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曇り空の街

都心に近い、だけど少し寂れた都会の片隅に生まれ落ちた。

今では大きなマンションが立ち並ぶ様になり、この市の人口もものすごく増え、綺麗に整備されてきた。

わたしの小さかった頃は、世界はもっとセピア色だった気がする。

川の近くに住んではいたが、木々はほとんどないところで、工場の匂いがあたりを包んでいた。

土手や公園は多少はあったが、そこにはホームレスの人々が寄り添う様に暮らし、小さなコミュニティを作っていた。

学校の校庭の近くのベンチにもホームレスの人たちが陣取っていて、真冬になると冷たくなって息耐えていたという話をたまに聞いた。

寝ているのか動かないホームレスの人を横目で見て、死んでいるかどうか分からない人を通り過ぎた。自分を守るために見ないふりをした。

家の近くの川では、数ヶ月に一度は大量の救急車や消防車が出動する。また誰か飛び込んだんだって。あの木は首吊した人がいたんだって。そんな会話が日常にあった。

人種が入り乱れた土地でもあった。在日の人たちがクラスメイトにもいた。駅ではヘイトが叫ばれている。友達とは普通に接しているけれど、それはわたしの中にもあることを知っていた。 

仲の良かった友達が、いつの間にか万引きの常習犯になっていた。中学のトイレは無法地帯で、小学校では純粋だったクラスメート達がだんだんと闇へと足を踏み入れていくのが見てて分かった。

地元で仲良かった人が先輩となり、部活で理不尽な呼び出しを喰らい、歳下というだけで罵声を浴びるはめになった。その頃人生で初めて死んでやりたいと思ったし、殺してやりたいと思った。(きっと思春期ってやつだ)

田舎からこの地へ越してきた少年が、少年同士のイザコザに巻き込まれ、殺された事件もあった。それはわたしの家のすぐそばで起きた。人種の問題も絡んでいて、その事件の犯人たちは虐げられていた過去があり、そして家庭環境が悪く貧しかったそうだ。

ワンカップを片手にギャンブルに明け暮れるおじさんがたくさんいた。

子どもの頃は通っちゃいけない風俗街の道があって、バイト帰りの夜道では変な人に絡まれることも多々あって、何度か身の危険を感じた。

わたしはそんな街と共に育ってきた。これが普通だと。

この世が綺麗な場所だと思ったことはなかった。そして見て見ぬ振りをして生きてきた。だからわたしの中にドス黒い塊があるのも知っていた。

だけどそんな外の世界に惑わされずに真っ直ぐこれたのは、家族の温かさがあったのと、お金に困ることがなかったからだ。

ここいる人たちはなにかバイタリティみたいなものがあった。高飛車な人もプライドが捻じ曲がっている人もあまりいなかった。気さくで大らかなところがあるから、自分自身、背伸びしていい人のフリをしなくても良かったのだ。

この街が住みやすく感じていたのは、どこに行くにもアクセスが良かったのもあるけれど、この街の寛大さが楽だったのだ。

だからわたしはこの街が嫌いになれなかった。

幼い頃に比べたら、この地は進化したんだろうか?ホームレスもほとんど見かけなくなったけれど。

ルールや自由と引き換えに、綺麗に立て直された建造物と、さらに緑の減った整った川辺ができた。

人々の心はあの頃より救われているか?

おかしなことにおかしいと言えないように、マスクという口枷をつけているように見える。

わたしがここに生まれ落ち生きてきたわけは、見るためだったのかもしれない。見て学び糧とするために。

この世界の痛みを忘れないようにと。


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反メタバースだけど、やっぱバーチャルも好きだ…。創造物は大好物!




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