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クリスマス生まれの『特別』で繊細な少年と保守的な父親の愛憎物語「C.R.A.Z.Y」※ネタバレあり


2021年に急逝したオスカー受賞作品『ダラス・バイヤーズクラブ』や『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』などで知られる映画監督ジャン=マルク・ヴァレ監督の2005年の作品。タイトルは兄弟の名前の頭文字から。 

 本作はクリスマス生まれの少年の物語だが、奇しくも監督が亡くなったのは2021年12月25日のクリスマスだったのが驚いた。 

 1960年5人兄弟の4男としてクリスマスに生まれたザックは、熱心なキリスト教徒の母親と音楽を愛する父親に愛されて育つのだが、やがて自らの性的思考が同性へと向かうことに悩む。兄弟からは「ホモ」と呼ばれ、元軍人の保守的な父親とは度々対立する。 

 同性愛とクリスマス生まれ、といのが物語のテーマだが、クリスマス生まれ=キリストのような神通力が使える(使えた?)という部分は表現も含めちょっとどっちつかずで微妙だったかも…? 

しかしザックと父親は喧嘩をしながらも意外とお互いのことを心配し合って離れないのが意外だった。特に兄のレイモンはザック以上に、むしろ家族で一番の問題児に見えるが、何だかんだと家族の団欒や結婚式にはきちんと集まるのが妙に微笑ましい。レイモンはどうしようもない男だけれど、彼なりにザックをかばったり愛していることは感じられたから、亡くなってしまったのは本当に悲しかった。

 音楽が本作のキーワードなのは間違いなく、父親の大事なレコードが話の始まりと終わりを繋ぐポイントになっているのが面白かった。ザックが自分の部屋でボウイの「Space Oddity」を熱唱するシーンはとても良い。80年代に入るとセックス・ピストルズに入れ込んで革ジャンを着ているのはあまりに分かりやすくてちょっと笑ったけど。 

 親との対立というと私はどうしても同郷(カナダ・ケベック州)のグサヴィエ・ドラン監督を思い出してしまう。あちらは関係性が修復不可能なレベルまでいくが(ドランが対立するのは父親でなく母親だけど)思想の違いはあってもこちらの家族は基本的な愛情がしっかり根付いているので、最終的には和解するのがホッとしつつも、物語としてはちょっと物足りなく感じてしまった。ドランの激しさに毒されすぎ?けれど「マティアス&マキシム」でさえマキシムの家族や友人たちを見ると、不思議なカナダのおおらかさみたいなものを感じる。 

 たかが家族、されど家族。絆は切っても切れない。

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