マーケティングレンズ vol.2 - 商品やプロモーションを考えるきっかけを捉えよう
マーケティングレンズは、有志が集まってマーケティングを多面的に学ぶイベント企画。
今回は、第2回目のイベント「商品やプロモーションを考えるきっかけを捉えよう - インサイト探索とデザインシンキングの練習」をレポートします。
第1回目「マーケティングレンズ キックオフ」のイベントレポートは、以下からご覧ください。
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1. オープニング: マーケティングレンズの始まりとテーマ
阿座上:
まずはじめに、マーケティングレンズ発足の経緯からお話します。
元々、この前身だった勉強会は、『コトラーのマーケティング 4.0』を有志で勉強しようという話から始まりました。
ざっくりおさらい:「マーケティング 4.0」とは?
SNSによって繋がりあっている現代は、情報伝達が早く、口コミが重要視されている。よって、ファンがどんどん伝えてくれるという流れを作れるか、が重要となってくる。
認知してくれている人と応援してくれている人が同じくらい存在している「リボン型」のモデルになっているのが理想的。
評判になっているということが、この時代においては鍵になってくる。
「マーケティングレンズ」では、インプットとアウトプットを繰り返し、「0から∞を生み出すマーケティングができるようになること」を目標に、活動をしていきます。
さて、前回のキックオフでは、この「マーケティングレンズ」で何を学びたいかを明確にし、以下3つのテーマに沿って勉強していくことになりました。
「マーケティングレンズ」の3つテーマ
1. マーケティングの王道ステップが知りたい
2. ニッチマーケットでのマーケティングの使い方が知りたい
3. 若者向けプロモーションバズる施策の作り方
今日は「1. マーケティングの王道ステップが知りたい」のテーマで、ヤッホーブルーイングの稲垣さんに「インサイトの見つけかたと活かしかた」を伺い、ワークショップでそれを実践します。
登壇者情報:稲垣聡
株式会社ヤッホーブルーイング マーケティングディレクター
広告制作会社のコピーライターを経て、2011年ヤッホーブルーイング入社。以後、「水曜日のネコ」、「僕ビール、君ビール。シリーズ」等の新製品の企画開発や「よなよなエール」のブランド戦略を担当。
2016年「日経NEXT CMO AWARD」ファイナリスト。
ヤッホーブルーイングのビールを飲みながら、スタート!
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2. インプット:インサイト探索のためのいくつかの方法
稲垣:
「インサイト」とは?
今回のテーマは、インサイトということで、
インサイトを見つけるのは難しいけれど、いくつか方法があると考えているので、それに関してお話します。
インサイトという言葉。
よく聞きますが、定義のようなものは諸説ありますよね。
例えば・・・
- ある製品を使用した時に隠された心の動き、気持ち
- 人を動かすための隠れた心理
- 人の心の中にある隠された欲求(相反する場合が多い)
いずれも、「隠されている」というのがポイントになっていると思います。
残念ながら、みんなが常に欲しいなぁと思っているような顕在化されたニーズに対するソリューションは、すでに商品やサービスとして生み出されています。
なので、ヒット商品を生み出していくためには、1. インサイトを見つける、または、2. 圧倒的なイノベーションを起こす、といったアプローチで臨まなくてはいけない。
一方、ビールなどの商材では、製品そのもので圧倒的イノベーションを起こすということは難しいので、インサイトを見つけられるか、がヒットを生み出す上では重要になってきます。
ということで、インサイトの要素をおさらいすると、以下の通り。
インサイトとは?
- 顧客自身が気がついていない
- 言葉にでき(てい)ない
- 何が欲しいですか?って聞いてもしょうがない。
- 定量調査からはわからない(ただし、兆しが見えることもある)
このように「隠されている」インサイトですが、どうやって見つければ良いのか。見えないといえど、実は兆しのようなものはあるのです。
インサイトの源泉は?
- 外的な環境から引き起こされる(観察可能な状態)
- ある機会から引き起こされる(シーン)
世の中の潮流などのターゲットが置かれている外的な環境や、とある一定のシーンで引き起こされる、といった兆しを掴むことが、インサイトを見つける上では重要になります。
また、インサイトは、「だいたい一瞬で忘れてしまうような不満足」とも言い換えられます。
たとえば、このテーブルが低かった!みたいな我慢できる不満は一瞬で忘れてしまいますが、そういった違和感を我慢せずに、言語化することでインサイトを捉えるのが上手くなるかと思います。
インサイトベースの製品開発フロー
では、見つけた「インサイト」をどうやって、ブランド開発へ繋げるか?
