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仕事を選ぶ

 前の記事で少し触れたのだけれど、夫が私あての仕事の話をもらってきた。とある地方の専門学校で、ゲスト講師をしてほしいという内容だった。同職種を目指す学生たちに現場の話をしてやってほしい、ということらしい。

 無職の身としてはありがたい話、ではある。

 けれど、私自身はこの仕事を引き受けるかどうか迷っている。というのも、私はいったん3月末に退職し、その職種を退いたわけだし、今後もその専門家として働くつもりがないからだ。

 自分の仕事自体は好きだし、仕事が嫌になって辞めたわけではない。でも、今は前を向いている。だから、いまはその仕事を過去にしようとしている最中なのだ。

 講義をするにあたって、いま一度、これまでの仕事に向き合い、整理し、未来ある若者たちに話をする

 そのプロセスは、今の私に本当に必要なのだろうかと思う。

 けれど、これまでの自分の仕事ぶりを評価し、依頼してくれた人の気持ちに応えたい。そう考える自分もいる。

 自分の価値を安く見積もらないでください

 後輩に言われたアドバイスを思い出す。私自身が学生に伝えたいことを話して構わないという条件であれば、この仕事を引き受けよう。

 私自身は“ひとをケアする”ことをライフワークにしようとしている。その根底にある思想を一冊の本にして出している。その話を中心に話していいのであれば、自分の専門職の実践も含めて、学生に伝えたいと思っている。

 学校からの依頼がそういう話ではなく、例えば技術的な話や専門理論であれば断ろう。

 これまでは相手先の望む内容に合わせて、仕事の依頼を受けてきた。それはそれで良い勉強となった。けれど、これからは自分のライフワークに関連する仕事を受けていきたい。過去を消したり、切り離したりせず、それも踏まえた上で、私にできる精いっぱいの、私だからこそできる仕事を選んでいく。

 退職して一発目の依頼は、後輩のアドバイスと相まって、これからの自分の仕事の指針を考えるきっかけを与えてくれた。

(つづく)

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