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「睡眠はトレーニングだ」。日本人が変えるべき、休養への意識 【青山学院・原晋監督セミナーレポート】

今年1月に開催された箱根駅伝で、見事2年ぶり6回目の総合優勝を果たした青山学院大学駅伝チーム。圧倒的な勝利へ導いた原晋(はら・すすむ)監督の指導法『青山メソッド』にも注目が集まっています。

青山学院大学駅伝チームは、2019年にライズTOKYO株式会社の高反発マットレスと枕を導入。選手のパフォーマンスを睡眠から支える取り組みを展開しています。2021年には、ライズTOKYOと原氏が共同で、『SLEEP OASIS 青学駅伝式 コンディショニングマットレス』を開発しました。

青山学院大学駅伝チームと深い関わりを持つライズTOKYOが、箱根駅伝から約1カ月後の1月29日に原監督を招いたオンラインイベントを開催。ライズTOKYO代表取締役社長の宮崎誠司(みやざき・せいじ)氏と原氏のトークセッションの様子をお届けします。テーマは「アスリートと睡眠」です。箱根駅伝の裏話から、圧倒的な総合優勝をもたらした『青山メソッド』まで。青学の強さの秘訣に迫りました。

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司会:まずはじめに、原監督より、ご挨拶をお願いいたします。


:皆さん、お元気でしょうか?(箱根駅伝)優勝しましたよ!今日は、その秘訣を思う存分語りたいと思います。よろしくお願いします。


司会:ありがとうございます。本日のイベントは、ライズTOKYO代表の宮崎との対談形式で進めさせていただきます。それでは、宮崎よりご挨拶申し上げます。


宮崎:皆さん、こんにちは。ライズTOKYO代表の宮崎です。本日は、お忙しいなか、数多くの方に視聴していただきありがとうございます。「アスリートとコンディショニング」をテーマに、青山学院大学駅伝チーム監督の原さんにお話いただきます。ぜひ、いろいろな角度から聞いて学んで、明日からの活動に生かしていただければと思います。よろしくお願いします。

箱根路へ、右肩上がりで練習を積めた

宮崎:まずは、箱根駅伝総合優勝おめでとうございます。箱根駅伝について聞きたい視聴者の方もたくさんいらっしゃると思うので、駅伝の話題から切り込んでいきたいと思います。


:なんでも答えますよ。


宮崎:圧倒的な勝利でしたが、優勝を意識したのは何区あたりでしたか?


:そうですね、12月の……。


宮崎:早いですね(笑)。


:ぶっちぎりで優勝できるイメージはありました。


宮崎:春にお会いした時は、「他の大学も力をつけていて、戦国時代に突入した」とおっしゃっていました。ただ、夏頃にはそういった言葉もなくなり、三大駅伝(出雲駅伝・全日本大学駅伝・箱根駅伝)の前には自信に満ちあふれていました。やはり、選手のコンディションが上がってきていたということが理由ですか?


:今年度は、青山学院大学(以下、青学)の育成メソッドが、本格的に動き出した一年でしたね。今日のテーマである睡眠を含め、トレーニング、食事など、取り組みに対する反応が非常に良かった。一年のなかで、成長曲線が上昇していくのを感じました。

たしかに駒澤大学さんや、東京国際大学さんなども力をつけているなとは思っていましたが、途中でトーンダウンした感じがしたんです。そうした他大学を見ていて、私たちはピークを箱根駅伝に合わせ、右肩上がりでトレーニングを積めていると感じていました。

勝負は試合前から始まっている

宮崎:そんな青学の活躍を支えた要素の一つに、今日のテーマである「睡眠」があります。原さんは、日本人の平均睡眠時間はどれくらいかご存じですか?


