特別なひと

きっとわたしはまだ死なないから、人生は続くと仮定して。
わたしの人生に刻まれたであろうひとのことを話したい。
何人かいるが、前好きだったギタリストの彼のことを話す。

コロナ禍真っ只中。2度目の離婚をしたわたしはマッチングアプリを駆使し、色んな男性とやりとりをしていた。
まさかの2度目の離婚は想定外だった。元旦那は変わり者だが、添い遂げる覚悟をしていた。
元旦那なりに大事にしてくれれば、それがどれだけ世間の大事からズレていても良かった。
そんなわたしの覚悟は言葉の暴力、時には身体への暴力でぽっきりと折れた。
好きなまま離婚した。離婚届は友達に着いてきてもらいようやく提出することが出来た。
それでもまだ好きだった。もうこの人以外好きになれないと思いながらも、相手を探した。

そのまま夏を迎え、秋の兆しが見えた頃だろうか。
ギタリストの彼に恋をした。
顔がとても好みだった。その顔で真正面から笑顔を喰らい、わたしは恋に落ちた。
当時彼は大学生。10歳も年が離れている。
到底無理だと思ったし、結婚も出来る訳が無いと思いながらも、折角恋に落ちたのだから、楽しんでみることにした。

それからのことは割愛する。何度か書いた気もするので。
彼と仲良くなるが為に行動して、得たものは人脈だった。バンド仲間として重宝させて頂いたり、それ以外でも遊んだり、相談したり。
また、わたしは1度辞めたギターを再び弾くことになり。
新しくテレキャスターを買い、エフェクターの沼に沈み、ギター教室に入った。
そして彼と一緒にいる為に始めたバンドの中に今の恋人がいる。

間違いなくギタリストの彼はわたしの人生に刻まれた。
0を1にしてくれたと勝手に感謝している。
恋をしてからいいことばかりだったわけじゃない。
付き合いもせず肉体関係をだらだら持っていたからそれなりに辛かった。
それでも得たものが大き過ぎて、感謝しかないし、好きになれて良かった、出会えて良かったと思っている。
今は良きバンドメンバーであり、大事な友人だ。
幸せになって欲しいよと微笑んでくれた夜のことを、わたしは一生覚えていたい。