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「長い夢」

悲しみは僕の中に。
愛はあなたとの間に。
だからいつも夢はあなたがいるのに
悲しい。
勝手にやってきて、
勝手に笑うなんて。
目覚めたばかりなのに、昨日の続きの雨が降る。
朝が来るのが
とてもこわい。
夜が終わるのが
とてもさびしい。
でも勝手に先へ、進まされる。
置いてきぼりのまま。
理不尽な昨日までの積み重ねを
僕と共に
夢に投げ捨てる。
その手が、にくい。

ただ疲れてしまった。
外側も内側も、擦り切れている。
まるでぼろぼろのテント。
溢れすぎて溺れた。
見たくないものばかり、運ばれてくる。
けれど僕たちは、
満ち足りたことに感謝せよと
決められてしまう。
リピートアフターミー。
残酷な復唱。
本当に欲しいものは
もうどこにもないというのに。

誰もいないはずの
あの場所には、
明かりが灯っている。
鍵もない。
入ることも出ることももうできない。
僕らはもう、まともではない。

気味が悪い、本当が消えていく。
らしさは
それらしきに成り替わり
目の死んだ連中から称賛され
或いは瞼を縫われても気が付かず
気味が悪い偽物の世界が出来上がってしまった。
幻で頭を殴った。
会いたかった、それだけが、暴れ出した。
花冠で首を絞めた。
君が悪い、それでいいと言った、君が悪い。

純粋では生きられない。
美しい炎も死んだ。
数字ひとつじゃ何もできない。
塵ばかり増えた。
愛は自信を無くして、
眠りについてしまった。

僕らはもう、真っ当ではない。

そう、
気づいたけれど何もできやしない。
言葉を売って
身体を捨てて
心をどこへやった。
探せども、探せども、匂いすらもうしない。

僕らはもう、真っ新ではない。

その目が
塗り潰されていったのも知らないなら。
無様以外のなんだというのか。
今が夜か朝か、
わからないなんて。
その姿をさらして恥ずかしくないだなんて。

君はもう、まともではない。
それでも
途方に暮れても、明日は来る。

頼ることは、ずるさではない。
頼れないことは、僕たちの弱さではない。
優しいという言葉で
片付けられてはどうしようもないが、
それは勇気と同等の
強さのはずだ。

掠れてもいい。
途切れ途切れでもいい。
とうに離れたあなたを迎えに行って。
いいから行って。
僕らはもう、真っ直ぐではない、でも
うたい続けて。
その涙を纏い続けて。
解けないまま
嗅ぎ分けて。
思う存分
浴びて。
その姿が本当は美しい。
あなたが捨ててしまった信じることを、
あの夢に探しに行く。
長い夜のその果てでいつでも
僕たちは
抱きしめ合える。
暮れた途方から、朝が来る。
その手が、いたい。