:8時間くらいではないですかね?子どもの頃に、両親や指導者から「早く布団に入って、8時間は寝なさい」と言われた記憶があります。


宮崎:こちらが、各国の15歳から64歳までの平均睡眠時間のデータです。日本人の平均は、7時間22分。断トツのランキング最下位なんです。

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:日本人は、働きすぎ。真面目なんでしょうね。


宮崎:「睡眠=怠惰」という日本独特の風潮もありますよね。ちなみに、世界の平均は8時間45分と、かなり長いですね。海外は、「睡眠=休養」という認識で、効率を意識した働き方が浸透しています。

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:日本人は、働く意義を考え直すべきだと思います。働くことは、修行ではありません。「幸せな人生にするために働くんだ」という意識に変えていく必要があります。会社が睡眠時間や環境を確保することで、社員はリフレッシュできて、幸福度も上がります。労働時間を増やすのではなく、効率を上げる意識を持ってほしいと思います。

何年前だったかな。合宿の時、朝ごはんを食べてから練習までの間に、選手が寝ていたんです。すると、掃除のおばちゃんが、「あなたたち、若いのにどうしてこんな時間から寝ているの!」と、学生をたたき起こしてしまったんです。その後、寝ることの大切さを説明して、ようやく理解してもらえました。


宮崎:スポーツ界だけではなく、日本全体として「休むことは、悪いことではないんだ」という意識に変えていく必要がありますよね。

そして、日本の高校、大学生アスリートの平均睡眠時間がこちらです。6時間50分。8時間からさらに減ってしまいました。たしかに、部活だけでなく、授業もありますし、学生は忙しいですよね。


:こうした部分も改善していかないといけませんよね。


宮崎:青学の選手にもアンケートを取りました。朝練の後や、昼寝などを含めた合計の時間ですが、平均8時間としっかり睡眠を取れています。特に、2年生が長いですね。

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:授業中に寝ているのかな(笑)。


宮崎:その一方で、1年生は平均7時間25分と短く、「熟睡感がなく、疲れが取れない」などの悩みも抱えているようです。

:上級生は授業が少ないので、昼寝の時間を確保できたり、十分に寝ることができているのではないでしょうか。1年生は授業も多く、部内の仕事もあるので、どうしても寝る時間は少なくなってしまいます。あとは、まだ高校生感覚で、睡眠に対する意識もあまり高くありません。ライズTOKYOさんのマットレスを使うことはもちろん、勉強会などを通して、睡眠の重要性を知る必要があります。


宮崎:学生の指導をするにあたって、原さんが休養について意識していることはありますか?


:「睡眠はトレーニングだ」という表現をよく使います。週に数日はオフを設けていますが、自由に遊ぶためではありません。睡眠をはじめ、ボディケアのための時間。あくまで、陸上のための時間です。疲れを溜めず、健康であり続けるための日々の準備が睡眠だと考えています。選手の意識も、少しずつ変わってきました。


宮崎:早稲田大学の研究で、睡眠時間が長いほど怪我のリスクが下がるという結果も出ていますからね。また、日本人は、世界一座っている時間が長いというデータもあります。青学の長距離ブロックの年間総移動時間が233時間、距離にして3万4440キロ。地球の80%に相当します。

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宮崎:原さんからこうした状況について相談を受けて、ライズTOKYOでは、長距離移動用のコンディショニングマットレスを開発しました。やはり、移動後すぐに練習に入れるかどうかは重要ですよね。

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:そのほうが、時間を有効活用できますからね。移動時間を重要視しない指導者も多いです。あとは、遠征用のマイクロバスを指導者が運転しているからという理由で、寝ることを我慢する選手も多くいます。勝負は試合の前から始まっていますから、指導者が選手を休ませる環境を作ってあげることが大切です。


