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「重心」

自分の言葉がある
それがちっぽけだと感じた時
私はとても小さな人間になっている
自分の心が
機械のように感じる時がある
心自体が機械なのかもしれないと
ぎしぎしと
鼓膜の奥で聞こえる
言葉は私そのものでなどない
その辺に生えている
草花のようなものである
言葉は
誰のものだろうか
きっと本当は誰のものでもないのだ

人々は言葉を持っている
感情を持っている
そして感情を言葉で伝えようともがく
何も知らないのだ
人々はこの小さな宝物を
自分たちだけのものだと思っている
他の動植物がもっていないと
誰が決められるのだろう
丘に立ち
風と話したことはないだろうか
川辺をゆけば
枯れ木と小石とせせらぎに
引き止められたことはないか
大げさではなく
真摯に手を取り合った日のことだ

ふと私のこの
一個の魂をみつめる
弱さを見守る
星空に解けるまで見届け
大地に降り注ぐのを
待っている
目に見えないものだけに囚われていると
窮屈に思うかもしれない
見えないことの方が
よほど多いこの世界で
知らないだけをこわがっていては
埒が明かない
一個の命は
誰のものだろうか
きっと本当はこの地球の神様のものだ

私たちはきっと
星屑の一部だ
銀河形成の欠片だ
その瞳の
奥を覗いてみる時
何もないけれど
すべてがそこにあるのだから
言葉は本当はいらない
それで殴られたら
元も子もない
道端で出会った蝶に
今朝
ベランダで再開した
その時本当の
言葉がそこにある
その時私もあなたもいないかもしれないが
音がある
視線がある
光が
動くたびに揺らめいている
心は
複雑で
重く
輝いては軋んで
またぎしぎしと
揺れている
揺れながら輝いている