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「アンテナ」

寝静まる
夜。
目を閉じる頃、
遠くの海に
大きなざわめきがやってくる。

ここへ到達する頃には、
その波紋は糸よりも細く
微かな寝息に
阻まれてしまう。
夢は深く。
明日は短く。

気が付かない方がいいのかもしれない。
そこでいつも通りにしていろ。

寝静まる
朝。
馬鹿みたいに大声で、
疲れた瞳に
大きなざわめきがやってくる。

ここがどこでもかまわず、
暢気な顔で笑い、
お金があるとかないとか、
想像を捨ててしまった、
化け物が、
刹那を駆ける、

もしかして、他所の人のことだと思った?
そこのお前の話だよ。

地面を割って
大きな何かが
現れるような
恐怖はないか。
人だかりはお気楽だ。
阿呆が揃って絶望だ。
まだ大丈夫と
なんとかなるは
使い回されてへとへとだ。
層の一部になれると思うなよ。

誰のために切ったんだ。
何のために高くしたんだ。
どうしてあの時何もしなかったんだ。
どうして誰も止めなかったんだ。
アスファルトの亀裂に
乾涸びている。
あの蛙は、
いつか見た
僕たちだ。
そんな全部やろうとするなよ。

どうやら、知らなかったみたいだ。
そんなわないだろう。

研ぎ澄ませ。
耳を凝らせ。
まだ空が高いうちに。
真夜中、
大きなざわめきがやってくる。
目覚めているか。
あの真ん中で踊る準備はできているか。
誰も手本にしなくていい。
どうせひとりで、いくのだから。