宮崎:実際、睡眠をトレーニングに取り入れて結果が出ていますからね。今日、聞いていらっしゃる指導者の方々にも、休むことの重要性を知っていただければと思います。

頑張りすぎる選手は「自分をどうコーディネートするか」が大切

司会:ここまで睡眠をはじめ、休養についてお話いただきました。ここで原監督に、質問が届いています。「頑張りすぎてしまう選手には、どのようなアドバイスをしますか?」

:人間は必ずどこかでパンクしてしまうので、「そろそろ抑えたほうがいいよ」とストップをかけることはあります。しかし、中には、きちんと計画性を持って取り組んでいる選手もいますから、そういった場合は支えていくべきだと思います。

例えば、「今は追い込んで練習していますけど、来週からはペースを落とします」と、自分をどうコーディネートするのか考えながら取り組んでいる場合です。一方で、感情のままに、あるいは指導者にアピールするためだけにやっているのは良くないことだと思います。


宮崎:普段から選手の様子をよく見ているということですね。

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:今回の箱根駅伝でアンカーを務めた中倉(啓敦)は、夏合宿ですごく追い込んだ良い練習ができていたんです。しかし、秋ごろに反動が出てしまいました。疲れが出て、出雲駅伝と全日本駅伝はメンバーを外れたんです。それでも11月後半から一気に調子を上げて、箱根には安心して送り出すことができました。これは夏合宿で追い込んだおかげだと思います。

1年生の太田(蒼生)や若林(宏樹)も同様でした。こうした成功事例は、「夏にしっかり練習をすれば、多少の疲れはあっても、秋からの駅伝シーズンに走れるよ」と、チームで共有します。チームとして経験を重ねることで、各選手のパフォーマンスをグッと上げることができます。


宮崎:実際に経験すれば、選手が自分自身で考えるヒントになりますよね。こうした「学生自身が考える」ことが、強さに繋がっている部分ではないでしょうか。それでは、次のテーマ『青山メソッド』について、お話を伺いたいと思います。

指導者に求められる「ビジョン」と「メソッド」

宮崎:箱根駅伝を制した後のコメントでも、「選手が『青山メソッド』をよく理解してくれたことが、結果に繋がった」とおっしゃっていました。特に重要な要素が、「自分を律すること」だと思うのですが、具体的にどういった指導をしているのでしょうか?


:「自分の頭で考えること」を意識させています。例えば、「ルールって誰のために、何のためにあるのか?」ということを考えさせます。昔に作られたルールが、本当に今の時代に合っているのか。自分たちにとって必要なものなのか。しっかり考えて、変えるべきところは変えていく必要があります。こうした物事の捉え方を常に意識させながら、指導するように心がけています。


宮崎:こと細かに指示を出す指導者も多くいるかと思いますが、そうではないと。


:そうですね。ただ、誤解しないでいただきたいのは、「コーチングの前にティーチング」ということです。特に、ジュニア期にはきちんと基礎を教えてあげる必要があります。足し算、かけ算ができないのに、その後の複雑な計算問題は解けませんよね。それと同じです。

そして、いつまでも教えているだけではいけません。適度な距離感は大切ですし、ティーチングからコーチングへの流れ、メカニズムを指導者は理解しておくべきです。そのうえで、指導者自身のビジョンと、メソッドがあるかどうか。チームの現状と目標、それを達成するための体系化したプログラムを持っておく必要があります。

多くの指導者は、前任と同じものを受け継いでやっているだけ。結局「ものまね」なんです。それではチームが発展しません。

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宮崎:駅伝においては、勝負を仕掛けるタイミングなど、決断を迫られるシーンが多くあります。監督の指示があるまで動かない選手もいるなかで、青学の選手はどうなのでしょうか?例えば、今年の箱根駅伝で3区を走った太田(蒼生)選手が、あそこで前に出るとは思っていませんでした。原さんからの指示はあったのでしょうか?


