見出し画像

「ひとりパレード」

ある日

足をなくした。

それは突然の

出来事のようで

けれどどこかに繋がっていた。

真夜中の

網の向こうを

目を凝らして

見つめていた。

朝が来る頃疲れ果てていた。

真昼の

白い月は

少しのうたた寝を

ひどく怒られた。

遠くへ行こうと決めて歩いていた。

ひとりで歩いていた。

休む暇もなく

歩いていた。

大事なものを

落としながら歩いた。

それなのに

悲しみではなく

ここに残ったのは

なにもない喜びだった。

理解されなかった。

それで

いいような気がした。

なくしたものは

いつか

戻るのだろうか。

戻らなくていいと思ったら

軽くなった。

無くしたからだろうか。

それとも全て透明になったからだろうか。

踏まれずに生きてしまった。

ちいさな蕾が揺れて

誰も知らぬ

この目にだけ映った。

誰も知らぬ

この道でひとり踊った。

鉛のような

身体と

ずぶ濡れた

心で

痕跡を舞った。