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【連載・摂食障害3】実は身近な摂食障害

【連載・摂食障害3】実は身近な摂食障害
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

※長く勤めていた精神科病院を退職し、“街の心理士”へと華麗なる転身?を果たした「りらの中のひと」が、心理学やメンタルヘルス、日々の出来事などについて感じることを綴っています。

 摂食障害の理解と対応についての連載記事の、第3回目です。過去記事は、マガジンからご覧いただけます。

 摂食障害は、その病気を患ったごく一部の患者様とご家族、医療者だけの問題ではありません。私たち全て(その中でも特に高齢者や若年女性)に関わる、広く認識されるべき“ありふれた”問題なのです。摂食障害と強く関わる「低体重(やせすぎ)」を切り口に、お伝えします。

1.「やせすぎ」による健康へのダメージ


 体重や体形と健康・疾病との関連については、メタボリック・シンドロームなどの「肥満」が健康に与えるダメージについて、よく知られています。しかし、実は「やせすぎ」であることも、肥満と同様に、健康へのダメージが大きいのです。

 高齢者の場合は、過度の粗食(野菜の摂取に気を配る一方、糖質やたんぱく質の摂取を控える)の結果としての低栄養と、その結果としての低体重(やせすぎ)が、筋量・筋力の低下(サルコペニア)や、骨粗しょう症などを含めた筋骨格系全般への障害(ロコモティブ・シンドローム)、身体機能の全般的衰弱(フレイル)につながる、といったケースが考えられます。

 若年者の場合でも、過度のダイエットなどの結果、低体重による健康被害がもたらされることがあります(低体重であることがいかに健康を損なうのか、については、機会を改めて詳しくご説明します)。

 公衆衛生学的調査では、私たちの体重と死亡率との関係は、BMIにして24かそれ以上を底に、「U字カーブ」を描いていることが知られています。やせすぎも、肥満と同様、死亡率を高めてしまうのです(国立がん研究センターHPの当該記事など参照)。

2.ヘルスプロモーションの対象のひとつとしての、若年女性の「やせ」


 日本では、健康増進法などに基づくヘルスプロモーション(社会全体での健康づくり活動)の一つとして、「健康日本21」が取り組まれています。「健康日本21」は現在、第2期の取り組みの総括がされており、報告書も出されています。

 「健康日本21」では、それぞれの取り組み項目に数値目標が設けられています。「若年女性のやせ」については、骨量減少や低出生体重児出産のリスク等に鑑み、「20歳代で、やせ(BMI18.5未満)者の割合が20%を下まわる」という目標が設けられていましたが、報告書では「改善傾向だが目標未達」とされました。やせすぎの若年女性が、まだそれだけいらっしゃる、ということですね。

3.若年女性の「やせ」の現状


 「健康日本21(第2次)」報告書にも引用されている、「令和元年度国民健康・栄養調査」の結果から、若年女性の「やせ」の現状を見てみましょう。本調査は、新型コロナ感染症の影響で中止された影響で、この年のものが最新版です。

 まず、対象者のBMI値ですが、15-19歳女性で平均20.2(SD:2.2)、20-29歳女性では平均21.0(SD:2.9)でした。

 BM<18.5であった者の割合は、15-19歳女性で21.0%(同男性では16.3%)、20-29歳女性では20.7%(同男性では6.7%)でした。

 データからは、若年女性の5人に一人は、医学的には「やせすぎ」の状態であることがわかります(この調査は、サンプルサイズが非常に小さく(年齢階級あたり数十人以上、という程度)、全体の傾向を掴む以上の考察は難しいものです)。「やせすぎ」の問題(と密接に関連する摂食障害)は、特殊なケースではない、ということは、ご理解いただけたかと思います。

(おわり)

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