気づかなかったのだ。

さらに「体験の牢獄」は一つの牢獄を出たとしても、また別の牢獄が存在し、さらにその牢獄を出れたとしても、さらにより大きな牢獄が存在しているという風だった。

体験者たちは、家族という牢獄、学校という牢獄、会社という牢獄、宗教という牢獄、社会という牢獄、常識という牢獄、肉体という牢獄、種族という牢獄、霊体という牢獄、霊的世界という牢獄、地獄や天国という牢獄、惑星という牢獄、宇宙という牢獄、本能や欲望という牢獄、相互依存の牢獄、ピラミッドシステムという牢獄……などの多数の牢獄に多重に同時に入れられていたのだ。

それぞれの牢獄には、それぞれの種類の拷問システムや麻薬依存システムや錯誤システム……などが供えられていた。

不自由な世界の体験者たちが、その牢獄のひとつひとつのシステムを完全に調べることは簡単なことではなかった。

しかし、あらゆる牢獄を見つけるための「魔法の問い」があった。

それは、

★「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分のあらゆる体験を自由に選ぶことができているかどうか?」

という問いだった。

それができていないのであれば、いずれかの体験者が何かしらの体験の牢獄に囚われているということがわかるのだ。

牢獄は次々と新しいタイプが作り出されていたが、この「魔法の問い」を使えば、ありとあらゆる体験の牢獄を発見することができた。

だから不自由な世界を誰にとっても自由な世界にしようと思うならば、少なくともあらゆる体験の牢獄をこの「魔法の問い」を使って発見しておく必要があった。
体験の牢獄を体験の牢獄だと認知できなければ、それを改めることもできないからだ。

ムゲンは、超時空城から不自由な世界調べて、この「魔法の問い」を使って体験の牢獄を次々と発見していった。

そして気づいた。

「なんだ…かの不自由な世界のボスたちも、体験の牢獄にはいっちゃってるじゃないか」

ということに……

つまり、ほぼ全員が「体験の牢獄」に囚われていたのだ。その世界の創造主も、支配者たちも、ボスも部下も被支配者たちも……

他の体験者たちを囚えているつもりが、自分たちもまた囚われていたのだ。

体験牢獄の種類は数多い。無数にあるといってもいい。

しかし、

★「体験者たちが自分で自分の体験を自由に選べるかどうか?」

という問いをすればすぐに牢獄の存在に気づくことができる。

不自由な世界から体験牢獄を完全になくすためには、つまりは、この問いをあらゆる場面でしてゆけばいいということになる。

ムゲンはこれはなかなか便利だなと思う。

しかし、不自由な世界群にいる体験者たちの中には、牢獄が完全になくなれば、世界も肉体も社会も全部なくなってしまう……という心配をしているものたちがいた。
しかし、それは彼らが自分がそうしたものの一部だと思い込んでいるからだった。

自分が肉体だと完全に思い込んでいれば、当然、肉体と一緒にその自分は滅びる。
自分が何かの宗教の信者だと完全に思い込んでいたら、その宗教がなくなればその自分は滅びる。
自分が宇宙人だと完全に思い込んでいたら、宇宙が滅びればその自分は滅びる。

滅びない自分を選ぶ自由があるということに気づけば、滅びない自分になることができる。

★「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選べて楽しみ続けれる世界、状態を目指す意志」

「あらゆる体験者、および、この意志を自分だと決定すればいい」のだと全知ちゃんは教えてくれた。

この意志は、あらゆる世界を体験選択自由自在の楽園にできる意志だからだそうだ。

であれば、どこに生まれようとも、どんな体験者になろうとも、自分の体験を自由に選び楽しめるようになるらしい。

だから、この意志を、

「お宝の意志」

と呼んでいるそうだ。

ムゲンは、不自由な世界のボスとその部下たちと、その被支配者たちに、「お宝の意志」をプレゼントに贈ることに決めた。

不自由な世界のボスたちは、気象兵器などを使ってムゲンの分身体にそれとなく脅しをかけていたが、なんと「お宝の意志」というプレゼントを贈られてしまった。

★「お宝の意志」=「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選べて楽しみ続けれる世界、状態を目指す意志」

が不自由な世界の体験者たちに贈られた。

超時空城の面々は、かたずをのんで、このプレゼントが皆に受け取られるのか、あるいは受け取り拒否されるのかを見守っていた。

理想世界の設計図には、努力目標として、

「皆であらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選べて楽しみ続けれる世界、状態を目指す意志」を持ちましょう!

と追記された。

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