法定利息と対人賠償金額
対人賠償金額を決定する要素の1つに法定利息があります。
法定利息は将来受け取るべき利益の基準となります。賠償金額は一時金として受け取るので、この運用益を期間で割引く為の基準が法定利息です。運用益を期間で割引く事を中間利息の控除と言います。
2020年4月に改正された民法では、この法定利息が変動制となり、利息は改正前の年5%(商事法定利率6%)から3%に下がりました。
法定利息が5%から3%に下げられると賠償金額は高くなります。個人的には、こんなに低金利が何十年も続いているのに、やっと法定利息が下がったと言う感じで、今までの賠償金額が低すぎたのではないかと思います。今の日本で、何処へ預ければ3%で運用できるのでしょうか?
5%から3%、賠償金額にどれぐらい違いがあるかと言うと、年収500万円30歳男性が交通事故により亡くなった場合には5%だと5849万円、3%だと7758万円と実に2000万円近く損害賠償額が上がります。
法定利息は、改正民法では変動制になり、法律を変えることなく法務省の省令で3年ごとに変更されることになり、変更方法は過去5年間の各月における銀行の短期貸付の平均利息を60カ月で除して計算したうえで1%刻みで変動させます。金利が低下傾向になれば賠償金額は、さらに高くなります。(2023年4月1日~2026年4月1日までは3%据置)
損害保険を契約する上で、この賠償金額が高くなることは保険金額の設定において重要な要素になります。
身近な保険で言えば、自動車保険の人身傷害補償特約ですが、多くの皆様が最低保険金額の3000万円で契約していると思いますが、上記の30歳男性の例で言えば、単独事故で亡くなった場合の人身傷害で受け取れる額は7758万円です。3000万円では足りませんね。いざというときに役に立つためには保険金額を無制限で契約するのをお勧めします。
また、企業経営者の皆様がご加入の各種賠償責任保険(施設賠償責任保険・PL保険・使用者賠償責任保険・請負賠償責任保険等)の保険金額も1億円で設定されているケースが多いと思われますが、対人賠償保険の金額を状況によっては3億円・5億円と支払限度額を上げる検証をする必要があります。対人賠償保険金額を3倍・5倍にしても保険料は3倍・5倍になりません。
対人賠償保険金額の設定には細心の注意が必要だと思います。
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