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溶解

目を瞑り、空間とわたしの境界が溶け入る時、わたしはわたしから浮き上がった。

体から抜け出ると、するっと床から落ちた。

底なし沼のようにどんどん自分が沈んでいく。

さっきまでいた四角い部屋が、はるか上の方に小さく見える。

その空間以外は底なしの闇であった。止まらない。どんどん下へと落ちていく。

本能的にこのままでは地獄へとまっしぐらだと感じた。

焦るな。集中しろ。

はるか上にかすかな光を感じる。

ただその光だけを想う。

わたしにはできるはずだと信じて。

するとそこに吸い込まれるようにわたしは上昇した。

いや、光がこちらへ向かってきた。

そしてあたりは白に包まれた。


ようこそ

白い世界へ

ここには何もない

けれど全てが存在している

見ることはできない

ないけれど、在る世界

わたしは誰か

わたしは君が形造っているものにすぎない

目では見えない

しかしこうして垣間見ることができる

ここには正解も不正解もない

嘘も真実もない

無であり混沌でもある

ここには全てが詰まっている

記憶とも呼べる、思いとも呼べる、願いとも呼べる

自分も他者も存在しない

それを絶望と感じるのは君の心

それを愛と感じるのは君の心

究極の孤独

究極の溶解

それを在ると捉えるのは君次第

それを無いと捉えるのも君次第

どちらを選ぶだろう

君が願う世界の在り方

わたしは与えるだろう、望む世界を

何を創り出すかは君の意志

ここの世界は怖いか

何もない世界は怖いか

手にしていたものを失うのは嫌か

信じていたものが崩れ去るのが悔しいか

それは君がうつす恐怖にすぎない

君が抱える闇にすぎない

しかしそれらは形創られてゆく

君がそれを拒むから

拒む心が、君の中に壁を作る

虚無を抱くか

希望を描くか

すべては君次第

けれどわたしは一筋の光を見せよう

共に迎えるために

共にこの景色を眺めるために

だからここで君を待つ

いつでも ここに在ると

いわおとなって 君を待つ

投げ銭大歓迎! 喜びは巡り巡って、あなたに何倍にもなって返ってくることでしょう。