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《映画感想》ロストケア

 観終わった後味は『PLAN75』を観た後と同じような、なんとも言えない苦い感じ。
 介護と育児はなんで今こんなにも苦しくなってしまったんだろう。今まで無かったものでも無いのに。今までだってずっと続いてきたもののはずなのに。核家族化なのか、地域との関係の希薄化なのか、女性の社会進出によるものなのか、人々が自由を勝ち取ってきた代償なのか。
 今まではそうした苦しい思いをしてきた人が声を上げられなかっただけなのだろうか。

 私は今、育児が辛いと感じることが多い。早く子どもたちが成長して自分のことが自分でできるようになり、私自身の自由な時間が欲しいと思っている。それでも少しづつ手が離れていく事が分かっているから今の時間を大切にしようとも思える。
 介護も育児と同じように目が離せない状況であると本当に大変。しかも子どもと大人ではサイズが違いすぎる。重度の認知症の介護を1人で行うのはあっという間に精神崩壊すると思う。

 核家族化による介護力の不足と地域の希薄さを埋めるために社会資源を充実させようと社会は頑張っているけれど、本当に必要な人に届かないという現実がまだまだある。
 介護も育児も絶対1人で抱え込んではいけない。自殺行為。ダメ絶対。
 日本人に足りないものは受援力であると思う。辛い時周りの人に「助けて」という力。周りからの支援をそのまま受け取る力。どんなに助けたいと周りが思っていても、受け取る力がその人に無ければ届かない。家族の恥を外に出さないという文化が根強くあるから、助けてと声を上げられない。声を上げれば助けたいと思って動いている人たちにきっと届く。届くまで声を上げ続けてほしい。

 映画でも、介護している斯波さんの事を覚えていた同僚が居た。きっとどこかで気にかけていたんだろう。相談していれば介護保険の事とか、訪問介護とかデイサービスとかそういう社会と繋がれたはずなのに。そんなに絶望しかない生活を続ける必要もなかったはずなのに。

 斯波は他の家族をも救おうと手を差し伸べたつもりだったが、どこかで父親の殺人を後悔していて、それを正当化するために他の人をも手にかけたのだろう。そして家族が救われた様子や、「苦しまずにいけてよかったね」なんて言葉で自分自身の行為を慰めていたのだろう。

 人間は孤独に弱い生き物だ。そして孤独感を感じている時は周りに頼れなくなる。本当はそんな時こそ周りに人がいる事が大切なのに。なんて難しい感情を持った生き物なんだろう。

助けて欲しいのに『大丈夫です』とか言っちゃう複雑な生きもの。
環境がこんなにも変わってるのに、原始時代からたいして変わっていない脳みそ。いい加減アップデートしてくれないと人類崩壊しちゃうよ。でもアップデートした新人類はなんかそれはそれで怖いな。

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