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トンネルを抜ける / Day12 蛇のように賢く

  山での生活ももうすぐ終わりを告げる。ただ緑の世界に身を委ねる数日は、コロナが始まってからある意味最も放念した日々だったかもしれない。昨日話した、私の中学高校の恩師のユウコさん。我々の学校は、古くから歴史ある東京の学校ということもあり、山のエリアで独特な社交が存在している。その社交の一環、ということで、私は彼女に連れられ、山の麓にある教会の礼拝に参加した。

   何年ぶりだろうか。礼拝で歌うのは。何年ぶりだろうか。牧師先生の説教を聞くのは。若かりし学生の頃は、礼拝堂に座った瞬間、賛美歌や説教は子守唄と化し、特に試験前に至っては、頭の中はそのことでいっぱいだった。一方で、お気に入りの賛美歌もあったし、面白い説教をする先生の時は、嬉々として話を聞いていた。そんなセーラー服時代の自分の姿が、久しぶりに脳裏をよぎった。

  この日、牧師先生が読んだ聖書の一節。「わたしはあなたがたを遣わす。それは狼の群れに羊を送り込むようなものだ。だから蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい」。蛇のように賢く、鳩のように素直。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」みたいに韻を踏んでる最後の部分。

  私は今、どんな風に生きてるのかなと、礼拝堂で天井を見上げながら思った。「蛇のような賢さ」って、なんか狐の狡猾さ、みたいなものより変な恐怖感ある。

   最近もっぽら夜の話し相手になってくれているタニガワ。サーフィンをするという彼と生き方について話をした時に一致するところがあった。「大きな波に身を任せて。その流れを読み間違えなければうまくいく」。でも、波を読み間違えたとしてもそこで「裏切られた」という捉え方をしない強さがあればいいよねと。そうやって漂っていたい。今はそんな気分。




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