“死”というものを理解したのはいつの頃からだろう

ᝯ 𝚃𝚜𝚞𝚌𝚑𝚒さんの記事を読んでいて、ふと思った。

わたしが“死”というものを認識したのは、おそらく、
もうすぐ8歳になる頃、母方の祖母が亡くなった時だと思う。

わたしはとてもおばあちゃんっ子で、
物心ついた頃から祖母とよく遊んでいたのを覚えている。
同居していたわけではないけれど、
割りかし近くに住んでいた祖母が、よく遊びに来てくれていたのと
わたしたちも祖母の住んでいる伯母(母の姉)の家に遊びに行っていたのだ。

余談で、伯母には娘が二人いて、
わたしにとってはいとこになるのだけど、
上のお姉さんは年齢が16歳わたしよりも上で
よく面倒を見てもらっていた。
彼女のことを、わたしと、年子の妹は
「ちいまま」と呼んでいたのだけど、今思うと面白い。笑


祖母はとても優しくて、いつもニコニコ笑っていた。
歳を重ねて、少し痴呆が入ってもそれは変わらなかった。

祖母との思い出で一番強烈なエピソードがある。

確かわたしが5歳くらいで上の妹が4歳、
下の妹は1歳になるかどうかくらいの時、
夏休みだったかGWだったか、わたしと上の妹だけで
伯母の家に泊まりがけで遊びに行っていた。
いつも通り、祖母と遊ぼうと近所の公園まで一緒に歩いたのだけど、
妹が突然「トイレに行きたい」と言い出した。
だけど、その公園にはトイレがなかったので、
わたしは祖母に「ちょっとトイレ探してくるから待っててね。」と言って、
祖母を残して妹と二人、トイレ探しの旅に出たのだ。
しかし、周りを見渡しながら歩けど歩けど、トイレは見つからない。
結局、徒歩15分くらいの伯母の家まで帰り着いてしまった。
途中ぐずりながら歩いていた妹を覚えているけど、よく我慢できたなぁと思う。
やっとトイレにたどり着いた安堵感と、歩き疲れた疲労感で
食卓についてちゃっかり飲み物をせがんで。
ほっと一息をついていたところに、一本の電話が。
警察からだった。
「・・・おばあちゃん!」
いや、忘れていたわけでは…ないはずなんだけど、
気づいたら結構な時間が経っていた。
その後祖母は、パトカーに乗って帰って来た。
周りの大人たちに特別怒られたりはせず、
結果笑い話として今も話題に出ることがある。
当時5,6歳の頃だと思うんだけど、この日のことは割と覚えている。

そんな祖母も80歳を過ぎた頃から、徐々に痴呆が始まって
母のことを、自分の親友と間違えて呼び続けていたり、
人の認識があまりできなくなってしまった。
わたしや妹たちのことも、時々忘れてしまっていた。

そして、わたしがもうすぐで8歳になるという時期の9月15日、敬老の日。
当時「敬老の日」は9月15日で日付が固定されていた。
その日は休日だったのでみんな家にいたのだけど
夜、母から「おばあちゃんが死んじゃった。」と聞かされた。

“死”
わたしにとって、初めての死。

その日の夜は、お布団に入ってから、
母とふたりで祖母のことをいろいろ話したのを覚えている。
「おばあちゃんは星になったんだね。」
そう母が言ったのだけど、わたしはその意味を理解できないまま
「うん。」とだけ返事をして、眠りについた。

葬儀の日。
お通夜、告別式と初めてのお葬式に参加していたわたしは、
お坊さんもお経も初めてで、妹たちとくすくす笑っていたりした。
棺の中に入ってはいるけれど、おばあちゃんもいる。
いまがどういう状況なのか、これからどうなるのか。
わたしは何もわからなかった。

そうしてみんなに着いていく形で火葬場に移動して、
最後のお別れをして
祖母の入っている棺を火葬炉に完全に納めた時だった。

そこでわたしは突然大号泣した。
おばあちゃん、おばあちゃん、おばあちゃんをどうするの。
泣きながら火葬炉に駆け寄ろうとするわたしを、伯母が抱き上げて
「おばあちゃんとお別れしようね。ありがとうって言おうね。」と、
優しく諭しなだめてくれた。自身も涙を流しながら。

この時の状況や風景は、いまでも鮮明に覚えている。
わたしよりも幼いふたりの妹たちは、わたし以上に状況を把握していないから
泣き叫んでいるわたしを見上げながら、くすくすと笑っていた。
こうして文字に起こしていると、当時の感情がまざまざと蘇ってきて
胸が苦しく涙がこぼれそうになる。

わたしは、本当に、心から、おばあちゃんが大好きだったのだ。

お葬式中、もう二度と祖母に会えなくなるなんて
微塵も思っていなかった。


そうして、わたしは“死”というものを、心の痛みとともに理解した。



その後、ある夜。
ベランダに出ていた母が、ふと空を見上げながら、
「あの一番光ってる星、おばあちゃんだね。」とつぶやいた。

たしかに、その星はその日の夜空の中で一番大きくまぶしく輝いていた。

それから、夜空を見上げるたびに、一番輝いている星を探しては
祖母のことを思い出している。


祖母が亡くなって25年が経つけれど、
祖母との想い出は未だにいろいろ覚えている。

8年しか一緒にいられなかったけど。

いつもにこにこしていて優しかったおばあちゃん。

やっぱり、いまも大好き。

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