山内美咲が繋げたい思い。NECレッドロケッツが目指すべき場所

本特集企画「決戦前夜～眠れない夜の裏話～」では、アスリートやスポーツ指導者などの「決戦前夜」に迫ります。

第13回のゲストは、NECレッドロケッツ（V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN）の山内美咲選手。常にポジティブで緊張とは無縁に見える彼女が、「珍しく眠れなかった」のは2022年5月に行なわれた黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会でした。

また、昨シーズンまで3年間キャプテンを務めた中で、積極的にチームの意識改革にも取り組んだそうです。山内選手が考えるチームの理想像とは。

（インタビュー・文：高島麻利央）

「決戦前夜～眠れない夜の裏話～」過去の特集記事がこちら

決戦前夜〜眠れない夜の裏話〜｜ライズTOKYO｜note

楽しみで眠れない！遠足前のワクワク感。

眠れないこと......ありますあります！
今年の黒鷲旗の準決勝でした。「緊張もあるけれど、早く試合がしたい」というワクワクが大きかったです。楽しみで眠れないことがあるんだと知りました。6連戦の5戦目、チームの状態も良くて「いける！」と挑んだ試合。こんなに楽しんでいいのかなと思うほどでした。

眠りたかったのですが、いろいろと考えていたら眠れなくなって。とりあえず目をつぶっているけど、1時間くらいしたら起きて、またうとうと寝て……の繰り返し。それでも不安はなくて、楽しみが勝っていました。

寝なくても、次の日は大丈夫なんです。アップが始まるまでは不安もありますが、気を張っているのもあって、調子が良いことが多いですね。ですが大抵、翌々日にツケが回って来ますね（笑）。

プレーにフォーカスし、緊張に対処する

リーグ戦で順位が拮抗していたり、勝敗が次のステージに影響したりすると、1ヶ月くらい緊張感が続きます。

緊張はしてもいいと思っています。その中でいつも通りプレーできることが自信につながるので。「できることを思いきりやってみよう」と挑んでいます。

トスへの足の合わせ方やパス動作など、細かい技術に集中するのもひとつの対処法です。自然と緊張を忘れられるので、いいパフォーマンスに繋がることが多いんです。自分なりの向き合い方があれば、やるべきことが明確になり自信を持ってプレーできます。

スポーツをする中で、誰かに評価をされていると思うと緊張しますよね。でも、評価されるのは周囲が見てくれている証拠です。評価される状況になってからが勝負で、本当のスタートライン。その先の自分が見たいですね。緊張しても、楽しみながらベストを尽くそうと思っています。

キャプテンとして繋いでいくべきチームの伝統

入団当初は、チームの環境に慣れることや自分のレベルアップで精いっぱい。周りを見る余裕はありませんでした。

キャプテン1年目は「わたしに何ができるのか？」と、かなり葛藤しました。周りの意見を取り入れすぎて、自分の軸がなかったんです。同時期に監督や体制が変わりチームのベースもできていない状態だったので、結果は伴いませんでした。

2年目にキャプテンのオファーをいただいたとき、結果への責任を感じていたので、一度断りました。でも「このままで終わるのは嫌だな」と考え直して、引き受けたんです。気持ち新たに、「元気」という自分らしさを出すよう心がけました。チームメイトも支えてくれて、課題に対していろいろなアプローチができたかなと。結果はシーズン3位で、自分のやり方でチームを引っ張れたと感じました。

そして迎えた3年目。目の前の結果だけではなく、「10年20年先にチームが存続していくために、思いや伝統を繋いでいきたい」と考えるようになりました。

その伝統とは、「優勝を目指し続けるチーム、優勝争いに関わり続けるチーム」であること。NECレッドロケッツが目指すところはベスト8やベスト4ではありません。その基準を下げてはいけない、という思いが強いです。

後輩たちにもチームが常に目指すべきところ、いるべき場所を認識してもらい、思いを繋げていきたいと思っています。自分の姿や行動、発言を通じて伝えられるように意識していましたね。

今だからこそ感じる「楽しさ」と「感謝」

今シーズン、古谷ちなみ選手が新キャプテンになりました。古谷選手の良さをチームに活かしてほしいし、サポートするというより見守っていたいです。

キャプテンでなくなった今、すごく楽しいんです。当時は全然重圧を感じていなかったつもりだったのですが、感覚が麻痺していたのか、やはり（重圧が）あったみたいですね（笑）。キャプテンが誰であれ、ひとりひとりがこのチームを作っています。それぞれが意識を高く持って、いかにチームに関わるかが大切だと考えています。

今こそ、「人生の中の特別な時間」だと思うんです。この立場や環境でバレーができるのは今だけですし、当たり前ではないなと。普通なら、こうしてライズTOKYOさんのインタビューを受けることも、睡眠に対して深く考えたこともなかったでしょうし。貴重な時間をいただいていると思うと、本当に楽しいんです。「ありがとうございます」といつも心から思っています！

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