ということですが、一例として、ヤッホーブルーイングでのフローをご案内します。
1. 製品投入戦略や既存データ分析
元々、自社に製品開発戦略や既存の市場データなどが存在している場合が多いので、そこから検討を開始。
「水曜日のネコ」の場合:ビール市場で、競合は女性向けのビールを出しているのに、自社では、男性ビールファン向けビールしかなかった。なので、女性を狙って白ビールを出そう、という話が元々あった。
2. 仮ターゲット、仮機会の設定
1. で何かを作ろうと決まっていたとしても、0から商品を作ろうとすると無限の可能性がある。なので、仮にターゲットや機会を設定することで、フォーカスを狭めていく。
「水曜日のネコ」の場合:ざっくり東京に住んでいるキャリア系アラサー女子をターゲットとした。飲む機会は、平日の夜か、金曜の夜か、土日の昼か夜か。
3. インサイト探索
2. で決めたターゲットと仮機会に沿って、ターゲットのリサーチやインタビューなどを実施し、インサイトを探索していく。
「水曜日のネコ」の場合:そういえば、会社のアラサー女子が会社帰りに平日にビールを買っていると言っていたことを思い出す…。「癒し」や「ゆるむ」みたいなニーズがありそう。
4. インサイト検証
だいたいマーケターは自分の商品のことを過信している。(自分が愛を持って作った商品がなぜ売れないんだ!?)
なので、もう一度ターゲットに聞いて、自分の認知にゆがみがないか検証する。
「水曜日のネコ」の場合:会社の女性に聞いてみたら、「この世代の女子に必要なのは、このままの自分でいいんだという後押しだ!」といっていた。平日に、癒しやゆるみ、みたいなもので、後押ししてあげるのはよさそう。
5. ブランド開発
3. 4. での結果を元に、商品化へ!
「水曜日のネコ」の場合:「癒し、緩める、気まま」を言い換えて、ネコというネーミングが生まれた。その後、気ままなでこびないイメージのネコのキャラクターを開発して、『水曜日のネコ』が完成!
まとめ
ということで、今までのお話をまとめます。
「インサイト探索」のコツ
1. インサイトは、隠れているけれど、観察して見つけ出すことができる。
2. 推測していくためには、ターゲットやシーンをしっかり設定し、ターゲットの好きなものなどを聞き取っていき、インサイトを探索する。
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3. アウトプット:デザインシンキング ワークショップ
阿座上:
今回のアウトプットは、デザインシンキング。
テーマは、「理想のお財布」です。
インタビューを通じてインサイトを掴み、それを元にお財布をプロトタイプすることでフィードバックを得て、「理想のお財布」を明らかにしていきます。
1. 理想のお財布の絵を描く
まずは、各自理想のお財布を絵に書いてみます。
2. インタビュー
次に、ペアを作って、理想のお財布と現在のお財布に関して、インタビュー。どういう意図でどういう理想を描いているのか、明らかにしていきます。
3. 要求定義
インタビューを元に、相手の理想をリストアップしてみます。
4. スケッチングとフィードバック
相手の理想のお財布だと思うものを6個スケッチング!
それを元に、どの点が理想にあっていて、どの点があっていないかを明らかにしていきます。
5. プロトタイピング
フィードバックを元に、実際に紙で相手の理想のお財布を作ってみて、発表しあいます。
5つのステップを経て、デザインシンキングのワークショップは終了!
デモを通じてフィードバックを得ることで、より相手の考えを具体的に具現化することができた、と皆さん大盛況でした。
『デザインシンキング お財布プロジェクト』のやり方は、以下にもまとまっているので、ご参考ください↓
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以上で、第2回のマーケティングレンズは終了!
個人的には、大ファンであるヤッホーブルーイングの稲垣さんにお話をお伺いできたことに加えて、久しぶりに紙とセロテープで手を動かした工作ができたことが、創作意欲を刺激されてとてもよかったです。
プロトタイプを作る重要性は、理解しつつも、なんとなく手を動かすことが億劫になってしまうもの。
今回、デモの必要性を身を以て感じることで、今後フットワーク軽くプロトタイプ作りをしていこうと思いました。
さて、次回のマーケティングレンズは、1月24日での実施です!
次回も、お楽しみに〜!
いただいたサポートは、今後のnoteに生かすための経験や他のクリエイターさんたちへのサポートに回していきます!