:太田自身の決断ですね。裏話なのですが、太田が走っているときは、運営管理車(※)のトイレタイムだったんです。太田は、東京国際大学の丹所(健)くんの後ろに張りついていましたよね。私も、ちょうどトイレで東京国際の大志田(秀次)監督と鉢合わせたんです。そこで大志田監督から「原さん、そろそろ前に出て引っ張ってよ」と言われたんですが、私は「いやいや、大志田さん、一緒に行きましょうよ。うちの選手は1年生ですから、先輩の丹所くんが引っ張ってください」と、そんな会話をしていました(笑)。

※運営管理車:指示を送る監督などが乗車し、選手と並走する車


宮崎:原さんの「選手自身に考えさせる」指導が、垣間見えた場面ですね。


:普段から「君は今日の試合にどんな目的で出場して、タイムはどれくらいを狙っているの?レース展開を教えてよ」と聞いているので、選手は自分でレースプランを考える習慣ができているんです。箱根駅伝だから特別にそうしているわけではなく、こうしたコーチング型の指導はいつでも変わりません。


宮崎:レース中の声かけで意識していることはありますか?


:短くキャッチーな言葉を使います。「スマイル」とか「若の神」とか。あとは、それを連呼して、語尾を上げるように意識しています。そうして選手を奮い立たせます。

ただ、失敗したなと反省することもありますよ。例えば、今年の2区を走った近藤(幸太郎)への声かけ。最後、700mの壁のような坂を駆け上がるのですが、私はそこで「スマイル!スマイル!スマイル!」と声をかけました。そうしたら試合後に近藤から、「監督、あれはスマイルで走れる坂ではありません……」と。たしかに、別の言葉にするべきだったなと反省しました(笑)。

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スマホの制限はしない。ブレることのない「考えさせる」指導

司会:それでは、質問がたくさんきていますので、お答えいただければと思います。まずは、「成長する選手の特徴は?」という質問です。


:課題を克服するために「どうしたらいいか」を考えられる選手ですね。初めて取り組むことに対しても、前向きに考えながらチャレンジできる選手は、必ず成長します。


司会:ありがとうございます。続いて、少年野球の指導者の方から質問です。「選手のやる気をかき立てる方法はありますか?」


:競争させるといいのではないでしょうか。トレーニングにゲーム性を盛り込み、競争原理を働かせることで、練習にメリハリをつけることができます。人間ですから、集中力をずっと維持できるわけではないので、途中で練習を区切るのも効果的だと思います。

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司会:コンディショニングについても、質問がきています。「選手のスマートフォンの使用時間など、ルールはありますか?」


:監督に就任してから一度も、選手のスマートフォン使用について規制をかけたことはありません。なぜなら、現代社会においては、付き合っていくしかない部分だと考えているからです。

通信機能を遮断することは非現実的だし、社会適応能力の欠如にも繋がりかねません。いかに(スマホと)共存していくかを考えることが大切です。コントロールできない選手は、競技においても成長できないと思います。「寝る前にスマホを見ているようでは、睡眠の質は向上しないよ」という知識は、日頃から共有していますし、自分でコントロールすることの大切さに気づいてほしいですね。


宮崎:学生自身に考えさせるという点では、先ほどのお話にあった「自分を律する」という部分に通じるものがありますね。

寝る数時間前からスマホを手放すことは難しいかもしれませんが、布団に入ったら止めましょう。それだけで全然違いますから、ぜひ実践していただきたいと思います。

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「失敗」とは、「立ち止まっていること」

宮崎:最後に、原さんから視聴者の方へメッセージをお願いします。


:皆さん、今は「答えがない」時代だと思ってください。

昔は答えが分かっていて、そこに向かってみんな猪突猛進で頑張ってきました。今は、明確な答えがない時代です。失敗を恐れずチャレンジしましょう。何もせず立ち止まっていることこそが、失敗だと思います。迷ったら、攻める。チャレンジ精神を忘れずに、頑張っていきましょう。


宮崎:ぜひ皆さんには、このメッセージを心に受け止めて、今後の活動に生かしていただければと思います。本日は、ありがとうございました。

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