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【シリーズ・摂食障害6】摂食障害の分類・種類

シリーズ・摂食障害6】摂食障害の分類・種類
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

※長く勤めていた精神科病院を退職し、“街の心理士”へと華麗なる転身?を果たした「りらの中のひと」が、心理学やメンタルヘルス、日々の出来事などについて感じることを綴っています。

 摂食障害の理解と対応についての連載記事の、第5回目です。過去記事は、マガジンからご覧いただけます。

 この連載の始めに、摂食障害とは「心理社会的な理由から、“食べること”に関わる認知と行動が変化してしまう精神疾病群だ」とご説明しました。摂食障害は、「“食べること”に関わる認知と行動の変化のあり方」によって、いくつかの疾患に分類されています。今回は、その分類について、主だったものを簡単にご説明します。

1.神経性やせ症(制限型)


 やせ願望や肥満恐怖があり、意図的に食事を食べない・量を減らすことをもって(そしてしばしば、摂取エネルギー以上の過活動により)、低体重を来しているものを、神経性やせ症(制限型)といいます。

 神経性やせ症と診断する「低体重」の範囲は、厚生労働省の基準で「標準体重の-20%を超えるやせ」などとされてはいますが、単に標準体重からの逸脱だけでなく、採血などのデータや身体症状、生活への影響など個々人の状況により、診察医が個別に判断するものです。

2.神経性やせ症(過食排出型)


 やせ願望や肥満恐怖があり低体重を来しているものの中で、過食があり、それを打ち消すための排出行為(嘔吐や下剤・利尿剤の乱用など)があるものを、神経性やせ症(過食排出型)といいます。

 不食・拒食を長いあいだ続けることは、誰にとっても難しく、ある時“スイッチが入り”(当事者の方がよく使われる表現)過食をしてしまい、後悔して排出行為を始めるようになるといったケースや、不食・拒食よりも“手っ取り早く”やせの状態を保つことができる、と排出行為を始めるようになる、といったケースが多いのではないでしょうか。

3.回避制限摂食症(ARFID)


 神経性やせ症の症状や、心理行動特性がありながらも、やせ願望や肥満恐怖を否定する(身体的に問題はないものの、“気持ち悪くなるから食べられない”というような場合)ものを、回避制限摂食症(英語の頭文字を取りARFID)という場合があります。比較的新しい疾患名で、医療者の間でもまだ充分には浸透していないと思います。機能性ディスペプシア(消化器自体に異常はないが、うまく“機能しない”状態をいう一般科の診断名)などとの鑑別などを含め、専門医による診断が必要になるものです。

4.神経性過食症と過食性(むちゃ食い)障害


 摂食障害の症状には、過食も含まれます。過食のエピソードを呈するものが、神経性過食症と過食性(むちゃ食い)障害です。どちらも、過食があり、かつ低体重を来していないものを指します。

 神経性過食症は、やせ願望があり、しばしば過食と排出行為があるものです。過食性(むちゃ食い)障害は、やせ願望を認めず、むちゃ食い(binge-eating)のみを認めるものです。

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 これらの疾患分類は、症状が重なる部分が大きく、鑑別が難しいこと、また長期の経過の中で病状が遷移し、診断が変わる可能性があることなどから、適切な診断(と治療)のためには、専門医の診察・診断が必要といえます。

参考文献
高倉修、小牧元 2019 摂食障害の臨床現場における診断・治療の現状と課題 公衆衛生83(10) pp.731-737.

(おわり)

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