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「それは僕らの名前じゃない」

君は色んな名前をつけて
呼びたがる。
あるいは区切って
何かと便利にしたがる。
しるしをつけて
わかりやすくしたがる。
そりゃ
わかりやすかろう
納得しやすかろう
説得しやすかろう。
申し出る時には必要か。
違う、そちら側の話じゃない。
どちら側でも同じ事だけど。
でもね、
君たちの目に触れているもののその
殆どが未知で、
殆どが神秘であることを、
忘れちゃいけない。
何が大事なんだろう。
必死になって見えなくなっては
元も子もない。
何を恐れているんだろう。
言葉を汚い武器にした
人間の罪は、
おもい。

君は目の前で黙っているぼくが、
初めて好きになった人を知っている?
初めて恋人になった人を知っている?
その想い出をどんなふうに大事にしているか
知っている?
それをどれだけの人が知っているか、知っている?
なぜ黙っていると思う?
それをどんなふうに思っていると思う?
愛する人を数えたことはある?
並べて比べたことはある?
その夜ぼくたちに
月はどんな形に見えたと思う?
ぼくの周りには幾人かの人がいて、今はその人たちはどうしているだろうか。
もう輪郭があやふやだったりするが悪いことではないんだ。
君とぼくには、
どれだけ同じ部分があるだろう。
同じ数は多い方がいいのだろうか。
少しだけ深く交わった
その重なりが
たった一つでも
ぼくはいいと思う。
全てが重なることなんて、ありはしないのだから。
そんなこと、恐るるに足らない。
集合体の
外側の人を
私たち以外と
呼ぶべきじゃない。
それは、恐れているだけにすぎない。
たったひとつの名前を捨てて、
重なりに行った、
悪態を
見逃し続けているこの世界はおしまいにして。


わたしはいっこだけ
あやふやで
たしかなもの。

僕が見ているのは君の悲しみだけ。
それに、
寄り添い、手を差し伸べたい。
僕が見ているのは君の悲しみと喜びだけ。
名前は、
それぞれがただひとつ持つ、
輝きのはず。そうだった、はず。
また君が
ひとりいってしまう。
名前も言葉も汚した者たちの
戻れる場所など
残されるはずがないのに。
なにものでもないふりをして生きている。
神様は見ている。
きっといつか、きっと最後には。

君の名前は何という。
この暗闇では、それしか
当てはない。
本当の名でいい。
信じた名でいい。
決して忘れてはいけない。
ただひとつの、その光は。